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  作者: 久米 貴明
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焚火

そろそろ木枯らしが吹く季節がやってきた


みんな、心をかたくして悲しみや喪失感をやり過ごしている


焚火のようにあたたかい人の傍に寄り添い、身を寄せあって暖をとっている


吐く息は白く、吐き出したあたたかい体温は虚空へと消えていく


家族のいる部屋のコタツで暖をとりながら、スマートフォンの白い画面に打ち込む文章は誰かの心を温めることがあるだろうか


誰も温めないとしたら、僕の魂に宿るこの炎は誰のためのものなのだろう


無闇に多くの人へ届けようとすればするほど、言葉は重みを失い、温度を失い、虚空へと消えていく


どこをどう温めるにしても、実態を掴まないと、温度を届けることはできない


しかし僕の心は暗く、パチパチと燃える炎の他には、誰を照らす光も見えない


人の心はまるで影のように暗がりへひそんで、僕にはその姿が見えない


焚火を取り囲んだ影たちの楽しそうに話す声が聞こえる


誰か、誰か気付いてくれ、ここにも小さな炎が確かにあるんだ


けれど、誰にも届かない、誰も僕の炎には気付かない


ああ、小さい、小さいのが悪いんだ、いっそ、天高く燃え上がってくれ


僕の心を焼き付くし、雪を溶かし、空を焦がし、炎よいつか天まで届け

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