第十二話: その通路は危険につき
「……はは。ははははは。マジかよ、おい」
俺の口から乾ききった、中身のない笑いがこぼれ落ちた。目の前で起きたあまりにも無慈悲な現実。リフィの放った渾身の一撃が、まるで子供の豆鉄砲みたいにカキンと弾かれたという事実。俺たちの最後の、そして唯一の希望的観測が目の前で粉々に砕け散ったのだ。
「……やはり、だめか。物理的な攻撃手段は、この敵にも通用しないと」
セレスがギリと奥歯を噛みしめる音が聞こえた。その声には怒りよりも深い無力感の色が滲んでいる。騎士である彼女にとって、己の剣が届かない敵と対峙することほど屈辱的なことはないだろう。
「ええ。残念ながら私の仮説は棄却されました。これらの個体は、あの『片足の個体』と同質、あるいはそれ以上の存在と断定すべきです」
リフィが静かに、しかしはっきりと敗北を認めた。彼女はゆっくりとライフルを下ろす。その横顔はいつも通りの無表情。だが、その瞳の奥にほんの一瞬だけ、色を失ったガラス玉のような冷たい光がよぎったのを俺は見逃さなかった。
まずい。
これは、本当にまずい。
セレスの闘志が折れかけ、リフィの冷静さが揺らぎ始めている。この二人を繋ぎとめている精神的な支柱が、今ギシギシと音を立てて崩れかかっているのだ。俺が、俺が何とかしなくちゃいけない。このパーティーの、リーダー(仮)として!
「……おいおいおい、二人とも諦めてんじゃねえよ!」
俺は努めて明るい、バカみたいにデカい声で叫んだ。自分の頬を両手でパン!と叩き、無理やり気合を入れる。
「まだだ!まだ終わっちゃいねえ!攻撃が効かないなんて最初から分かってたことじゃねえか!こいつらのルールはただ一つ!『見てない時に動く』!だったら俺たちは、そのルールに則って最後まで見続けてやりゃあいいんだよ!」
「リュウイチ……。だが、どうやってこの状況を……」
「道を探すんだよ!正面突破がダメなら回り道を探す!ゲームの基本だろ!」
俺は半ばヤケクソで、視線をフロアの隅々まで走らせた。マネキンからは絶対に目を逸らさない。眼球がもう限界だと悲鳴を上げている。涙で視界がにじみ、マネキンたちの姿がぼんやりとした白い塊に見えてきた。
だが、そのにじんだ視界の片隅に、俺は『それ』を見つけた。
「……あれは……?」
フロアの一番奥。俺たちが目指す三階へのエスカレーターの、さらにその脇。壁にぽつんと地味なドアが一つあった。客が使うような華美な装飾はない。ただの金属製の無機質な扉。その上には小さなプレートが取り付けられており、そこには俺の世界ではお馴染みの、走る人の形をした緑色のピクトグラムと、『非常口』という文字がぼんやりと光っていた。
……いや、違う。非常口じゃない。その隣だ。
もう一つ、さらに地味な灰色の扉。そこにはこう書かれている。
『関係者以外立入禁止』
「……バックヤード……!」
俺は無意識にその単語を呟いていた。
そうだ。どんなデパートにも客が立ち入らない裏方の通路があるはずだ。商品を運んだり従業員が休憩したりするためのバックヤード。そこならこの、マネキンがひしめく悪趣味なファッションショー会場を迂回できるかもしれない!
「おい、二人とも!あそこを見ろ!」
俺は顎でその灰色の扉を指し示した。
「あの扉だ!あそこからならこのフロアを抜けられるかもしれねえ!」
「……扉だと?確かに、あるな。だが、あの扉がどこに繋がっているか保証などどこにもないぞ。むしろ袋小路になっている可能性の方が高いのではないか?」
「その可能性ももちろんある!でも、このままこのマネキンカーニバルのど真ん中を突っ切るよりよっぽどマシだろ!」
俺の言葉にセレスはぐっと押し黙る。
リフィが静かに俺の提案を補強した。
「リュウイチさんの言う通りです。あの扉の先がどうなっているかは未知数です。ですが、このフロアを正面から突破するリスクに比べれば、許容範囲内と判断します。賭けてみる価値はあります」
「……くっ……!分かった!もうどうにでもなれだ!お前たちのその根拠のない博打に、とことん付き合ってやろう!」
セレスが腹をくくったようだ。よし、これで方針は決まった!
だが、問題はどうやってあの扉までたどり着くかだ。
扉は俺たちの現在地からちょうど対角線上の、一番遠い場所にある。距離にしてまた五十メートル以上。そしてその道のりは、無数のマネキンによって完全に塞がれていた。
「……やることはさっきと同じだ」
俺は覚悟を決めて言った。
「三人で監視を分担しながらじりじりと進む。ただし今度は、一直線にあの扉を目指す!いいな!」
「ああ!」
「了解しました」
俺たちは再びあの地獄の連携を再開した。
俺が正面と右翼。リフィが左翼。セレスが後方。三人で可能な限りの全方位をカバーする。
「行くぞ!まず左に一歩!」
ズズ……。
俺たちの奇妙なカニ歩きが再び始まった。
だが状況は、一階の時よりも遥かに過酷だった。マネキンの数が多すぎるのだ。
一体に集中していると、すぐ隣にいる別の一体が視界の死角に入る。そのほんの一瞬の隙を突いて、やつらは数センチ、あるいは数十センチ、じりっと距離を詰めてくるのだ。
ズッ。
ズズズッ。
あちこちから床を擦る不快な音が聞こえてくる。
一体どいつが動いた?分からない。
俺の担当か?セレスのか?リフィのか?
もはや誰がどこを監視しているのか、その連携すら崩壊しかけていた。
「くそっ!多すぎる!見切れねえ!」
「リュウイチ!お前の右、三体目!さっきより半歩前に出ているぞ!」
「分かってる!リフィ、そっちの左翼はどうだ!」
「……厳しいです。数が多すぎます。監視しきれません」
悲鳴のような報告が飛び交う。
俺たちの足は何度も止まった。一歩進むごとに、周囲のマネキンがまるでアメーバのようにその包囲網を狭めてくる。
このままじゃダメだ。
扉にたどり着く前に、俺たちの集中力が尽きる。
「……もういい!走るぞ!」
俺は叫んだ。
「はあ!?正気か、リュウイチ!走ったら視線が……!」
「ブレるのは分かってる!でも、このままじゃどのみち同じだ!だったら一か八か、駆け抜けるしかねえ!」
俺はもう半ば自暴自棄だった。
緻密な連携なんてクソくらえだ。このじわじわと首を絞められるような状況からは、一刻も早く抜け出したかった。
「いいか!俺が合図したら三人同時に、あの扉に向かって全力で走る!マネキンなんて見るな!前だけ見て走れ!」
「……本気か、お前は」
「ああ、本気だとも!もう知るか!ここまで来たら運任せだ!」
「……フッ。面白い。気に入ったぞ、その破れかぶれな作戦!」
セレスがなぜか不敵に笑った。
「どうせこのままではじり貧だったのだ。ならばいっそ、派手に駆け抜けるのも悪くない!」
「……私も同意します。成功確率は極めて低いですが、現状最も有効な打開策であると判断します」
二人ともイカれてやがる。
だが、そのイカれ具合が今はひどく頼もしかった。
「よし、決まりだ!俺の合図で一斉にスタートするぞ!いいな!」
俺は深呼吸を一つした。
目の前には無数のマネキン。その間を縫うようにして駆け抜ける。
失敗すれば即、ゲームオーバー。
「……3、2、1……」
俺はカウントダウンを始めた。
そして。
「……走れえええええええっ!」
絶叫と同時に俺は床を蹴った。
セレスとリフィも俺に続く。
俺たちは三つの弾丸となって、非常口へと突っ込んでいった。
◇
風が頬を叩く。
いや、風じゃない。俺たちが走ることで生まれる空気の流れだ。
視界の端を、色とりどりのドレスやスーツが猛烈な速さで後ろへと流れていく。
見るなと自分に言い聞かせたはずなのに、どうしても見てしまう。
俺たちが走り出した瞬間、フロア中のマネキンというマネキンたちが、一斉に俺たちに向けた気配を。
それは瞬間移動したかのように。
音もなく、しかし圧倒的な速度で、俺たちの背後を追いかけてきている!
「うわあああっ!」
俺の真横を真っ赤なドレスのマネキンが並走している。そのつるりとした顔がすぐそこにある。腕を伸ばせば触れられてしまうほどの距離。
俺は悲鳴を上げながらさらに速度を上げた。
「リュウイチ!前を見ろ!よそ見をするな!」
セレスの叱咤する声が飛んでくる。
そうだ。前だ。前だけを見ろ。
ゴールはあの灰色の扉。
あと三十メートル……二十メートル……!
ズシャッ!
不意に俺の目の前に、一体のマネキンがぬうっと立ちはだかった。
今まで通路の脇にいたはずの、タキシード姿の紳士マネキンだ。俺たちの進路を完全に塞ぐように、瞬間移動してきたのだ。
「どけえええっ!」
俺は咄嗟にタックルをかますように、そのマネキンに体当たりした。
だが。
「ぐっ……!?」
まるで分厚いコンクリートの壁にでもぶつかったかのような凄まじい衝撃。
俺の体の方が逆に弾き飛ばされそうになる。
こいつ、びくともしやがらねえ!
「邪魔だあああっ!」
俺の背後からセレスが雄叫びと共に、そのマネキンにショルダータックルを叩き込んだ。ガシャアン!と鎧がけたたましい音を立てる。
さすがは騎士。俺の貧弱なタックルとは訳が違う。
タキシードのマネキンはぐらりと、わずかに体勢を崩した。
そのほんの一瞬の隙間を、俺とリフィはすり抜ける。
「セレス!早く来い!」
「言われるまでもない!」
セレスもすぐに俺たちに追いついてくる。
扉はもう目の前だ!
あと十メートル……五メートル……!
俺はほとんど転がり込むようにして、その灰色の扉に手をかけた。
ドアノブは冷たく、そして驚くほどあっさりと回った。
「開いた!」
俺は扉を力任せに内側へと押し開けた。
そしてそのまま通路の中へとなだれ込む。
リフィもセレスも、俺に続いて通路の中へと飛び込んできた。
「閉めろ!」
セレスの叫び声。
俺は振り返りざま、全体重をかけて扉を閉めようとした。
だが、その扉が閉まりきるほんのわずかな隙間から、俺は見てしまった。
通路の外。
俺たちが命からがら逃げてきたあの婦人服フロア。
そこにおびただしい数のマネキンが、まるで満員電車のホームみたいにぎっしりとひしめき合っているのを。
その全てのマネキンが、こちらを向いていた。
顔のないつるりとした顔を、一斉にこの扉の隙間に向けて、じっとこちらを見ていた。
ぞわりと、全身の肌が粟立った。
ガチャン!
重い金属の音を立てて扉は完全に閉ざされた。
それと同時に、今まで俺たちの耳にこびりついていた、あの気の抜けたオルゴールのBGMがぴたりと止んだ。
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
通路の中には俺たちの荒い呼吸の音だけが響いていた。
助かった。
俺たちは助かったんだ。
その安堵感に、俺はへなへなと、その場に座り込んでしまった。
◇
「……ここは……」
しばらくしてようやく息が整ったセレスが、訝しげに呟いた。
俺もようやく周囲を見渡す余裕ができた。
俺たちが逃げ込んだ先は、想像していた通りデパートのバックヤードだった。
壁はむき出しのコンクリート。天井には太い配管が、まるで巨大な蛇のようにいくつも張り巡らされている。床はざらりとしたセメントで、あちこちに黒い油のシミのようなものがこびりついていた。空気はひんやりと湿っていて、カビと埃が混じったような独特の匂いがした。
客用の華やかで清潔なフロアとは、まさに天と地ほどの差だ。
「……迷路みたいだな」
俺は呟いた。
通路は一本道ではなかった。すぐ先で道は右と左に分かれている。その先も、おそらく無数の通路が網の目のように複雑に入り組んでいるのだろう。
「ええ。下手に進めば道に迷う可能性が高いですね」
「だが、あのフロアに戻るよりは千倍マシだ。行くぞ。出口を探すんだ」
俺たちは再び歩き始めた。
この薄暗いコンクリートの迷宮を。
唯一の光源は天井に等間隔で取り付けられた蛍光灯だけだった。だが、その蛍光灯もどうやら正常ではないらしい。
ジー……。
チカ、チカ……。
頼りない音を立てて不安定に明滅を繰り返している。
通路が一瞬明るくなったかと思えば、次の瞬間には深い闇に沈む。その不規則な繰り返しが、俺たちのただでさえすり減った神経をさらにじわじわと削り取っていく。
「……なんだか嫌な感じがするな、この明かり」
「ああ。どうにも落ち着かん」
俺とセレスがそんな会話を交わした、まさにその時だった。
バチッ!
という鋭い音と共に、俺たちの頭上の蛍光灯が完全にその光を失った。
「うわっ!?」
完全な暗闇。
一寸先も見えない絶対的な黒。
俺は咄嗟に壁に手をついて体勢を保った。
「二人とも大丈夫か!?」
「ああ!」
「問題ありません」
声はすぐ近くから聞こえる。
暗闇はほんの数秒のことだった。
ジー……。
チカチカチカ……!
再び蛍光灯が痙攣するように、その光を取り戻す。
俺たちはほっと安堵のため息をついた。目の前の通路には、何の変化もない。
「……なんだったんだ、今の……」
「ただの接触不良か……?」
俺とセレスが顔を見合わせた、その時だった。
「……いえ、違います」
リフィの凍てつくような低い声が、俺たちの間の生ぬるい空気を切り裂いた。彼女はじっと、俺たちが今まさに通り過ぎてきた、背後の暗い通路を見据えている。
「どうした、リフィ」
「……気配がします。それも、多数。私たちが今、見ていない場所。あの暗闇の通路の奥から、何かが、こちらに近づいてきている気配が」
リフィの言葉に、ぞわりと全身の肌が粟立った。
気配? 何も見えない。音もしない。だというのに、彼女のエルフとしての鋭敏な感覚が、俺たちには感知できない『何か』を捉えているのだ。
その言葉の意味を、俺が理解したのと、再び頭上の蛍光灯がバチッと不快な音を立てて消えたのは、ほぼ同時だった。
暗闇の中で、俺は確かにそれを感じた。
空気の振動。いや、もっと根源的な、空間そのものが圧迫されるような、形容しがたいプレッシャー。それは、俺たちのすぐ背後まで、一瞬で迫ってきていた。
「……まずい!」
暗闇の中でセレスが叫ぶ。
数秒後、再び世界に光が戻る。
俺たちは、恐る恐る振り返った。
いる。
俺たちがたった今通り過ぎてきたはずの通路の角。そこに、赤いドレスを着た、バレリーナのポーズのあのマネキンが、一体、音もなく立っていた。俺たちが振り返ったことで、その動きがぴたりと止まったのだ。
視界に入っているものは動かない。ルールは変わっていない。だが!
「扉は閉めたはずだ! あいつらは、どうやってここに……!?」
セレスが、信じられないといった様子で叫ぶ。
そうだ、あの重い金属の扉は、確かに閉めた。物理的に、あいつらが入ってこられるはずがない。
ただ、俺はその可能性に気が付いてしまった。
この現状はそれでしか説明できない。
そう、それは……。
「……セレス、違うんだ」
俺は、最悪の真実にたどり着き、乾いた声で言った。
「あいつらにとって、扉なんて関係ないんだよ。俺たちの『視界』。それだけが、あいつらを縛る唯一のルールなんだ。そして、この暗闇は……」
――この暗闇そのものが、あいつらにとっての通路だ!
俺たちの視界が届かない、完全な闇。そこは、あいつらにとって、距離も壁も関係なく、自由自在に移動できる領域。俺たちが前を向いて進んでいる間、照明が消えるほんの一瞬、ほんのコンマ数秒の暗闇。その『見ていない』時間を利用して、視界外にいる全てのマネキンが、一斉に、俺たちとの距離を詰めてきているのだ!
「走れえええっ!」
俺の絶叫を合図に俺たちは再び走り出した。
もはやどこへ逃げればいいのか分からない。
右も左も同じようなコンクリートの通路。
そしてその通路の至る所で、照明が、まるで俺たちを嘲笑うかのように、不規則な明滅を繰り返す。
バチッ!
暗転。感じる。背後から、左右から、無数の気配が殺到する!
チカチカ……!
光が戻る。振り返るな! 前を見ろ!
いる。
俺たちの行く先の通路に、新たに二体のマネキンが出現していた。俺たちが前を向いたことで、その動きを止めている。
バチッ!
暗転。気配が、すぐそこまで!
チカチカ……!
光が戻る。
いる。
俺たちのすぐ背後に、さらに三体のマネキンが肉薄していた。
絶体絶命。
袋の鼠。
もはやどんな言葉も、この状況を的確に表現することはできなかった。
俺はただ走りながら頭の中で、意味もなく神に祈っていた。
助けてくれ、と。
誰でもいい、助けてくれ、と。
その極限の精神状態が引き金になったのだろう。
俺の意思とは関係なく。
あの忌まわしい、そして唯一の希望でもある汚染されたスキルが、再びその牙を剥いた。
[W̴A̴R̴N̷I̸N̸G̴:̴ ̴P̶S̴Y̴C̵H̴E̴_̷S̴T̵R̸A̴I̸N̸_̷L̵I̷M̶I̴T̷_̷E̶X̴C̵E̴E̶D̵E̵D̴]
[C̶o̶g̶n̴i̴t̴i̸v̴e̴ ̶f̴i̴l̷t̴e̵r̸s̸ ̴d̷i̴s̷e̷n̶g̸a̶g̶i̷n̸g̷.̴.̸.̸]
[F̸A̷T̴A̷L̸ ̷E̴X̵C̵E̸P̴T̷I̸O̴N̷:̵ ̸0̶x̴7̵7̴E̵7̵1̴6̸6̷5̴ ̸i̴n̸ ̷m̶o̸d̵u̵l̵e̷ ̸s̴o̶u̵l̸.̸d̸l̷l̴]
[U̶n̵h̶a̸n̸d̴l̴e̸d̴ ̷e̴x̴c̴e̵p̶t̴i̷o̷n̴ ̶a̴t̶ ̷0̶x̴F̷F̷F̴F̴F̵F̴F̶F̴]
[R̴E̸B̴O̷O̸T̷I̶N̸G̶ ̴P̶S̴Y̵C̴H̵O̷S̴P̸H̵E̷R̷E̵.̴.̸.̷ ̷F̷A̴I̵L̴E̸D̶]
[M̷E̸M̸E̴T̶I̵C̸ ̸H̸A̸Z̷A̸R̵D̴ ̸Q̷U̶A̸R̴A̸N̶T̸I̷N̶E̴ ̵B̷R̵E̸A̶C̸H̸E̵D̶]
[S̴e̷a̶r̴c̴h̵i̷n̷g̴ ̸f̸o̸r̷ ̶v̶a̶l̴i̶d̴ ̴p̸e̷r̸c̴e̷p̴t̷i̵o̴n̴.̶.̸.̸ ̸N̴o̵n̶e̶ ̸f̴o̷u̷n̷d̸]
[D̷e̴f̷a̸u̵l̴t̴i̴n̷g̶ ̴t̵o̴ ̷u̴n̸f̸i̷l̷t̴e̵r̸e̴d̵ ̶r̷a̸w̴ ̶d̶a̴t̶a̵.̶.̴.̸]
[I̷T̴ ̷S̴E̶E̵S̶ ̶Y̴O̴U̴]
――【認識外色彩の知覚】
「ぐ……あああああああっ!」
俺は頭を抱えてその場にうずくまった。
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
脳みそを直接ミキサーにかけられるような凄まじい激痛。
視界がぐちゃぐちゃに塗り潰されていく。
明滅する蛍光灯の光と闇。
コンクリートの壁と床。
セレスとリフィの驚いた顔。
そして無数のマネキンたち。
その全てが、人間の脳が決して処理してはならない、冒涜的な『色』の奔流の中に飲み込まれていく。
「リュウイチ!?どうした!」
「リュウイチさん!しっかりしてください!」
二人の声が遠くに聞こえる。
だが俺は答えることができない。
意識が遠のいていく。
ああ、もうだめだ。
ここで終わりか。
そう諦めかけた、その地獄のような色彩の洪水の中で。
俺は、『見て』しまった。
一本の細い光の筋を。
いや、光じゃない。
色だ。
この狂ったノイズまみれの世界の中で、たった一つだけ。
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『正常』な色を保っている一本の『道筋』が、俺の足元から迷路の奥へと続いているのがはっきりと見えたのだ。
それはただの何の変哲もない、コンクリートの灰色の『道』。
だが、その道以外の全ての壁も床も、そしてマネキンたちも、全てが吐き気を催すような病的な色で塗り潰されている。
……これだ。
理屈じゃない。
本能が理解した。
この『道』だけが唯一、安全なルートなのだと。
「……こっちだ……!」
俺はほとんど痙攣するように呻いた。
そして、おぼつかない足取りで立ち上がる。
「こっちに来い……!二人とも……!早く……!」
「リュウイチ!?お前、何を……!」
「いいから来い!俺のすぐ後ろをついてこい!絶対にこの線からはみ出すな!」
俺はそう叫ぶと、その灰色の『道筋』だけを頼りに走り出した。
右だ!
いや、違う、左だ!
俺はもはや自分の正常な視覚を信じていなかった。
ただこの、脳内に直接映し出される安全なルートだけを、がむしゃらに追いかけ続ける。
俺の目にはもはや壁も通路も見えていない。
ただ、狂った色の奔流と、その中を走る一本の灰色の線だけが見えていた。
「リュウイチ!そっちは壁だぞ!」
背後からセレスの悲鳴のような声が聞こえる。
だが俺は止まらない。
壁に見えるのはあんたたちの正常な目だけだ。
俺のイカれた目には、そこが道に見えているんだよ!
俺はそのまま、壁(に見える何か)に突っ込んでいった。
だが衝撃はない。
俺の体はまるで幻を通り抜けるようにすり抜けた。
振り返るとそこは壁ではなく、ただの通路の曲がり角だった。
「……な……!?」
セレスが息をのむ気配がした。
「……どうやら、信じるしかないようですね……!」
リフィの覚悟を決めた声。
二人は俺のすぐ後ろをついてくる。
俺はただ走り続けた。
この地獄のナビゲーションシステムに導かれるままに。
やがて、その灰色の『道筋』の終着点に、一つの扉が見えてきた。
非常口の、あの緑色のピクトグラムがぼんやりと光っている。
「……あそこだ……!」
俺は最後の力を振り絞って、その扉に体当たりするように突っ込んだ。
扉は鍵がかかっていなかった。
ガタンと大きな音を立てて外側へと開く。
俺たちは三人、もつれ合うようにしてその扉の向こう側へと転がり込んでいった。




