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【第四話】「影の港の取引」

――ようこそ、世界へ。


 この物語は、魔王が死ぬところから始まります。


 しかもその魔王は、かつて5000年続いた人間と魔族の戦争を終わらせ、平和を築いた英雄でした。


 そんな「愛された魔王」が、なぜ、誰に、どうして暗殺されたのか。


 右腕であった一人の男が、その真相を追い、世界の裏側へと踏み込んでいきます。




 ――平和は、こんなにも脆いのか。


 ――友情は、復讐に変わるのか。




 壮大な旅と陰謀の物語、ここに開幕です。



灰街のさらに奥――そこは「港」と呼ばれているが、海ではなく地下水路だった。

 黒く濁った水がゆっくりと流れ、天井から垂れる鎖に無数のランプが吊るされている。

 ランプの光に照らされ、船ではなく筏が荷物と人間を運んでいた。


「……ここが、《影の港》」

「表の地図にも記録がないのね」

「記録があれば影じゃない」


 俺はフードを深く被り、ルナと共に港へ足を踏み入れた。

 周囲は密輸商人、奴隷商、暗殺者……見渡す限り、法の届かぬ者ばかり。



---



 目当ては、黒いフードの男。

 《赤灯のアデル》からの情報では、今夜、港で何らかの取引を行うらしい。


 暗がりに身を潜め、俺たちはその時を待った。

 やがて、数人の屈強な護衛に囲まれた男が現れる。

 肩口に――千眼の印。


「……いた」

 ルナの声が低くなる。


 男は大きな木箱を持ち込み、対岸に停泊していた筏の上に乗る。

 そこには、全身を白い布で覆った人物が待っていた。



---



「例の品だ。依頼どおり、誰にも嗅ぎつけられていない」

「よくやった。これで“計画”は進む」


 黒いフードの男が木箱を開ける。

 中には――人間の国王の王印が収められていた。


 息が詰まる。

 王印は国の最高権限を象徴し、それを持つ者は軍を動かせる。

 もしこれが何者かの手に渡れば――。


「ルナ、動くぞ」

 俺は腰の剣に手をかけた。



---



 しかし次の瞬間、港全体のランプが一斉に消えた。

 闇の中で、悲鳴と怒号が響く。


「ゼファード! 何かが来る!」

 ルナの叫び。

 目を凝らすと、水路から無数の影が這い上がってくる。

 それは人間でも魔族でもない――水棲の獣兵。


 獣兵たちは港の者も黒いフードの男も構わず襲いかかる。

 混乱の中、男は箱を抱えたまま奥の水路へ逃げた。



---



「逃がすか!」

 俺は獣兵を斬り伏せながら追う。

 しかし、水路の奥で筏が出航し、距離が開く。


「ゼファード!」

 ルナが弓を引き、矢を放つ。矢は男の肩に突き刺さったが、箱は放さない。


 その時、男の声が闇に響いた。

 「魔王を殺したのは――お前が探している相手じゃない」


 その言葉だけを残し、筏は闇に消えた。



---



 港に残されたのは、血と倒れた死体、そして焼け落ちた一枚の羊皮紙だけだった。

 それは先日見つけた紋章と同じ印を持ち、裏に短い文字が刻まれている。


 《暁の盟約、破られる時》


「……これは、どういう意味?」

「まだわからん。ただ、一つ確かなのは――」

 俺は羊皮紙を握り締めた。


「これは、もっと大きな戦争の始まりだ」


【第四話・完】


第四話読んでくれてありがとうございます!

今までの後書きでは今回のまとめと次回の予告を書いていたのですがみんな実は後書きあんまり見てないことに気づいたため今回から私自身のこの話をかいて見た感想などを書いていきたいと思います。

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