表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
soul warriors〜魂の戦士〜  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

round 6

ゲートを潜り、視界が晴れた瞬間――俺は息を呑んだ。    そこは、夜のとばりが永遠に固定されたような世界だった。  現実には存在し得ないほど巨大な蒼い月が空に浮かび、その光を浴びて白銀に輝く廃墟の庭園。崩れた石柱、絡みつく枯れた薔薇の蔓。そして庭の中央には、澄み切った水を湛えた泉がある。


「……ここが、静寂の廃庭」


 ミニチュアとしての造形は完璧だ。作者の並々ならぬ執念と、どこか深い孤独が伝わってくる。  俺は泉のほとりに咲く、透き通った結晶のような花を見つけた。あれが依頼品である【月影の雫】だろう。


 だが、俺がその花に手を伸ばそうとした瞬間、庭園の空気が一変した。


 ――キィィィィィィン!


 鼓膜を劈くような電子音が鳴り響き、空間に亀裂が走る。  泉を囲むようにして、四体の「防衛機構」が姿を現した。


「……こいつら、ただのモンスターじゃないな」


 現れたのは、半透明の魂を鎧で固めたような騎士。その頭上にはTester NameもPlayer Nameもない。ただ赤い文字で『Guardian: Sentinel』とだけ表示されている。  AIが自動生成した雑多な敵ではない。このマップの主が、侵入者を排除するために特別に設定した防衛機構だ。


 四体の騎士が同時に、銀色の槍を構えて突進してくる。  速い。公式大会の決勝戦レベルの速度だ。


「だが、今の俺は『仕事中』だ。LIGHTの看板を汚すわけにはいかない」


 俺は背中から『フレイムショットガン』を抜き放ち、至近距離で引き金を引いた。  轟音。だが、狙ったのは敵ではない。  銃身から噴き出した魔弾の反動を利用し、俺の体は重力を無視して真上へと跳ね上がった。


「――『翼』、フル展開」


 ☆5ドラゴンの鎧から、真紅の翼が力強く羽ばたく。 本来、この庭園のような閉鎖空間での飛行は、壁や障害物に阻まれる自殺行為だ。だが、俺はショットガンの反動と翼の羽ばたきをミリ単位で同期させ、崩れた石柱の間を縫うように超低空で加速した。


「一機目」


 すれ違いざま、腰の『イグニスソード』が閃く。  確率20%のはずの炎の球が、俺の意志に呼応し、斬撃の軌道上に凝縮された。


 ドォォォン!


 騎士の鎧が内部から爆散する。  残りの三体が槍から光線を放ち、空中の俺を追撃する。網の目のように張り巡らされた死の光。だが、俺は「魂の操作」を一段階引き上げた。


 アバターという器を通じて、周囲の魔力の流れを読み取る。  光線が着弾する「未来の座標」から、わずか数センチ体をずらすだけの最小限の回避。


「これで、終わりだ」


 空中から急降下し、ショットガンのチャージ技を発動させる。  銃身が赤熱し、咆哮のようなエネルギーが充填される。


「『フレイム・バースト』――!」


 放たれた火炎の衝撃波が、三体の騎士をまとめて泉の底へと叩き伏せた。  爆炎が収まった後、そこには静寂だけが戻っていた。    俺はゆっくりと着地し、荒い息をつく。  魂が摩耗するような、けれど心地よい疲労感。    俺は泉のほとりに膝をつき、目的の【月影の雫】を丁寧に摘み取った。  その時だ。


『――その戦い方。どこかで……』


 耳元で、風が鳴くような、微かな「声」が聞こえた気がした。    俺はハッとして周囲を見渡すが、そこには蒼い月に照らされた廃墟があるだけだ。  だが、確かに感じた。  今、この庭園の主――「彼女」が、どこかで俺を見ていた。


「……君なのか?」


 俺の声は、夜の庭園に虚しく吸い込まれていった。

ひとまずここまでです。よろしければ、ブックマーク、レビュー、感想、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ