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soul warriors〜魂の戦士〜  作者: 霜月轟轟(しもつき ごうごう)


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1/6

round 1

当初は500超えなかったら切ると言いましたが嘘です。2/3日の21:00までに合計1000超えなかったら切ります。せっかくなので目標をあげてみました!

「魂はある」 そんな事実を人類が突きつけられた時、人はどう動くのだろうか。


魂は輪廻転生するものだという説を信じ、そのまま静かに受け入れようとする者。 管理社会の道具として、魂の情報を支配しようとする者。 あるいは、魂を別の肉体へ移し、死すら超越せんとする者。


2018年。魂が科学的に発見されたその日は、人類の定義が変わった日でもあった。 それから7年後の2025年、試験的に魂をゲーム内のアバターへと移送するシステムが開発された。そして2026年5月。その技術は『一般家庭用』として解禁されるに至る。


仮想現実のその先。魂をぶつけ合う戦場。 そのタイトルは――『soul warriors〜魂の戦士〜』。


     ◇


「……本当に行くんだな、俊樹」


2026年、秋。 大学の正門前で、友人の塩谷が、どこか遠くを見るような瞳で俺に問いかけた。 俺の手には、学長室に提出し終えたばかりの『退学願』の控えがある。


「ああ。決めたことだ」


羽鳥俊樹はとり としきとしての平穏な人生を、俺は今日、捨てた。 就職し、社会の歯車として生きていく未来よりも、俺には確かめなければならないものがある。


「魂が1000年もつなんて言われてるけどよ……ありゃあ理論上の話だろ? 人生のすべてをあのゲームに、たった一人の『人探し』に賭けるなんて、お前……」


塩谷の言葉は正しい。この世界では魂は摩耗しないというのが定説だ。だが、その実態はまだ誰にもわからない。それでも、俺はあの日、初心者だった俺の前に現れたあの少女を忘れることができなかった。 フレンド登録すら忘れた、名前も知らない少女。彼女と出会った時に感じた、あの魂が震えるような感覚。


「俺がトッププレイヤーになれば、彼女が俺を見つけてくれるかもしれない。……それだけが、俺を動かしている唯一の理由なんだ」


「……分かったよ。お前らしいな。頑張れよ、俊樹。俺はこっち側で、お前のサポートをやるからさ」


友人の力強い言葉を背に受け、俺はアパートへと戻った。


     ◇


部屋の中央に鎮座する、棺のような形状をした魂移送装置。 俺は慣れた手つきでその中に横たわった。


「Soul Transfer Sequence Start.」


機械的な音声が響く。視界が白濁し、重力が消失する。 自分の意識という『重心』が、肉体から切り離され、ネットワークの海を越えて、遠く離れた『器』へと滑り落ちていく。


「Tester Name: hardly. Login confirmed.」


目を開けると、そこは石造りの街並みが広がる一般マップ、中央都市『ロゼッタ』の一角だった。重厚な質感。風の匂い。そして、自分の魂がアバターという鎧を動かしているという確かな全能感。


ふと空を見上げれば、遥か上空にこの世界の「境界」が見える。 この『soul warriors』という世界は、現実世界で精巧に作られた「ミニチュア」を専用の機械でスキャンすることで構築されている。公式が用意した百種類の基本マップも、元を辿れば熟練の職人が作り上げた箱庭だ。 だが、このシステムは個人が作ったミニチュアすらも読み込み、独自のフィールドとして顕現させる。彼女がどこか「誰も知らないミニチュアの中」に隠れているのだとしたら、システム上の検索で見つからないのも道理だった。


俺は自分のステータス画面を開いた。そこに表示されているのは、Player Nameではない。この世界の真の姿を示す『Tester Name: hardlyハードリー』という文字。


装備は、半年前から愛用している☆5『ヒュージファイヤードラゴン』の一式だ。上級者が☆7を揃える中で、もはや時代遅れと言われる装備。だが、俺の魂の動きを余さず伝えてくれるのは、この癖のない旧式だけだった。


俺は腰のイグニスソードを確かめ、背中のフレイムショットガンを調整する。


「さて、始めようか」


まずは情報収集だ。 人混みに溢れるロゼッタの目抜き通りを歩いていると、ひときわ異様な熱気に包まれた一角が目に留まった。


「おい、あそこ……また混んでるな」


「ああ、『LIGHT』だろ。あんな虚無作業、よくやるよな」


行き交うプレイヤーたちの声に足を止める。 見れば、路地の一角にある質素な店構えの前に、長蛇の列ができていた。 看板には、頼りなげな文字で「LIGHT」と書かれている。


ここは、誰もが嫌がるお使いクエストや、単純な素材集めといった『虚無作業』を代行することで知られる奇妙な店だ。 効率を求めるトッププレイヤーたちが寄り付くような場所ではない。だが、だからこそ、ここには「普通」ではない何かが集まる予感がした。


列をかき分け、俺は店の扉を押し開ける。


カラン、と乾いたベルの音が響いた。


「いらっしゃいませーっ! 予約の方ですかぁ?」


出迎えたのは、眩しいほどのピンク色のロングヘアを揺らした少女――Tester Name: sunnyだった。その背後には、対照的に冷ややかな視線をこちらに向ける、青髪ショートヘアの少女――Tester Name: rainyが座っている。


二人とも、着ているのは☆7『ブラックベア』の皮をカスタマイズした衣装だ。水色とピンクに染められたそれは、一見するとただのファッション装備に見えるが、その奥に秘められた強固な防御力と魔力伝導率を、俺の感覚が鋭く察知する。


「……ドラゴン装備の☆5一式。今さらヒュージファイヤードラゴンの素材でも売りに来たの?」


rainyが、俺の装備を上から下まで値踏みするように眺め、毒を吐く。 ただのプレイヤー、あるいは俺と同じ「テスター」の一人。だが、その瞳には、この世界の底を見透かしているような奇妙な静けさがあった。


「いや、仕事を探しに来た。代行を頼む側じゃなく、受ける側としてな。この紙に、バイト募集中って書いてあるのを思い出してな」


俺の言葉に、店内が一瞬、静まり返った。

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