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日本の定理・上巻  作者: 泉川復跡
【『樹海の近道』編】第十四章。秋雨の実験場
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14.2. 憲兵、実験場、血痕、育徳園

 遂に、『樹海の近道』企画の七日目が来た。私、智埼ちゃんと降恆ちゃんは厚喜さん達と一緒に東京大学附属病院に行っていた。10月2日の朝はまた曇る天気に掛かり、まるで私達と過激派にそろそろ楽しみの試練を与えるようだった。この日は月曜日なので、まだ小田原にいたらいつも通り白濱に行って高橋ちゃん、綾瀬ちゃん達と雑談したり屋上で昼の飯を食ったりしたのに、先週の金曜日に校長先生へ一週間欠席届を送ったところから、この一週間はてっきり私達にとって戦闘的な時間になるよ。過激派と真剣に向かい合う覚悟を持って、私達全員は同じ白いシャツ、ベルトとズボン、そして秋雨の寒さを凌ぎに外套を着ていた。現在の全ての外套は男向けものなので、自分に手を入れるなら、女の細い体に合うように智埼ちゃんと綾瀬ちゃんのお母さんに頼まなければならなかった。

 午前7時42分、倉崎さんが那月さんの亡霊に奪い取られた六時間ほど後、杉林さんが運転する馬車は私達を病院に乗せて到着した。案の定、殺人事件の現場じゃないものの、国の最高の大学に附属する最高の病院の中に怪奇現象の現場があったことで、患者、身内、病院の係員、警官、来校したばかりの学生達が騒がしく噂したりとか好奇心で警察の阻止を構わずいくらでも現場を見ようとしたりしていた。入口を過ぎた途端、登場した皆に私達が誰かと気付き注目された。「小田原からの中学生が来たぞ」、「目が包帯に隠された格好は、渡邊ちゃんじゃない?」、「武蔵野さんの後輩もいたね、確かに」、「でももう三人の男子だそうだろ?もしかして後で東京に?」、「まだ新聞に載せてないのに、何で知ってる?」などがよく聞こえた。

「ムラマサちゃん、あれは憲兵隊の人やね?」、智埼ちゃんが右側の駐車場で調査中の士官達に指を差しながらそう知らせた。『憲兵』と書いた腕章がよく見えた。こんな厳しい状態になんて憲兵がいるのが分かったものの、私がまだ心配していた、少しでも。

 杉林さんが馬車を駐車する時、憲兵の士官達とちょっと話し掛け彼らの駐車許可を貰った。憲兵の士官に敬礼しながら馬車を降りた時、憲兵と初めて目に遭ってきたよ。彼らがまだ若くて厚喜さん達の数年年上で怖い顔を全くしていないはずなのに、私達にこんなに近く立ってて不安の感じを溢れさせている。ある士官が私達のここに来た目的を確認すると求めた。そして、あの人が私達がどうやって事情を把握出来たのかと尋問した。私達が落ち着き、ちゃんと正直に答えていた、一昨日東京へ列車で行き厚喜さんの家に訪れ倉崎さんのことをもっと教えて貰ったと。厚喜さんの家に泊まって起きた途端に厚喜さんにその事情を知らせて貰ったのも言った、現実にあまりそうじゃなかったのに。

「あらっ、遂に来たのか?年齢偽造の研修医、花火の少女、そして片目の発明女」、紫の浴衣姿の武蔵野さんが遠くで私達を呼んだ。彼女が駐車場に近付き私達の緊張感を和らげてくれたようだ。

「あー、武蔵野先輩」、降恆ちゃんが自分の先輩に返事した。武蔵野さんが憲兵の士官に敬礼した。「先輩達はこんな早くここに調達されるんですか?」

「この時間ならもう遅れてしまったよ。この病院のお医者さんとそろそろ卒業する先輩達は深夜2時から呼ばれたわ」

「えっ、先輩はまだこの病院で研修してませんか?」と聞き続けた降恆ちゃん。「東京大学生ならここは研修の優先でしょう?」

「私はまだ2年生。ここで実習したがれば少なくとも来年の今月からだ。私の先輩から聞くと、倉崎ちゃんがお化けに取られてしまったそうだね。あの時は丸端君と仲間もいたかもしれない」

 厚喜さんも武蔵野さんに話し掛けた。「昨日はな、倉崎ちゃんが目覚める感覚があったから、ここに来て様子を確認した。本当に目覚めたんだよ。だがその恐ろしい現象は深夜で発生して倉崎ちゃんを取ってった。見付け出せば全くも意味不明だろう」

 隣に立った憲兵の士官が言った。「だったら我々の取り調べを受けて頂いても宜しいでございますか?厚喜さん、後藤さん、そして平川さんと五十嵐さんはあの怪奇現象の目撃者故に、貴方達の証言は立派に協力して下さいます」

「申し訳ございませんが、どうして憲兵隊はこの奇妙な現象をも捜査して参りますでしょうか?」と丁寧に質問した後藤さん。

 あの士官が答えた。「警察だけならば心霊的なものが起こした現象に取り扱うのが可能であろうか。なお、倉崎さんは行方不明になっており、関東のいずれの所でも存在が追跡される可能なことから、憲兵隊は地方警察に捜索を協力して頂戴するんです」

 私が心配しながらもあの憲兵の士官にそう返事した。「これを切っ掛けに小田原をちゃんと監視するつもりでございますか?」

 あの士官が冷静に私達にそう伝えた。「さもなければ、君達の愛しむ郷が危険を避けるんですか?緒方の勢力は小田原を完全に守り抜けるという訳じゃありません。あの夜も他の地方の勢力を求めたんじゃありませんでしょうか」

 智埼ちゃんが声を掛けた。「但し、憲兵は小田原に参上すれば、以後夏祭りのような催しがなくなってしまう可能性もありますから」

 もう一人の士官が智埼ちゃんの心配に掛かった言葉に応えた。「憲兵は国民の一挙一動を監視する忍び寄りの集まりだと思ってます?もう一度繰り返すと、明治政府の政策を逆らう芽生えを抑制するのは私達の主務です。君達はあの芽生えと違うでしょう」

 憲兵の士官から聞いたあんなに人を落ち着かせっぽい言葉なんて初めてだったよ。更に、憲兵の人はあんなに早く彼らの目的を知らせたなんて普通なもんじゃない。恐らく彼らの司令もこの病院に登場したし、彼らにあの目的を私達に伝えて欲しかったようだ。あの目的は本当に小田原を過激派から守るか、その逆私達を抑制するか、それとも私達を利用するか、あの司令に待ち合わせをして初めて分かる。ただ、私達は彼らの主務の対象だとしたら、馬車を降りた直後に手錠を掛けられ日比谷事変の主犯のように取り調べを数日で受けたわよ。

「それでは、厚喜さんと後藤さんの証言を取りますので、病院内にご案内、私達の警部に待ち合わせをさせて頂きます」、憲兵の士官が病院に入りに私達を導いた。

 武蔵野さんが参ってこの団体が九人になった。入った時、患者、医者と看護師の姿が多過ぎに見えていた。院長が上階にいた全ての患者と係員を下に降りさせたようだ。警察と憲兵が病院の西側と上階に集中し、取り調べと捜査の空間を残す為、患者と病院の係員をここに群分した。上への階段はもう赤い幕に障壁された。警備中の警官に立ち入ることを許可して頂いたのちに、私達が防毒面と手袋を受けた。上階に登ったと、実験場に入る気がしたよ。警官、憲兵と医療者は皆自分を防毒面と手袋で防護している。ところで、付き添っている憲兵は厚喜さんと後藤さんを右側の廊下に取り調べに連れて行った一方、私達は左側の廊下に向かって現場を見ようとした。倉崎さんの部屋、すなわち怪奇現象の現場に近付く時、医療者達が廊下の空間に水を撒いたり、床をモップで拭ったりしたのを見ていた。数人の係員が私達を一旦と止らせ、その洗う仕事が終わるまで待たせた。確かに、あの現象が起こった時、麻酔の煙が一部分で倉崎さんの部屋から漏れここを緊急事態に陥らせたしね。恐らくあの撒かれる水は活性炭と塩素に混ぜられたかもしれない。

「これでよし。皆さん、30分後はもう一度やりましょう」と現場で声を掛けたあの細い姿の人。武蔵野さんと降恆ちゃんの喜ばしい表情を見た際、若狭教授に間違いないと確信した。

「若狭教授」と呼んだ武蔵野さん。「私達は入らせて頂きました。ご用件はまだござるんですか?」

 若狭教授が早速返事した。「おー、武蔵野君じゃない?そして山口君ですね。池澤君、武蔵野君の組に頭巾と長靴を」

 頭巾を被り長靴を履いた上で、現場に進入することが許可された。私達は今化学武器の軍団と違いない姿をしていて、お互いのその面白い姿を少し笑ったほどだ。この現場も化学武器の実験場とあまり違いないし、それでこの格好とここの雰囲気がどれほどで似合っていたかもよ。若狭教授に自己紹介をしたのちに、怪奇現象が起こった直後に病院がどう対応したのかを教授に聞いた。1時45分頃は那月の亡霊が倉崎さんを取り上げ育徳園で姿を消した時間。厚喜さんと後藤さんがその直後に皆を呼び出し麻酔の煙を警告した。月のない深夜だったし、廊下の電気が電球で装置されているし、真っ暗な状態で現場に安全に来るには灯油ランプなどを持って来るしかなった。然し、麻酔の煙が熱に反応しやすくて一階を炙る可能だ。まず上階の全ての電球を消し、廊下に漏れる煙を院外に流しに窓を割らざるを得なかった。煙の流通を保証した上で、塩水や消石灰の水を使って廊下を洗い、そして段々倉崎さんの病室に入って煙を希釈していた。

 2時から電光が全然付いていなかった。あの深夜に渡ってたった数個の灯油ランプ、そして院外の電灯がしか医療者達に閃光を送らなかった。その際、下階は電気を一気に付け、濾過の為のケミカルを準備する。若狭教授の司令にケミカルを下階で確認したと、上階に上った係員が直ぐに使うことになる。ケミカルは病院の倉庫に限らず、東京大学の化学部の倉庫もから運ばれていたよ。防毒面が手に届く前に、医療者達は水に染まった布マスクを着け、多少煙を吸っちまったし、酢で覚醒を促して貰った。消石灰の水と塩水で略に洗った後で、水に活性炭、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸を混ぜたが、高毒性のホスゲンを生み出さないようにした。その新たな洗浄剤は多量の煙を徹底的に塩化ナトリウム、二酸化炭素と蒸気に処分する。ただ、その『良性』なケミカルに出来るまで、煙は低速度酸化反応を過ぎないといけない。順序にアセトアルデヒド、酢酸、そしてナトリウムの塩。だから一定時間おきに休み、処分を繰り返すのはその為だった。夜明けまで、休憩と続行は15分未満。日の出以後は30分ぐらい。

「いよいよ最後の洗浄です。私達がもう一度この廊下から倉崎君の病室にかけて水を撒き洗浄物の余分を払拭します」

「教授、私達も手伝わせて頂けませんか?」ともう一度聞いた武蔵野さん。降恆ちゃんの先輩もあの怪奇現象を調べていたようだ。

 若狭教授が応えた。「はい、人数はもう数名加えて嬉しいと思ってます。活性炭と塩素イオンが床と壁に掛かってますので、一刻も早く石鹸水を仕込むのが行われていきます」

「そうですね。そこには黒い痕と泡が残ってます。石鹸は塩基性が塩素イオンを中和し、構造する脂肪酸の基の疎水性が付着物を吸い取るものです」と言った武蔵野さん。

「正解です。その理論を実践にする為、このモップと束子を使って下さい。講義を受けるより実験の方がお楽しみになりますでしょう」と言った若狭教授。「山口君の仲間も宜しくお願い致します」

 降恆ちゃんがとても興奮すると反応した。「はい、こちらこそ宜しくお願いします」

「ちょっとお待ちお願い申し上げます」突如誰かもこの仕事に参加したいと求めた。もう四人が防護姿でこっちに進んだ。防毒面を被って顔が全然見えないほどでも、歩き方を通じて彼らはどんな人間だと気付くのが出来た。外の右で行進らしく歩き権威を披露したのは憲兵の司令。彼と離れたのは二人の青年と一人の中年。彼奴らが誰なのかも私達皆知り過ぎたでしょう。私達との出会いをずっと楽しみにしていた彼奴らにとってこの機会は完璧じゃない?

北川條佐(きたがわじょうすけ)司令も参りましたね」と若狭教授が憲兵の司令に敬礼し挨拶した。だがその後、教授が自分の声質を剣の鋭さほど真面目に変えた。「そして本校化学部の平川君、早稲田物理部の五十嵐君と倉崎風士郎さん、失踪者の親身」

 平川の奴が声を掛けた。「教授、自分の愛弟子にいつも通りその声で仰っていらっしゃいますね」

「あら、戻ってきたの。倉崎ちゃんのことを最近お世話になっててご苦労様でーした」と皮肉風に言った武蔵野さん。「私が何も知らないと思ったのが貴方の間違いだ」

 五十嵐の奴は何か恐ろしそうなのを反駁しようとしたが、人前の雰囲気によって余計な緊張感を与えないように反応した。「倉崎の状況を新聞に載せなかったとしても、帝國大学の病院をずっと狙ってるお前なら知ってるだろ。お前の節介な仲間も助けたんだな」

 武蔵野さんが冷静のまま反駁した。「あー、若狭教授の前で立ってるよ。何も疑わしいのを言ってれば記者を好きに強圧しても無駄だよ。倉崎ちゃんを一ヶ月以上警備して病院の誰にも注目されなかったなんて立派に袖の下を渡したわね」

 平川の奴が調子に乗りそうに反応した。「だったらどうしたんだ?どうせ俺の師匠はこの病院の院長じゃあるまいし」

「どうせ人種は自分が何をやりたければいくらでも決意を尽くすのではありませんか。国に損害を与えない限り、貴方達の科学を運用し方には関わりません」と言った若狭教授。

「それは私達の志向のもんです」と興奮して応えた平川の奴。

 あの奴の誇張な返事を聞いて体がむずむずしたよ。私が勝手に彼奴らの注目を浴びた。「それは私達の方が言うべきでしょう」

 智埼ちゃんと降恆ちゃんがちょっとびっくりしたが、彼奴らと向かい合う覚悟をした。一方、案の定、彼奴らが興奮の表情を防毒面を貫通したかのようにはっきり表現した。平川の奴こそが私の言葉を楽しく受け取り応えた。「『花火團』の美人が遂に登場したね。小田原の様子はどうかしら?」

「もう段々普通の生活に戻りつつあるのです。あの亡霊の兵団は私達と慈愛な試合をやっておりました。慈愛だから誰もが無くならなかったし、小田原も地獄の炎を浴びなかったし、保安の増強を代償として受け入れたもんです」

「慈愛じゃなければお前らの美しい顔を見れる訳なかっただろ。防毒面を越して話し掛けるしかない」と攻撃的に言った五十嵐の奴。

「今も防毒面を脱いだらあかんやろ」と言い出した智埼ちゃん。

「そうだな。対面したのにお互いの素顔を見せてはいけないなんて勿体ねえなー」とがっかりな声で言った五十嵐の奴。

「多分もう三人の少年が出てきたら、儂達が素顔を互いに見せられるんだ」と声を掛けた倉崎さんの父親。彼が正しいかもしれない。純彦君達が城木先生の家で時間を忘れるほどもう五つの赤外線眼鏡を作り掛けている。『花火團』が全員で現れればルネサンスの絵のような光景になる。然し、その掃除の後は素顔を見合えば問題じゃない。北川司令は何も言わずに私達と過激派の三人を監視していた。憲兵は私達と過激派の戦いの間に立場を持つはずだ。正しくいうと、政府の代理で国の中で発祥する二つの対立な主義の衝突の『審判』を担当する。私達は憲兵のことも民族主義を至上すると思われるから、過激派にある程度で関係すると前から確信していた。でも、駐車場で数人の憲兵に彼らの目的をわざと告白して貰った時、憲兵のことがよりも複雑だと考え直したの。

 私達はモップと束子を受けて最後の洗浄を行なった。塩素と炭素の汚れがうち達の外套に付かない為、ちゃんと膝が床とか廊下の席に触れずしゃがむようにしていた。木の板の間の隙間に落ちちまった泡と黒い汚れは特に私達の注意を試していた。勿論、自分の安全だけでなく智埼ちゃん、降恆ちゃんと武蔵野さんの安全にも気付かないと。あの三人の奴というと、途中で仕事を中断するように私達を濡れた床に押し退けたり防毒面の吸気の部分に洗浄剤をぶちまけたりして良いと思ったが、倉崎さんの部屋に入るまで全然仕事に集中していた。

 倉崎さんの病室に遂に入った、思いにくい気持ちを持って。点滴用の瓶が掛かったまま、注射針が病床の布団の上に置かれ点滴液を漏らしたまま、布団が左に引かれたままだった。クロロホルムとエーテルの甘い匂いがもうしなかった。その時、窓で黒い幕が取り除かれ、割れたガラスを見せた。倉崎さんの病室は高級なもので、多くとももう四人の病床を追加する収容なの。この病室を取り扱うには五時間も掛かればちょっと早いでしょうね。その為、ここの掃除はあまり困らなかった。ただ寝台の下に潜むのはしゃがんだまますれば床を拭いにくいから、外套を洗浄剤で少し濡らせば大変じゃないと考え直した。倉崎さんが見つかるように、どうせ自分の外套を盾のように汚くするしかない。こうやって私が顔を仰いだまま、体を床にてっきり伏せることがあった。

 仕事の途中で、誰かが私の肩を叩いた。それは北川司令だった。「渡邊さん、ご挨拶をさせて頂きます」

「私が忙しいので、今敬礼致さなくて大変申し訳ございません」

「労働中に敬礼をするのは普通なものではあるまいですよ。私にとっては厳粛の時及び体が忙しがらない時、権威ある人々に敬礼して良い。もう江戸時代に生きてませんから、私達は」

「北川司令のことに私が馴染みがたいですよ。憲兵の司令でも労働の仕事をしてるとは」

「そうそう。政府の有用な政治的保安隊の人からすると変だろうと思ってます。しかも常民の肩を叩き社交的に話し掛けるのは憲兵らしさもない気がしますね。だが相手から情報を得る為にそれはとんでもない技術に出来るんです」

「結局私達からもっと知りたいと言ってますでしょう?」

「憲兵はとにかく警察。更に、貴方達も政府に承認を求めて頂きたいのではありませんでしょうか」

「はい。去年の少年祭と今年の夏祭り後の私達の納税のは北川司令も確かに把握しましたね」

「慶應・帝國・早稲田にお金を送ってからご存知でした。だが貴方達を注目し始めたのは放火事件の切っ掛けよりです」

「もしかして司令は放火事件の捜査を担当してます?」

「というより関東地方の担当です。日本海海戦以降発生してしまった無差別放火事件は全国記録されてるということは新聞に乗せ続けますでしょう。貴方達は必ず読んでたんですね」

「勿論読んでました。小田原の大火災は最大規模でやられたのですが、他の放火事件と同じ放火方法を持ってます。見えざる手で」

「緒方署長と岸山記者は捜査に立派に役立ってます。貴方達が解除した爆弾は私達に届き『現場に紛れ込んだ主犯は狂信的な秀才』と纏めるのが助かりました。そして貴方達の自分の郷での事変の証言は誘拐と身代金を盾にして他の放火事件の目撃者のと全然違いましたし、あの事変の真実は厚喜さんの誘拐に限らなかったそうです」

「日本は有神論の国で良かったです」と私が言って北川司令が意味を知りたい顔をした。「神道を国教にしたので、ある事情を人々は論理的にか、感情的にか、宗教的にかも考えて良い。宗教的に考えると、心霊の力に私達は罰を与えられたのです」

「そういえば貴方と絲島さんは全国数学大会に出場したそうですね、神奈川県の代表として」

「はい。奇遇的にあの事変は私達の参拝の六日後でした。私達の算額の問題が数学大会委員会に届き出場資格を再確認して頂いたのは参拝の一週間後、私がまだ昏睡中の時」

「そういうことか。だから主犯達は数学らしく貴方達を襲おうとしましたでしょう。というより算額らしく」

「信じるかないかも良いけど、あの秀才達は神様の力を借りて恐ろしいことをやったのです」

 北川司令が多分何かを身に付けたようで、そう聞いた。「ではこの事情は如何でしょうか?倉崎さんを奪い取った亡霊と目撃者が呼んだものは結局本当の亡霊?」

 那月さんの亡霊が城木先生の効果だと言ってはならないから、私がそう言った。「んー、厚喜先輩が事情を告げたのですけど、武士の亡霊と戦った自分の経験からすると、ひょっとして過激派からの試練もであるかなと思ってます」

「だが試練だとしたら、この現場の何処かに暗号のようなものが残してあるのではありませんか」

「確か亡霊と喧嘩する間に、亡霊の血がこの床に染まりました。だが暗闇の中で麻酔の煙を洗浄すると、医療者達が偶然に消してしまったようです」、降恆ちゃんが私と北川司令との密談に参加した。

「おー、山口降恆さんですね。実は血液が拭われたとしてもまだ痕を残してます。ただ化学的手続きで見られるんです」

「そうですね。ここの換気、停電、洗浄は2時から始まりました。低温によって血液はより早く固まりましたが、数十分で乾きました。乾くより早く固まるならもっと大変に擦らなければならなかったかもしれません」

「だとしたら、掃除中に何かが普通じゃないと気付いたでしょう」、智埼ちゃんも密談に入った、関東弁にまた変わって。

「んー、凝結なら?低温なので煙が雫に凝結することがあったもんです。寒い煙は霧に似てるでしょ」と私が予想した。

「だから五時間掃除したのかね」と確認した智埼ちゃん。

「そうよ。えーと、北川殿、厚喜さん達の証言により、亡霊の血が落ちた所はどれでございますか?」、降恆ちゃんが北川司令に質問し彼の私達への疑惑をかなり晴らした。

 北川司令が一旦と立ち上がり病床の方から二回退き、床にあった所を人差し指で確定した。「目撃者によるとこっちの可能です」

 私達がそっちへ移った。降恆ちゃんがそう言った。「こっちに血痕は本当に付いたかどうか何かの方法で現すことに」

「貴方は研修医と自称したでしょう。医療的に確かめてみ?」、私が降恆ちゃんを誘導させようとした。

「そうだけどさ、ヘモグロビンをどう検知すれば分からんよ」

「だが血痕はこの所だけではないです。あの亡霊のような存在は倉崎をあの窓を渡って持って行ったのなら、血痕はこっちからあの窓まで、更にあの公園まで残ってるんじゃありませんか」

「然し、病院の西側も公園も心字池も血痕が見つからなかったということです。しかも病院から大学に突入する為、二つの鉄のフェンスを通り過ぎないといけないけど、曲げられたなど跡を残さなかったです。これは私の先輩が教えてくれました」、武蔵野さんもここに入りそう知らせた。北川司令も頷いた。自分の部下に育徳園と病院を囲い込んで貰って分かったからね。

 私が言った。「それはあり得ないでしょう。倉崎さんを背負いながら登ったとしても、フェンスがある程度で曲がったはずです」

「あの亡霊は倉崎と一緒にフェンスを通り抜けるようでしたね。亡霊はそう出来ましたが、倉崎も出来たのは不思議過ぎる」

 智埼ちゃんが意見を挙げた。「もしかしてあたし達に何かを伝えたかもしれません。倉崎さんが亡霊と一つになったということ。それに、逃走の間に血痕を公園まで残さないのがもっと心霊的になったし、この部屋でしか血痕を残さないのも調べる人を「血痕を発見したと隠れた伝言が見つかる」と考えさせたのは如何であろうか?」

 智埼ちゃんの意見のお陰で、私達がほぼ理解した。「わー、なるほど。『簡単の方に考えといて』とあの亡霊が伝えたでしょう。複雑の方ならもう時間掛かるし、その時間はあの亡霊が倉崎さんをもっと遠く持って行くのに該当です」と言った私。

 北川司令もそう認めた。「あの亡霊は倉崎の死去した友達の魂ですしね。自分の死のせいで友達を苦しませないように、せめてその友達が休養中の部屋で汚い跡を消して貰いたいのでしょう。血痕を発見しようとすると、この木の床は化合物の反応に消え失せない跡を付けられてしまいます」

「それじゃあ、こっちの残りを若狭教授の皆に任せて育徳園に行きましょう」と武蔵野さんが皆に促そうとした。

「そうしましょう。心字池は今私達が最も注目してるんです。亡霊は倉崎さんと一緒にあの池に落ち沈んだ可能だからです」

 北川司令がそう決めた時、私達がもう三分を経って床を拭い終わった。浄水で床に仕上げることと、木製の保守の為に亜麻仁油を塗ることは若狭教授達に全うして頂く。過激派の組織と強く繋がるあの三人の男は最初から私達と一緒に倉崎さんの病室に入り一緒に掃除していたが、憲兵の上司の登場によって私達の掃除しながら小さい声で話し合う仕草を観察しただけだ。それだけで私達と同じ情報を把握したし、立ち上がり若狭教授に防護の器具を返し、取り調べを終えたばかりの厚喜さん達と育徳園へ行った。

 9時半頃、西側と医学図書館を越え、心の形の池に着いた。大学の校内にあったとしても、樹冠が広い木に小さい森のように囲まれることで荒野らしくて「夜更けになら妖しげな気持ちがする」という風に見えた。心字池は凡そ2.5メートル深くて人の平均身長より1.5倍だし、環境の荒野らしさに加えて、倉崎さんを持って行く那月さんの亡霊の失踪に完璧な所だった。那月さんの亡霊はパズルピースの幻覚に過ぎないから、倉崎さんを『防衛の盾』に入れ込みその池に一緒に沈み消えちまったのが分かる。あの『防衛の盾』も私と厚喜さんを窒息死から守ったね、笠人君と消防士が来るまで。

 憲兵が海軍の潜水士に池の底を調べに潜めて貰った、那月さんの亡霊が消え失せた二時間後。だがその池の下には何も見つかっていない。それは私のシャツの胸ポケットが少し揺れるまでだ。そう、パズルピース、というより城木先生が自家から信号を送った。それからやがて、あの潜水士が不思議なものを池の底から採り上げてきた。その不思議なものは皆を驚かした反面、私達が予想したよ。また一枚の絵馬だった。だが夏祭りの時の幻なものと違って木製の本物。勿論、その絵馬に算額の問題は書いてあって、倉崎さんの行き先を求める可能性がある。絵馬が北川司令に届いたところで、私と平川の奴が司令に敢えて一つをお願いした。それはその算額の問題が解けるまで、記者など校外の社会に公開しないようにすること。私と平川の奴がそれからどちらの解き方の方が早いかを競ってやる。解いた以上、記者達は好きに社会を日比谷事変の時のように騒がしても良い、私達の以後の捜索を邪魔しない限り。

 秋雨の実験場・屋外の温室で、ある5間と7間の田圃は90日間の秋季で農業の目的に実験されることになった。その目的は大雨及び不適切な土壌の状態の場合稲の生存が如何であろうかを検認すること。まず畝は縦方向に立てられ、水路は横方向に引かれ、その為1間の平方形の升目が生み出された。次に各升目は70本の稲を含む稲束を植え込まれ、全升目が稲で覆われるようにされた。そして人工の雨は如雨露(じょうろ)風に降らされた。初期での雨は稲が全部生き抜けるように一分の平均降水量。15日後、降水量は倍になる。次の15日後、降水量は指数的成長に毎日増える。その間、肥料が施されたり、日光も晒して貰ったり正常にしていた。実験の終了で、全升目には生きた稲と死んだ稲があること、最初の数升目で生きたのが死んだのより多いことと確認した。その時、真中の升目で生きた稲が死んだ稲の半分である確率、最後の二つの升目の死んだ稲の数を求めよ。

 挿絵(By みてみん)

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