13.2. 人物が移動すれば、痕跡が残り、私達が追跡する
私の懐中時計は12時を差した。ということは、9月を別れ10月を迎えた。夏祭り後の遅延期間も終わりになり、『樹海の近道』の期間に譲った。企画を開始する為、城木先生は徹夜して10月1日の日の出を拝むかどうか、私達に確認して貰った。徹夜にもう慣れたし、猶予もしたくないし、私達は一斉徹夜と決定した。例外なく、城木先生の豪邸に導く不思議なトンネルがパズルピースから出てきて、厚喜さん達を唖然とさせた、五日間前の私達と同じ。それから、トンネルを通り過ぎ、多次元世界に入った経験は私達から厚喜さん達に移動し、人数に相応しい雰囲気を及ぼした。但し、澁嶺の野生な海岸の代わりに、城木先生の豪邸が直ぐに私達の目線に入った。松澤先生と城木先生が洋服の姿で入口で私達を迎えていたよ。
「狡いですよ、先生。海岸じゃなくて入口まで挨拶するなんて」
「時間をもう遅延しないと主張したでしょう。だから『私達の研究室へようこそ』という風に私達の実習生を歓迎するんです」、城木先生が言って私達を生徒の代わりに実習生と認めた。
「先生、実習生というよりも研究生と言った方が良い?」、松澤先生が城木先生に囁いた。
「ううん。まだまだ勉強することを続けますから」
純彦君が言った。「先生、私達も人形焼きなどを持って来ますから、お菓子を準備しなくても大丈夫ですよ」
「それは問題じゃありませんよ。その代わりに、コーヒーを準備しました。徹夜の為に精神を正気に」
「先生、コーヒーなら牛乳を入れて貰って宜しいでしょうか?純粋のまま飲むならくどくなっちまいます」と私が意見を挙げた。
「安心して下さい。コーヒーの苦味なら、お茶の苦味に慣れても苦手になりますから、特に女。女の食欲に合うように、牛乳を丁度で混ぜてあげました。貴方がここにいるたったの女じゃないんですよ」
私がちょっとびっくりして『花火團』の二人の女性メンバーを思い付いた。「え?まさかチサトちゃんと降恆ちゃんも来ました?」
二人の先生が何も言わずに私達を入らせた。一方、厚喜さん達はまだこの仮想空間を一気に観覧していて、星と天の川の魅力によって頭を仰いだままだった。いつも通り、厚喜さんがコダックを持ってその星空を自分のものにするように数回撮っていて、豪邸に入ることになったよ。入った時、私達が期待していたのはもう来た。居間で手術技術向上の本を読んでいる降恆ちゃん、車輪付き黒板と白板を運んでくる笠人君、そしてエプロンを付けてコーヒーとおにぎりを出している智埼ちゃんだ。『花火團』が全員で企画を実施していくわよ。
純彦君が声を掛けた。「お前ら、いつの間にここにいたのか?」
笠人君が返事した。「俺はね、お袋と飯を食った後で、家の前で出迎えた松澤先生に連れて行かれたんだ。行く前に、弘作おじさんに日曜日と次の五日間で欠席を許可して貰った」
「一昨日の夜で私のお父様とお母様に上京の旅を通報したから、欠席はてきぱきと許可出来たね、笠人君」と私が言って、笠人君が、「うん。退勤寸前におじさんの肩叩きだけで」と応えた。
「僕とナギちゃんはもう一週間で小田原病院の実習期を完了させるので、宿直規定期間が金曜日に切れたことを知ってるでしょう。だから病院で夕食を食べてから人力車で松澤先生の家に行った」
澁薙君が、降恆ちゃんの読み掛けたソファに置いた手術の本を取ってそう言った。「確か、頭蓋骨陥没整復術はこの本を通じて城木先生が伝えたそうね。もしかしてツネちゃんが先生を補助した?」
「うん。ちゃんと声を出さないようにしたよ。『花火團』の半分に東京に行って倉崎さんについて情報を取得して小田原に帰って貰ったのは初めに賛成したけど、この企画の背景を見直すと、企画を完成させた上で小田原に帰ると考えてる。だから先生達は僕達の予定を最後に変更して、倉崎さんがまた逃走したり過激派と向かい合わせにしたりする場合に、皆の私物を予めここで集めて野営の為に食べ物と道具をも準備しといたのだ」
「へー、こんなにじっくり準備したのか」と感嘆した私。ラッシュナトゥール人の先生はレベルが予期出来たものの、私達が上京し厚喜さんの写真集を見てこそ思い付いた色々な場合のことが最初から推定出来た。やはり先生達に長い間に学習した方が良いらしいよ。
「自分の勘をもっと信じるなら私達みたいになりますよ。前に言ったでしょう、科学者の勘は」と言った城木先生。「私と松澤先生は医療の専門家じゃないので、この空間に一緒に住む同僚にその本を貸して貰ったんです。具体的には、元外科医、エナー・|クリッサンノール《Kryssannoll》先生です。倉崎さんの具合を見た際にそれを受けました」
「てことは、先生達もあの病院に入りました?」と私が聞き、松澤先生が頷いた。そういうことかね。厚喜さんが自分の親友の具合を過激派の手下から把握した一日後、慶應に来たお二人の先生もあの契約の情報以外に倉崎さんの寝た切りの状態を知っていて、もう一人のラッシュナトゥール人に援助して貰った。それでもね、先生達は医療の知識をある程度で身に付けたが、降恆ちゃんに実習の機会を与えたりとか、念の為専門家に頼ったりしたと勘が強かったよ。
「現場に着いた時、四人もが倉崎さんの病室の前で警備してると見たんです。だから彼女の具合を見に入る前に、彼らに疑惑の道具を持って来るかどうか身体検査されました。ただあの時、厚喜さんのコダックの写真機は無視されるたった一つの道具でした」と言った城木先生。なるほどね、彼奴らが契約を守ってあの写真機をわざと。
「倉崎君が目覚めたらまた失踪する可能だと言われたから、私達が地点測位装置をなんとかあの女子に当てようとしたんだが、彼奴らのじっくりな目によって別の方法に行くべきだ。どんなじっくり見張っても気付けない方法」、松澤先生が別の方法を思案して言った。
「ほら皆、黒板、表紙、帳面、鉛筆とおやつを準備しとったんや。この企画を今から始めた方がええよ」と通報した智埼ちゃん。
「了解しました、日澤女将さん」と私がちょっと幼馴染の女将らしい姿を弄って返事した。いつもの、智埼ちゃんが手袋を嵌めたり、純彦君が手帳を開いたり、澁薙君が手を洗い袖を捲ったり、降恆ちゃんが上着を脱ぎ腰に巻いたり、笠人君が自分の袴に襷を付けたり、そして私が関節を鳴らし読書テーブルの上に指を動かし見えないのを書き出したりした。お二人の先生が自分の折り畳み型電算機をラジオ放送の机から移動したうちに、皆がおやつをテーブルの間に並べ、企画を展開したり表記したりする道具を自分達の席に配置した。黒板と白板が互いに横に外の窓を隠すようにテーブルの前に運ばれた上で、会議が始まった。『花火團』は右、厚喜さん達と二人の先生は左。
「この会議を始める為、時間支配をさせて頂きます。現実時間と仮想時間の割合をこのプログラムを通して1から変更することにします」と通報した城木先生。彼がまず白板を投影機として動かし自分の電算機上のプログラムを展示していた。プログラムを実行したと同時に、時間支配がどう仕組まれるかを解説してくれた。時間がニュートン力学にまさに動かず、相対性のもんだと認めずにいられない。ここの基準系と、現実世界の基準系の明確な違いを利用して時間軸を二等分に分け、現実世界の割にここの時間を五倍増速していた。具体的に、現実世界の一日はここの五日間掛かることにされる。
よその基準系からの存在が登場する場合、本基準系の時間の流れに慣れたり自然な老化を障らなかったりさせる為、その存在らをプログラムの『適応関数』の変数として取り扱った。ただここに十分に長く住むその存在らがその特殊な関数をすらすら実行出来る。私達は『実時間の締切を守ると同時に実世界と仮想世界の基準系を行き来している』変数と自認しても良いので、その二つの世界にほぼ同じ強さで影響されることも理解出来る。その時、不変の基準系に住む私達が、千変万化の基準系に通うとしたら、あの基準系の環境に生理的に果たされる。恐らく、未来の老化は緩まるかもしれない。その結果は『適応関数』の誤差、或いは城木先生の呼んだ『溢れ出し』。その様子は実存の恐怖か快楽かこれ以来目に合わせてくるわ。
ということで、『樹海の近道』企画は15日間を過ごして建設の八日間と、受け入れ検査の七日間の予定だった。実時間に比べてはたった三日間掛かるだけさ。それで、10月4日までに何かが倉崎さんに関わって起こるのかを把握すると同時に、企画の進捗を保証出来ることになる。城木先生の時間支配プログラムは実行され終わったところで、二つの基準系の時間軸が某秒が次の秒になるまでどれほど掛かるか速さを表示された。果たして、ここは1秒目が2秒目になった一方で、実世界は1秒目が2秒目なるまでまだ1秒の20%しか達さなかった。こうして、ここの1分経過は実際の12秒経過だった。ここの1日経過は実際の4時48分ぐらい経過。
その後、城木先生は席を外し、この会議を司会することにした。席に座らず、白板を操作することを通じて自分の電算機をも操作していた。あの白板は書く為のものだけじゃなく、投影機や『遠距離操作装置』としても仕組んだもので、企画の図を描いたり進捗を記したりして便利だった。彼が、倉崎さんに直接に触らずに中間の手段を通して追跡することが出来る方法を、私達に思案させてあげた。答えを出したら本当に不明な力を習得したかもね。赤外線はこの企画の題材なので、赤外線を巡って考えてみていこうか?私も席を外し、黒板に近付き、一本のチョークを取り、赤外線について話し始めた。可視光線より波長が長くて電波と赤の端の間で存在する電磁波で、光が差すか差さないかも構わず、物体を温度の検出で発見するもんだ。この自然に登場する全ては絶対零度より高い温度を持つので、真っ暗か四方八方が不明かの環境にいても赤外線を発出出来る。
但し、澁薙君によると、人を追跡する為に、人間の赤外線放出という本能にしか頼らなければ足りないということだ。まずはあの人の特徴を獲得しとかなければいけない。指紋か顔面か汗か、しかも血かも良い。降恆ちゃんが、指紋と顔面だけで十分だと言った。その二つの部分は人間の形質を一番明確に示すでしょうね。ただ、倉崎さんを発見した時に、彼女の夏祭りの時の写真集が見つからなくなって、彼女の指紋を得られなかった。倉崎さんの包帯とガーゼに掛かった顔の写真、そして犯された時の倉崎さんを遠くと盲点から撮った写真が、完全な顔面の情報の代わりに、最初の難問をくれた。
すると、私の頭に何かがぱっと思い出のように出た。あれは倉崎さんがいつも結んでいる赤いリボン。松澤先生も同意を表現するように微笑んだ。先生が私と倉崎さんとあの一週間ずっと付き添っていたから。綾小路さんによると、あのリボンはフランスのサン=テティエンヌ風に作られ銀座の一番高級な洋服屋でしか販売されないことで、買い結んだ人は貴族の令嬢だけだそうだ。幸い、厚喜さんが後ろの方から撮った倉崎さんの赤いリボンの姿がまだ彼の現像室に残っているので、彼女の未完全な前側や独特な後ろ側が互いに補足したら、完全な状態の顔面の写真に相当する可能だ。では、指紋抜きで、顔面の写真を通じて人の形質を獲得し『赤外線検知器』で追跡する数理模式を作ってみる。スミヒコ君、君も席を外した方が良いよ。
厚喜さんが実世界に戻り赤いリボンが写った写真を撮ってくると決まった。現在、二つの世界の時間差は五倍なので、戻っていったら基準系の対立に合っちまう。だがそれは二つの基準系の時間軸を一番直観的に比較する為、ある人が5分予定以内で二つの世界を行き来したら時間は5分のままか、それとも25分に変わるか、を受け入れる切っ掛けでしょうね。行く前に、彼が城木先生に常に付ける腕時計を時間の計測に彼の腕に付けて貰った。あの腕時計の時刻が時間支配プログラムと強く繋がるので、白板に表示出来た。仮想世界の夜中の32分、厚喜さんが豪邸を出て、夜中の38分までに戻る予定だった。彼が自分の部屋と繋がる不思議なトンネルへに入り直した。トンネルが閉まった上で、腕時計に何かがあったことが白板に見えていた。城木先生の腕時計が赤の信号を発したり、時刻を五段で巻き戻したりしていた。時間は進むにも関わらず、各段で\frac{|\tau_{from}-\tau_{to}|}{5}の数式に減る。厚喜さんが自分の部屋に戻った時に、実世界の時刻が想定の12時6分36秒を大変ずれちまったが、まだ大丈夫なの。
もう20分掛かって待っていた。4分の待機なんてあんなに長くて思った以上だよ。仮想世界の夜中の58分、あの腕時計がまた赤の信号を発して時刻がここの基準系に戻ったと見たら、厚喜さんが戻ってきていると気付いた。私達の期待している写真を持って来た。あれは三年前の夏、倉崎さんとの連絡が途絶える数日前、彼女と厚喜さんが一緒に東京の外郭の道を歩いたという背景だ。厚喜さんによると、この写真を撮った時は夕焼けで、倉崎さんの当時着たのは水色の浴衣で、あの赤いリボンを真っ暗に際立たせた。あの時、厚喜さんが倉崎さんのお父さんとぶん殴り合って、瘤と痣に掛かった顔をした。あの喧嘩の後で倉崎さんにもう連絡しづらい可能なので、彼がこの写真を撮り証拠として残した。この写真で、彼女が両手を組まずに緩めながらのんびりそうに歩き出し、まるで自分の辛い運命を受け入れに行ったようだ。彼女の後頭部と背中しか見えないが、顔面の表情がどんな悲しくて絶望か、後ろ側に広がって感じられたかも。
城木先生の見せた『濾過器美術大会』の動画を誘因に、人の特徴と赤外放射に基づき確率付き追跡という数理模式を展開させて貰った。慶應義塾に貸して頂いた電磁波の専門書によって、放射線のエネルギーを計測するシュテファン=ボルツマンの法則のことを習得したし、この数理模式に立派に役立つと考えたよ。松澤先生によると、入力するのは単なる白黒の写真なので、一層目はそういう粗い情報をなるべく走査することを担当しないといけない。走査した上で、二層目は赤外線の温度検出を利用し白黒の写真を色付く写真に変えることを担当する。可視光線の色が付く写真が出来たら、三層目は登場人物の特徴を選抜する為に再走査を行う。そして、四層目は本人の行動傾向を推測し確立を表にすることに。最後は五層目で、対象とした人が去ったり逃げたりして行方不明になる場合、本人の向かう確率が一番高い行き先を三次元空間で出力し、最短の道を探査する。わー、人をさっぱり追い掛けるかのようだね、車にも乗らずに。
こんな数理模式は私達が展開出来るなんてあり得ないでしょう、お二人の先生が介してくれなければ。この模式が黒板に文字に出来る前に、機械が数学的な方法にどういう風に従って人間のように働けるのでしょうかを、松澤先生と城木先生にもう40分掛かって教えて貰っていた。機械と人間は感情なしと感情あり、という違う点を持つ常識がラッシュナトゥール人の文明で広がっていた。だが、機械は精巧になればなるほど、感情があるかどうか、人間のようにか人間以上かも何でも出来るもんだ。何故なら、精巧な機械は人間の頭脳の仕組みに沿って作られる。人間の仕事が出来るまで、まず赤子のように扱われ、子供のように世界を教えられ、次に数回で自分の学んだのを運用して避けられない失敗を学び、更に人間以上何千何万回も試し捲った上で、初めての成功を得ることになった。彼奴が世界を学べるようになるのは数理模式を通じないと無理だ。こうやって、機械は人間とある交差点で出会う。あの交差点は機械と人間が、ある問題にどうすれば良いか考えてやってみること。それから、機械と人間が、同じ不安、不確定、躊躇を抱えていて、自分が未来しようとする全ての行為がどちら良いでしょうか、賭けをやっとく。良い賭けは利を倍得る。反面、倍失う。
私達がこの五層でそれぞれに独自の名を付けていった。と同時に、各層がどのように動くかを設定した。最早この深夜の会議を山場に差し掛けたね。一層目は『画濾過』層。智埼ちゃんがそう言った、「城木先生の展示しとったあの濾過器の濾過機能を再現すること出来ひーんやけど、写真やらの対象を写す全てのものを綺麗にするちゅう条件では、あの機能を出来るだけ凝縮した方がええんで。20世紀初期はまだ撮影の初期やさかい、殆どの写真が酸化銀やら白卵やらの埃に残っとるし、長いあいさに撮ったに連れて酸化が厳しくなって対象が暈けてまう」ということで、『画濾過』層は『機械の目』を使って写真の複製版を作り『電子化情報』にする。その後、乱れを上げる情報をなんとか消し、対象の像を目立たせる。
『画濾過』層の作成は、入力した写真の品質の評価という走査プログラムだった。走査済みの写真は細やかさ・明るさ・画面の乱れ・色の豊かさ・鮮明さに評価される。城木先生は使用中のプログラムの代わりに新たなものを作ろうとした。勿論、あの奴は写真処理に向かって機能を有するだけ。一層目のプログラムは走査関数と、評価関数を含む。走査関数は先生達の電算機に付いた写真機と繋がり、写真を数秒の限定で見て、電子化の複製版を得ることを許可した。この事情では、包帯に掛かって寝た切りの倉崎さんや、赤いリボン姿の倉崎さんの後ろ側の写真。写真の電子化は実は、紙製の写真の像を撮り、数千の正方形にばらばら割り、原版と同じようにまた組み立てることだ。正方形はデカルト座標系に提示された。座標が0に近付くに連れ、写真が細やかになる。
評価関数はその六つの評価基準を属性にし、電子化版を受け入れ、その六つの属性に計算して貰った。計算ではまず、作成された正方形の総数から、明部、暗部、中間部の正方形の数を数え、部分の数と総数の比例を考査する。続く前に、笠人君が言った、「俺達がこのプログラムに六つの基準で小さい正方形を全部検閲して貰えない。求める『機械の力』が異常に多いし、実行時間も異常に掛かるし、無駄になってしまう。何故お客様のご注文を扱うには集団の方が優先になるかというと、同じか違うかも問わずご注文を郡にして一発だけで料理を出すんだ」そう、笠人君が『群分算法』を提案した。機械に写真をもう一回読み、景観を眩しくしたり暗くしたりし過ぎた域を囲い込み、域の範囲を計算し、数回でその範囲を減らして貰ったら、酸化された一番上の層をアルカリ性のもので洗浄するという風に、写真が段々鮮明になる。
綺麗になった写真は二層目に連れて行く。二層目は『赤外れの痕跡』層。赤外線の語呂ね。また、この層には『赤離れ』ではなくて『赤外れ』を使ったのは、意味があまり異ならないものの、赤外線の力を借りて潜在の派手な色を現すという本当の主張を通す訳で、その風に技術をこの層に展開したの。ステファン=ボルツマンの法則はこの技術を築いた。温度に強い関係がある赤外線に加えるなら、白・黒・灰色というたった三色が付く写真に写った景観を読み、目が見る実際の景観のように彩ることが出来る。濾過済みの写真を入力した上で、E = σ * T^4という数式には温度検知関数を通じて写真の雰囲気を読んで貰う。この関数は明部、暗部と中間部をもとに雰囲気の温度と域の温度の引き算をする。全てのものが別々に一定の放射線を受けたり出したりするので、(T - T_env)^4じゃなくて、T^4 - T_env^4の方が正しい。
但し、エネルギーじゃなく物体の温度は私達が気になるものだ。つまり、ステファン=ボルツマン法則の数式をひっくり返していく。それで、放射線のエネルギーの確定はまた、一層目からの正方形の行列、そして群分算法に任せるものじゃ。『エネルギー感知』という前提関数は一層目で囲い込まれた群に基づき、『明るいに従いエネルギーが大きい』という法則を守ってエネルギーの数値を推量する。この仕事は機械が数十回でやり捲る、最後の結果に縮まるまで。城木先生が『線形回帰』と呼んだ。そうすれば、温度検知関数は各域のエネルギーの数値を使って、雰囲気の温度を平均法で、各域の温度を4乗根で計算出来るのさ。
その後、検知関数は『赤外線が吸収されれば温度上昇、放出されれば温度低下』という法則を守って写真を『赤外線検知版』に画面に提示することになる。温度の数値はウィーンの変位則を通じて、可視光線の色を放射出来る波の長さを出力する。温度は波長に逆比例する。然し、吉澤さんが言った、「波長を確定するのは自分達の目が見る色が作られる訳ではない。波長は可視光線の範囲を外れてる可能性が高いんだ。どのようにあの波長を可視光線のものに調整するかを解いてから、この二層目を完全させる」確かにね。だったら、もう一つの法則が必要でしょう。具体的にはプランク殿の五年前公開した最新の法則。プランク殿の最新の法則の記載が国内で見付からないが、城木先生の本棚でのラッシュナトゥール人の公開した同じ法則の本があって良かった。
プランク法則を通じて色付いた写真を手に入れたら、三層目に続く。『ごますり鏡』層と呼んだ。写真の登場人物に諂うなんてないでしょう。ただ本人の外見を写真の背景から際立たせ、ずっと応用している群分算法であの人の顔面の遺伝学的な特徴を抽出し、あの人の肌身離さず持っているものを強調することで、『ごますり』をやるかのようだ。この三層目に入力するのは一枚の写真だけじゃない。ある人の姿がはっきり見えるように前側、後ろ側、側面も撮っとくから、この層は全てを受け入れ、『畳み込み算法』を使って人物の全ての特徴を集め、一覧として保存してあげる。サンドイッチを数枚重ねるようだが、様々なサンドイッチを重ねる場合だね。
ということで、最後の二つの層に移る。ここで、機械が一番大変働いたり、賭けをやったりして結果の一覧を出力することになる。四層目は『心理学者の目』、五層目は『独裁者の目』と呼んだ。同じ『目』を付けたのに、全然対立な地位の人に向かって用いられたもんね。四層目では、何の写真もが必要ないし、登場人物の指名、年齢、出身、そして経緯についての情報を頂戴する。お患者様に諮問する前に彼らの病気と苦悩を教えて貰うお医者さんのようだね。この層は人物の顔面と外見から隠れた秘密を見抜けるが、外の世界に生意気に全部伝えることなんてない。秘密が一つじゃないし、どちらが現実に叶えるか確かめられないし、ベイズ条件付き確率をもとに人物の行為を一覧にして見せる。城木先生によると、確率が正真正銘になれるように、人物の情報がなるべく詳細になること。情報が詳しいに従い、機械が系統にしたり、共通点を見付けたり、色んな状況を思い描いたり、将来の傾向を予断出来るよ。
人物の行為の一覧が出来たと、『独裁者』は参加してこの模式を完成させる。独裁者そして独裁政府なら、自分の国民の振る舞い、言葉、傾向を全て政治的にし、彼らの目指す道だけを歩く為にいくらでも操ろうとする。彼らは国民がどう生きるか、何処へ行くか、何処で働くか、誰と付き合うか、別の道に歩く意図があるかどうか、徹底的に視察し、自分を法律にして自由勝手に判決を言い渡すというものだ。五層目はある独裁者の役をする。元々保存された地理的な情報を使って、地理座標系のプログラムに三次元地図で人物の位置を提示して貰う。人物が移動すれば、痕跡が残り、私達が追跡する。どうして三次元?二次元はあの人の座標を教えるだけ。三次元はあの場所の地形、あの人の現実的な路線、そして実時間をも教える。人を追跡するなら、座標・地形・時間を身に付けないと。
誠に言うと、『樹海の近道』企画は疑わしい相手にとって独裁者がどうすれば良いかという質問を誘因に、暗闇でも人が見つかるように暗視眼鏡を作る。あの独裁者は、危険な犯罪者を逮捕する勇者か、それとも無罪な国民の権利を侵害して自分の権力を拡張する暴君か、暗視眼鏡のような装置だけが判決出来るさ。ラッシュナトゥール人の文明で、赤外線は軍事と救命に暗視眼鏡を作りによく用いられた。暗視眼鏡のお陰で、真っ暗な環境で、洪水で救命したり、失踪者を見付けたり、死体、沈船、飛行機の残骸などを発見したり、敵と戦ったり出来たよ。この模式が出来た時、深夜の会議も終わりになった。これからこのような暗視眼鏡を作り始めて興奮しちまった。
ホモ・サピエンス風のものにするね。五層の数理模式に対応出来る為、眼鏡のフレームと二枚のレンズがより強く、硬く、厚くなるべきだ。今日と次の二日間で私、智埼ちゃんと厚喜さん達が眼鏡のレンズとフレームを形にする。その時、純彦君と笠人君がお二人の先生と一緒に数理模式を設定する仕事を任せられる。その後のもう三日間で、私、澁薙君と降恆ちゃんが、人の血管のような小さい電線を眼鏡に入れ、数理模式に繋ぐ仕事を担当する。これは拡大鏡が要るの。最後の二日間で、私達が数理模式と眼鏡の暗視機能を実行し、誤りを探し、完成と確認する。以上は私達の時間割だね。でも皆が気を付けなければならないのは倉崎さんが目覚める瞬間。出来るだけ早くこの模式を完成させ、写真を入力しとけば、先生達の画面に位置を更新し、次に眼鏡を気にするのさ。




