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日本の定理・上巻  作者: 泉川復跡
【『樹海の近道』編】第十一章。最高の建造物
33/49

11.3. 末期で、偉いものが誕生した

 挿絵(By みてみん)

 9月26日。昼間で雨がざあざあ降っていた、引き札を描く朝よりも。夜間で雨が止んだものの、気を付けて歩かないと滑ったとは当然だ。今夜は、松澤先生、城木先生そして『花火團』が私の家に訪れることにした。多くの患者も退院したことによって、澁薙君と降恆ちゃんが既に病院で宿直しなくても良かった。この訪問は当たり前に私の具合を調べるなどなく、城木先生の家の訪問の為だから、私達『花火團』の誰でも長く待つのが出来ず、別々に人力車に乗せて貰ってここに急いだ。運転の途中で車夫が滑って転んじまうこともあったよ。あのことに遭ったのは純彦君と豊かなカップル。皆を迎えた時は、彼らの泥と擦り傷の付いた格好を見て少し笑っちまった。

 家庭訪問としてお父様とお母様と私について会談した上で、私の家を城木先生に観覧して貰うことにした。パズルピースを出る前にパズルピースの機能で私の家をさっぱり知れると思われたが、パズルピースの持ち主の私生活の権利の為に、城木先生が自宅の家の観察という機能を最初から設定しなかった。それで、今回は先生の初めての観光。私の家の一階目と二回目はまるで二つの世界にあるように見えた。一階目はお父様とお母様の料理人の多彩な世界で、親の寝室の隣にはお家庭料理向け一つと、渡邊家の知り合いと仲間への料理向け一つといった二つの台もあった。二階目は渡邊家の娘の科学者の多彩な世界で、私の寝室以外には読書室、勉強会向け部屋、企画の展開向け部屋と研究室。私の家の大きな庭は木の世話以外に、実験場として使われることもあるよ。ただ将来、この庭は『若原屋』の敷地に実験場の役を譲っていくのね。

「『花火團』の本営みたいですよ、渡邊さんの家は」と感想した城木先生。「最適に運用すれば最早塾になれるんです」

「あたし達の本営ですよ、ほんまに。純彦君の家なら隣の製作所のお酒の匂いに迷惑を掛けられてまうし、あたしとカサト君の家なら本営になるたけ十分に大きないし、ナギ君とツネちゃんの家なら遠過ぎるし、ムラマサちゃんの家を少年祭の前に決めたのです」

「ということは渡邊さんが自分の家を改造したでしょうか」

「はい、三年前からです。チサトちゃんとナギ君と仲良くした時、団体がもう出来ましたので、勉強会とか企画の展開の為になんとこの家をちょっと大きくしてみようと思ってます。最初からこの二階目はたった私の寝室と読書室でした。昔の読書室は今の勉強室です。団体を作ったのち、昔の読書室を勉強室にして、あの後ろにもう一つの部屋を新しい読書室として建てました。スミヒコ君と仲良くした一ヶ月後、私達の座ってるこの大部屋を建てたのです」

「ならば、ここは昔ただの屋根の上でしょう。貴方の家の発展も『花火團』の発展と同時ですね。この家は和風なんで、構造を少し更新しても元々あった部分に影響しなくて良かった」

「ちょっと影響してました。新しいパズルピースを加えて組み立てるという風に二階目を更新したので、その間に一階目で勉強したり遊んだり親と一緒に寝たりしてたのです」

 智埼ちゃんが言った。「たまにあたしがムラマサちゃんの家で宵越しをしとるさかい、二階目で業者達が板を組んどると同時に、一階目であたし達四人が布団を敷いてぐっすり寝とったことあるやん」

 澁薙君も言った。「上の大工の音と、下の鼾とどれの方が大きいと競ったようだろう。僕もここで宵越しをしたことあるから、あんたと同じ経験しちゃったさ。覚えただけで笑っちゃう経験だね」

「あんた達二人と一緒の夜もあったでしょ。五人もが寝たら親の寝室にぴったり合ったし、鼾をかいたら大工達をびっくりさせたよ」

「随分涼しいでしょう、ここは?この部屋の両方にも露台があって空気が簡単に流れるし、空も楽しく見られるし、勉強とか研究とかも趣味になれるかもしれません」

「はい。ナギ君も望遠鏡をここに持って来たことありますから」

「確かに、こんな家みたいな別の家があれば、三人がしかいない家族が主であるものだと思わないんです。ほぼ一族の豪邸でしょう」

「先生、この子と彼女の親だけでなく、彼らの夢が宿る場所だと思ったらどうかしら?」と言った松澤先生。「この家は、地味な家族には自分達の夢を実現する道具を収納しない場合、余計な建物になってしまうんだ。夢はこの大きい空間を満たすだけなもんだ」

「確かにね、私の夢と親の夢。チサトちゃんと笠人君の家も初めに親子の二人っきりで宿る為小さなものでした。『実験室のマダム』という夢をチサトちゃん、『最高の料理長』という夢を笠人君が目指したことは、彼らの家も大きくなってきたのです」

「裏にはもう一つの部屋がありますね」と言った城木先生。

「はい、道具の倉庫なのです。倉庫がないと色々な道具がここにばらばらになってこんなに綺麗になれませんよ」

「そうですね。しかも面白いでしょう、この部屋は研究室と企画展開室をまるで合併して。ここで何かを研究してからそこに移るのが一瞬で出来る訳ですね」

「はい、私の家ではよく『花火團』の会議を開くその為です。勿論、別のメンバーの家でも野外でも会議を開く例外もあります。最近はナギ君の家と、外郭の酒匂川」

「うんうん。時々雰囲気を変えるべきですね。将来、あの広い草原を使い直したらここを使う時間が減ってしまうかもしれません」

「だから大学にあの地をうちの学校に譲って頂きたいと求めました。少年祭後に室井社長の団体ももう八田蜜と白濱の管理を辞めて現任の校長先生達に任せることにしたので、両学校が自主の私立学校になったし、正当性を保証する為、不動産の財産を手に入れることになる訳です」

 松澤先生が私達の本意を握ったかのように言った。「あの地を横取りしたがったでしょう、君達は?校長先生達はただ完璧な仮面にされてしまうじゃないか」

 私が応えた。「先生、先生がそう言ったら私達が廣瀬君のお父さんのように見られるじゃありませんか。譲渡すれば、全ての所有権は両校の校長先生達に全ての権利と責任を取って頂くので、支配者の役はようやく彼らに担当して頂きます。そうならもう一つ、二つの建物とか体育場とか実験場を建てるかどうか、あの地の自然さがある限りどうでも良いです」

「然し、譲渡の決定はまだ通過されてない、あの事変のせいで」と言った純彦君。「多分、大学も私達の本意を把握した故に、あの事変からの危険に基づいて遅延することに。この子供達がまだ地主になれないので、自分達の大切なものを守る為に自分達の後援会として続いていきたい、という話だ」

「全体的には良い決定ですよ。君達も大学もあの地がどれほど大事なのかが分かってるから、そう考えてみたらどうでしょうか。この遅延の期間は君達が自分の決めた地を自分で守り抜けるかを、大学が調べていく時だと」と言った城木先生。「つまり、君達が早かれに次の企画を展開しないといけません。どうですか?」

 私が返した。「私達もそう思ってますけど、まだ躊躇してます」

「どうして躊躇?もしかしてまだ思い付いてませんか?」

「いいえ、もう思い付いたけど、次の企画の下書きを完全させてないのです。城木先生の見せた濾過器の美術大会の動画から、なんか入力の処理の層を簡略にする設備を思い浮かべました。但し、そのような設備はどのように作成出来るのか、一番迷ってるのです」

「なんですか、この子が」と強く感想した城木先生、私の考えちまった無理なことに。「君達の時代では放射線を見付け出したら最高なもんに決まってるでしょう。私達の濾過器は電磁放射線に依頼しなければあんなに見事に濾過出来ませんでしたよ。波長が小さいに連れてその放射線が分子の構造を破るのが高いけど、副次的効果を起こさないようにしてるという、濾過器の製造業の全ては設立以来初めから頭に刻んだんです。放射線の副次的効果は知ってますね、渡邊さん」

「はい。被曝そのものです。レントゲン殿の作った用語」

 智埼ちゃんが言った。「ムラマサちゃん、今度の企画が出来たらあたし達の最高の建造物になれるかもね」

「んー、うちの夏祭りは今の最高の建造物だと思ってる。次の企画は交流発電機のレベルに当て嵌まる設備を作る限りだけど、夏祭りを超えるようにしたいの」

「超えるか超えないかも構いません。君達の一生懸命頑張った全ての企画、夏祭りとか少年祭とか、最高の建造物であった訳です」と言った城木先生。「さて、私達のパズルピースを作った理由を知る為に、私の家に訪れていきましょうか?」

 純彦君が誰よりもわくわくした。「是非是非。ほら、お前達、お茶を早く飲み切れよ」

「分かった分かったよ。うちのお茶が美味過ぎるから早くしては困るわよ」と私が返事した、熱い紅茶をじたばた啜りながら。

「だがどうやってに先生の家に?そのパズルピースで?」、澁薙君が三枚のパズルピースをしまった紅の重箱に指を刺しながらそう質問した。その三枚が互いに抜けられ別々の一枚に戻ったよ、城木先生の『分解ペン』によって。型抜き風にやったら抜けるさ。

 城木先生がいつもの、『挑戦のパズルピース』を再起動した。そう、そのパズルピースは先生の家だから、先生が再起動したのは「ただいま」という風に玄関の扉を開けることに過ぎないでしょう。私達と松澤先生がお客様となった際に、先生の家に参れるようにまた一つのプログラムを実行しなくてはいけない。それは勿論、城木先生の設計した『他人への極秘自宅訪問許可』というプログラム。城木先生がそのプログラムの変数と母数を、自宅の秘密さを一時停止にして私達を入らせに、どうか変更したのちに実行した。パズルピースからトンネルの入口のような、不思議な入口が出てきた。その奥に出口が全然見えない。私達が安心に入れるように城木先生と松澤先生が先に入った。入った時、城木先生が入口を閉めちまい、このトンネルを真っ暗にした。だが一刻も早くここにちょっと灯りを付けた。しばらく後、私達の上に、三日月と星空が出てきた。そして、トンネルの空間が水平線まで広がり、静かな浜辺の地という風景に変わった。

「わー、星空の浜辺だ。天の川もはっきり見えた。波が優しく荒れてるし、風も優しく吹いてるし、この砂の上に焚き火をくべるなら最高じゃん」と降恆ちゃんが感想した。

「この大きい空間は多次元で仕組まれたので、君達が本物だと感じられるんです」、城木先生が言ってから、砂の一握りを取りゆっくり落として見せた。「ここは最初からトンネルじゃありませんよ」

「ならここが再現してるのはどれですか?」と聞いた笠人君。

「ここは澁嶺です」と城木先生が答えて私達が凄く驚いた。「ただ原始の時代の澁嶺ですよ。荒野の浜辺、木麻黄の並び、遠い前の平尚(ひらなお)山脈、そして木麻黄の裏には窯籠(かまごもり)の森へ敷く草原と平野なんです」

「先生、現在に当て嵌まるでしょう、この星空は」と私が言った。

「そうです。たった今、外の世界の基準系に合わせるようにこの空間の時間を整えました。ここの一日は外の一日と同じ」

「さすが何をしても私達を驚かせますね。ここの空間と時間を支配することも出来たなんて」と私が感想した、神々だけが支配出来る空間と時間のことに。

「皆、この砂丘に登って木麻黄を越えて草原をあと少し歩いたら私の綺麗な館に来るんです」と城木先生が案内した、本当の添乗員のように。私達も一斉「はーい」と呼んでいた。

 途中で、純彦君が面白いのを質問した。「雅實君、物理の信徒として、空間と時間をラッシュナトゥール人が支配出来ると初めて聞いてから、ニュートンの力学に反対する人がいる感がある?」

「いるはずわね。ニュートンさんは空間と時間がこの宇宙を神様の志に仕組むなどで絶対になると肯定した。でも空間が伸びたり時間が整ったり出来ると見た時、多分その肯定がいつかある肯定に潰される。空間と時間は絶対じゃない、ああいう肯定だね」

「だろう?何の法則でも永遠に存在することはない。論理の隙間が無くなるまで、必ず法則との論争が続くんだ」

「へー、偉そうに言うわね。多分、君の心の中は『数学は論理だ。数学の定理は絶対に潰されない。ははははー』って呼び出したみたい」と私が弄って言った、純彦君の声を真似て。

「ったく、人を揶揄わないと生きられないね、マサちゃん」

 私がたった笑顔で降恆ちゃんの文句に返事した。その時、砂丘をもう渡った。さらさらと揺れた木麻黄の並びをまるで扉を開くように渡ったと、草原と平野の組み合わせる光景が現れてきた。砂地を離れ芝生を踏んだ時、夏休みの初日に鞄を付け小田原の外郭の田圃を走り出したのと同じ気持ちが溢れてきていた。夜によってその芝生は、緑が見られないのに、上の星と天の川の光と内陸からの風によって数茎の草が踊るようにしたり、隠れる地下水が閃いたりしていた。この巨大な緑の絨毯が唐突じゃなく高まったに連れて、私達の後ろの海がただ水平線までの遠い水としか見えないし、風も皆の裾が強く揺れるほど吹いているし、荒野も近付いてきた。こんな風景はやはり数億年前の地球のものだけでしょう。草原に着いたと、城木先生の居心地の良い家がきらきら見えた。それは以上じゃない。先生の家だけでなく、もう二軒の家も私達の目線に映り込んだ、ちっちゃくも。あの二軒は一軒が南の森の辺に、一軒が北の伸部(のしべ)川の左岸にもあった。

「先生、パズルピースの仮想空間でも近所もいますね?」と私が先生に遠くの家を気付けさせて質問した。

「あれらも私の同僚の家なんですよ。しかも私の同国民」

「えっ。ここで生活してるのは先生一人じゃないのですか?」

「こんなに大きい空間で一人で生きるなら最低な生き方になってしまいますから。パズルピースの仕組みによっては、全てのパズルピースが繋がり合ってることで、パズルピースの同国民の作り手の場合なら当国の首都の原始な空間に住ませてあげるという訳ですよ。ただ君達がまだ彼らのパズルピースを見付けてないので、彼らと直接に会えません。つまり、ここから彼らの家に着こうとしても蜃気楼のように見えるしかないんです」

「残念ですね。蜃気楼じゃないのに来られないし。でも彼らも先生の家に訪れることがあるから。もし部外者も来たら?」

「そうだったら彼らが私達が全然分からない言語で城木先生と交流すると見るんだ。私もほぼホモ・サピエンスだし、たまに先生の家に参るし、あんな事情にも合ったことあるよ」と答えた松澤先生。

「あの事情で君の通訳者を務めてたんですよ。貴方達が私の言語を学べる以外、その担当を続けますから・・・はいっ、到着しました」

 やっと城木先生の二階建てに着いた。アルべランドという先生の本姓が門柱の笠木で被根橋語で刻まれた。ヨロッパ風の家だと思われたら、違う建築様式を持っている。城木先生によれば『ダンガスト(Dangast)建築』いわゆる『田幅画(だのが)建築』。屋根はそれぞれの瓦が積み重ねられることなく、ぴったり互いに組み立てられ下がりの方に向かった。壁は同じ形の煉瓦じゃなく、四角くも三角でも円形でも良い煉瓦が組み立てられ、コンクリートによって固まった時、絵を描くように色々な塗料を塗られてやった。色々な形の田圃が完全な絵を写したように見えた、その壁に。全ての戸口は私達の首でより高くて両開きだし、両側の二個の球体の電球を装置するし、その電球を使って家の茶色の壁の、黒・赤・白のルーレットの絵を表示する。庭は澁薙君の豪邸の物の半分ぐらい広いし、門扉からは晴れの日に爽やかな陰を作る木の並び、花の並びと、左側のテニスコートと右側の多能性の芝生。

「ようこそ、私のお家へ」、右側にある入口の扉を開ける時の城木先生が歓迎の挨拶を言った。「全ての部屋は左側です。入口からは居間、そして二階目への階段、台所、お手洗いとお風呂の集まり」

「先生、家の右隣の黄色い機械は車ですね」と聞いた笠人君。

「うん。前に見せた動画に登場した車ですよ。蛙の姿をもとに作られて私達の時代で最も流行った車の種類です。私のはマンネストロー(Mannestrow)矢波(やなみ)の種類。いつかあれに貴方達を乗せて旅をします」

「へー、超楽しいじゃん、あれは」と興奮満々に言った澁薙君。

「さっ、皆居間にどうぞ。私が特産の飲み物を準備してきます」

 城木先生が居間の杉の香りのある門を開けたと、ソファに座る前にもう一旦と私達が唖然としちまった。やはり、大学の図書館に入ったような感じが強くなっていた。最適に用いられるなら一つの学級が入っても気楽だね。天井には両側の梁がまるで結び合ったようにアーチの形をし、教会と図書館を組み合わせたようだ。三つの本棚は多分壁に釘を打つ単純な動作で付けられたようで、二人の大人ぐらい高くて一番上の数冊を取るならばなんか梯子が要るしかないし、各棚に少なくとも百冊も入れてあるもんだ。私達の前の二つの本棚の間にはもしかして、窓辺の城木先生の作業机。その机には左側の本の山、右側の探検家らしい日記と、真中の、鍵盤を付ける電算機・繭の型の先を付ける聲変換機が仕事をやり終わったばかりのようにきちんと整えてある。先生が外の世界に出る前に、その机に座りその道具で私達の全ての行動を観察したり私達と通話したりしていたね。

 本の三昧として私が、直ぐに先生の本棚と机にあった本の集まりを気になった。ほぼ先生が博士の時代で収集したり自作したりしたものだ。学術的なもんだけでなく当時の小説もさ。残りは、人間の世界に交流する時の先生の集めた、日本の御伽噺集、アンデルセン殿の物語、ジュール・ヴェルヌ殿の『海底二万里』などなど。但し、私が背表紙に指先を擦ってみる本の集まりには、私に引き出させる一冊があった。それは、ザイン(Zeine)フッケリーン(Hookelyn)歴史家の著作、西暦1772年に初出版、『末期で、偉いものが誕生した』という本だ。この本を引き出してからソファに座れたよ。

 この本は三件の表題で書かれた、ラッシュナトゥール人の文明の絶滅の略史、ラッシュナトゥール人の科学者の遺産保存企画、そして一番注目する、ラッシュナトゥール人の最高の建造物という。一つの抜き書きがそう述べた、この本の三件目から。『八十日過ぎを経って奇跡のジグソーの小片を形造り先進の技術を仕込み切ったとしても、彼ら地球に居残ると決まった優秀な頭脳達は、そういう小さい物の贈った生きる空間で死ぬ日も分からぬに生き続けることに、嫌な感を溢していた。ジグソーを作る企画に入って以来、死に得ない力を貰うと契約した。ただ、次の種族が出る世界を迎えるまで待機する倦怠感が、あの契約を紙屑に変えてしまう。すると、無限になってしまった命をまるで有限だったもののように生きていく為、彼らの命ほどに相応しいものを形造ろうと決めた。凡人を脱皮し、神様を出演するという。ところが、七年間躊躇していた、一生最大の震災が起こるまで。あれは彼らの祖先が数百万年も成り立った文明を地中に沈みゆっくりと滅ぼす大淘汰が果たした。まだ見果てぬ下書きを完成させつつ、それぞれのジグソーにもう一つの機能を追加し、接続力を震災を構わず強くした。あの機能はジグソーの代表した知識を摘出し、新たなものを作りに参加させるものだ。知識の空想な広さといったら、あの新たなものは新世界か、新惑星かのはずだ。案の定、あの機能は、何枚のジグソーにも神様の外套を羽織り、科学者達に創世の日記を記させることになったんだ。ラッシュナトゥール人の最高の建造物はそういう事情で生まれ、猿達が進化し始めるまでに完成した。地球と同行し双子になった惑星が人工的に生まれた』

「あんなに城木先生達に似てたわね、私達は。倦怠感を治すにはあんなに頭脳の極める建造物さえも出来たなんて、何も言えないわ」

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