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日本の定理・上巻  作者: 泉川復跡
【『樹海の近道』編】第十章。新言語の訳者
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10.1. 「半分の真実は、真実をもとに一番効果的な嘘」

「はい、これから宜しくお願いします、城木博士」、純彦君がまた厳粛な声でこの相談を終わらせようとした。

「また博士と言ってしまったんですよ。もう一度繰り返します、『城木さん』だけで良いということ。私はもう博士ではありません、何も研究したり製作したりしなかったので」

「でも以後私達を援助する時は、私達がまだ知らない知識を教えたり物を制作したりあり得ますでしょう」

「んー、そうならば、博士というより、先生と呼んで貰えますか、貴方達の担任教師と同じ」

「良いでしょ、城木先生」、純彦君が新たな呼び方を使った。

「だが、私達との相談はまだ終わってないだろう。君達にはまだ沢山の質問があるはずだね」

「当たり前ですよ。城木先生と松澤先生の種族には好奇心がどんどん溢れてるのです。お二人の種族はどの名と呼ばれるのか、使った言語はどれか、あの文明はどうなったのか、どうして僕達のことを無数の人々の中で選んだのかも悩んでますよ」

「それじゃあ明日再び相談しましょう。今度は『花火團』の全員揃って下さい。明日は全ての謎を解きますから」

「是非お願いします。城木先生、この後、このパズルピースに帰るつもりですか?」と聞いた純彦君。

「私の家なので帰りたいなら帰ります。今は出掛けて外の世界の皆と交流したいと思ってるんです。良かったら、貴方達の身内を改めて紹介して頂いても宜しいでしょうか?」

「良いですよ。マサちゃんとずっと付き添ってる保護者である城木先生の見た目は皆さんに見せるべきです」

「私達が先ほどの相談を纏めて皆にちゃんと説明しますからご安心下さい」と松澤先生が言って城木先生の正体が安全であることを保証しようとした。城木先生がパズルピースから出てきた今回は初めてじゃないと私達も気付いた。外の世界に出るに当たって身分の文書に七面倒されないように、松澤先生が城木先生を自分の兄さんとして松澤家の戸籍に追加する偽計を作った。この時代では、出生したばかりの赤ちゃんに当たり個人の情報の記録はまだ展開されていなかったから、大家の戸籍をもう一人の新人で更新しても社会ぐるみを脅かすことではない。但し、地方の政府に、城木先生が松澤家の長男だと思わせる為に、彼の日本らしい情報を記入しないといけなかった。そう、先生のご両親はあんなことが出来るたった二人、とにかく三代目だからね。勿論、城木先生も自分の姿を生まれてからの赤ん坊から大人のように変更するようにしていたよ。人間の政府と住民を騙す為、先生の共同体と、前の科学者の団体がそんな風に団結するしかないが、非常に良い効果を得たわ。

 もう病院の夕食が始まった。病室の電球も光った。城木先生も半球体の透明な盾を無効化し、元の空間に戻ってきた。二時間も過ごしたさっきの相談によって、全員がお腹空いたことになった。治療中だとしても私はお粥だけでなく飯とか固体の食べ物を食いたかった。ただその前に鎮痛薬を飲んどき、左側の顎でしか噛まずに食べることだった。降恆ちゃんが私の正気じゃなさそうな要求をやむを得ず確認し、本日の点滴の三杯目を取り替えたのちに、給食を持って来に行っていた。たった七分間掛かって裏側の食堂から二つの番重を三階のここに運んで偉過ぎだったよ。

 私の給食は椎茸・鮪・海老の雑炊、野菜・茹で卵・牛肉団子のお汁、そして智埼ちゃんの作った生姜・蜂蜜・乾燥の菊のお茶。雑炊はお粥の割に柔らかくないし、ご飯の割にも固くないし、食べるならご飯を感じながらも噛むのを苦戦することがない。海鮮と卵は私を早く治す為の蛋白質を立派に供給するし、牛肉はそれ以外に立派な鉄の微量で自分の失った血液量を埋め合わすものだ。また、智埼ちゃんのお茶は中華風の草木をちっとも入れず黄色い菊、蜂蜜の優しい甘味、生姜の辛味を組み合わせその三つの奴の同じ抗菌性で私の顔の神経と血管の潰された所を復活することが出来るよ。

 降恆ちゃんが鮭のおにぎりを食べると同時に、噛み中の私をよく観察していた。智埼ちゃんの暖かいお茶がないとしたら、噛んだ度に誰かに薔薇の棘を私の顔に一本思いっきり刺されちまう気がした。食事に入る前にお茶を啜って口を洗うことで、一匙を食った度に頬の骨で何かが引っ掛かる感じがしても疎ましいほどなかった。わー、やはり最高だね、この雑炊とお汁は。昏睡を逃げたし食欲がまだ整っていないのに八時まで二個のお椀を空にしちまえたことは重傷の患者にとって素晴らしかったでしょう。

 食事後、降恆ちゃんに用便と入浴に連れて行って貰った。四日間の昏睡のせいで、身体が病床からまだ動き直すことに慣れていないから、介護を担当するこの親友にずっと介助して貰うことになった。入浴というのは体を拭くことだけだったが、男もいる病室なら自分の病床で幕抜きですればいけなかった。それで降恆ちゃんが私を負んぶしていた、右で四つの病室で隔てる女性の浴室とトイレに。この時に月の物にも苦しめ直されていたし、降恆ちゃんに新たな浴衣で取り替えられ、ズロースの股に亜麻布の巾を付けられた。私を病床に戻した後で、降恆ちゃんも他の看護師と一緒にここの残りの患者の具合を面倒していたよ。あの事変の怪我人に限らず感染症、消化器の病気、労働中の事故による骨折を負った人も一緒に治療中なので、大抵四時間未満しか寝られなかった訳。

 ところで、降恆ちゃんは何処で寝て良いの?あの問題もお父様とお母様と『花火團』の残りの四人の様子に使われる。お父様、お母様と笠人君は病院の食堂の担当者向け寝室で、智埼ちゃんと澁薙君は二階にある病院の宿直中の医者向け寝室で、純彦君は火花による火傷が結構治った具合で退院出来たが、家族の焼酎の製作所の復活に帰宅する代わりに、この週末まで病床で寝たまま数学を復習するようにした。澁薙君が初めにそういう許可しなかったが、家族の経営にあまり巻き込みたくなくて数学だけが将来の目標を立てたという自分の親友の風潮が分かったから、純彦君を自分の隣の寝床に移動した。降恆ちゃんなら、一日の介護が終わった後で澁薙君と智埼ちゃんと寝るつもりだったが、私と一緒に寝ることにした。この病床が最大で二人が寝られるということで、この二人の女子が寝れば、両手が伸びない限りまだ楽じゃない?

 私なら智埼ちゃんと寝るのは普通なことだが、降恆ちゃんと寝るのは珍しいことだ。地理の距離それとも地位のせいじゃないし、ただどうしてあんなに怨敵っぽい数年前の関係を親友の関係に変化出来て一緒に寝るほどなのかを奇跡なことだと思っていた。夜中一時に降恆ちゃんが宿直し終わるまでまだ眠っていなかったのはこの珍しいことを経験する為だった。自分の髪を下ろし手袋を脱ぎ白衣を浴衣に着替えした降恆ちゃんが、もう一個の枕を置いて私の左で寝て、一緒の毛布を掛けた。

 一緒に寝たのは四回目でしかない。初めてはあの廃墟の建物で、二回目は私の家で、三回目は高橋ちゃん達と一緒に『ひさぎ』旅館。一緒に寝る毎に、何かを賭けようとしたよ。最後の喧嘩を売った後に、捨てられたあの学校の汚くて錆びた床に布団を敷き、髪がぼろぼろで痣が顔に散り散りな私達が初めてで夜を越した際、どちらが痣の方が多いかを賭け、降恆ちゃんが30銭で負けたという結果になった。あの時、お小遣いを失ったとしても、降恆ちゃんが初めてすっきりした顔を見せた。あの夜寝は親と先生にとんでもなく叱られた原因だが、私達の波風を永遠に沈めた船となったの。

 この四回目では真っ暗な病室の天井を見詰めてみて、どちらが先に目を瞬くかを賭けた。両目のままの降恆ちゃんと、一つの目の残る私は自分の目を張っていた、ある一人が20銭を引き出すまで。月光はこの小試合の審判となった。さもなければ、この賭けが永遠に続けられるはずだったのにね。月光の照らした天井に二分間見詰めては目を苦しめていたに違いない。だが片目を封じられたのは私への利点だかも。降恆ちゃんも負けたくないし、見詰める時間を延長出来るように上下の瞼を微かに閉じ眉の筋を張っていた。二分経過の際、私達の目は天井の像が暈けて瞼が震えた限界に辿った。果たして、私がぎりぎり負けたし、降恆ちゃんに20銭を毛布の下に渡した。この出鱈目な賭けを静かに笑ったのちに、寝に落ちられたのさ。

 9月15日。案の定、都市からの記者達はこの田舎の同僚を圧倒してこの病室に駆け込んできていた。三本の足のある写真機を持って来る人も、写真機の代わりに空白の紙と黒鉛を持って来る人もいたよ。彼らが刑事さんの生計を立てなくなるように私達を『取り調べ』していた。「あの夜の光景を絵で再現して頂けませんか?」とか、「あの事変はどうなったのですか?」とか、「あの事変は日比谷公園の事変に関係がありますか?」とか、「どうして首謀者は小田原と君達を狙ってるのですか?」が一般的に質問されていた。詳しくは、茶番的な質問もあったに決まっている。「あの事変によって森林で隠れ住む神々且つ精霊の存在は明かされたようですか?」とか、「あの事変は伝説での現象はもしかして本当の世界で起こったことあるであろうかと証すると思いますか?」とか、「幽霊は本当に生きる人間を襲えるか?」という。ただ一番気になったのは一つがある。

 東京日日の岸山恭輔(きしやまきょうすけ)記者の質問だった。日比谷の事変についての記事を初めて書いたのは彼の方もだ。「あの事変は日比谷のことに関わらないかどうか早かれに纏められないのですが、あんな幅で暴いて大勢の人を負傷させてしまったのが全国に伝えるべきではなければ、同じような事変はまた暴れるかもしれません。町の幅の事変なのに二日間掛かって中央政府の代表が現場で訪問したことになって怪しい感じがしましたでしょう。超常現象のせいなら、何か人力があれを利用して自分の権威を自慢話にしてやれたのですね。私の推断が妄想的な気が出来るのですが、貴方達のご意見を求めて頂きたい」

 私と謎の男の通話をあの記者が聞こえたかのようだね。まあね、あの夜の二日間後、東京からの官僚達がここに訪ねていたのは鉄道を完全に責める訳がない。多分、現場に行く望みのある官僚達が何かの力に邪魔されて二日間で遅れちまった。あの二日間で、あの不明な力は一番あからさまな痕跡を小田原人に無意識に消させて過ごした。その後、官僚達に自分の予約した切符を使わせることにした。どうやって?彼らの列車に見合わせを押し付けたね、恐らく。私を驚いたのはなんでしょう?あの見合わせは本当になったよ、9月11日の真昼で。『日比谷の精神』というものを応答して、横濱が乱されていたのさ。乱していたのはまだ本物の人間だった。

 純彦君が私の代理で岸山記者に答えた。「さっき貴方達に答えたのを繰り返します。二週間前の夏祭りはあの事変の主因だったのです。日比谷の事変はあの事変を発動するという言い訳を立てただけです。夏祭りの閉幕の日の爆弾は小田原の警察の確認した証なんです。昏睡のままの渡邊君も新聞に載せられましたでしょうが、あの記事で『十六歳の女子』と一般的に表題を付けたのが私達の安堵でした。さもなければ恐らく、より大きな衝突を余儀なくされるんです」その答えは岸山記者と他の記者がどうか理解してくれた。あの勢力が一体何のかも意味不明だとしては、もっと掘り出せば、自分も不明な勢力に行方不明にされたら勿体無い。

 そう、厚喜さんと同じ事情に巻き込みたくないでしょう。記者達も勿論厚喜さんにあの誘拐を詳しく話して貰った。然し、厚喜さんがあの誘拐を謎の勢力に繋がないように説明していた。正体が不明な強盗犯の集団が、厚喜さんが彼奴らの仕業を撮っちまったと勘違いして、誘拐し、証拠の写真を全部燃やし、彼のご両親に五万圓の身代金を求めた、と証言した。厚喜さんのご両親がやむを得ず息子さんの偽証をお節介の記者達に信じさせていた。あの偽証を実証らしくするには、彼もあの身代金の写真を送り、誘拐された場所を燃やした火が首謀者の起こした現象から生じなかったとも言った。あの廃墟の学校が中から爆発したのを目撃したのは私なので、偶然にあの偽証の証人となったよ。

「貴方達は気脈を通じてそういう手口を使いましたね、記者達を誤魔化しに」、中断中の会談を城木先生がそう言って再開した。

「記者の好奇心は侮ることじゃありませんよ。事実を追跡するにあたっては、警察のものよりも大きい」と言った純彦君。

「特には岸山記者のこと。厚喜さんと私達の言葉を簡単に信じることがないのです。恐らく過激派の勢力の大きな影を思い描いたからもっと詳しく質問してませんでした」と言った降恆ちゃん。

「そうせなあかんやん、彼ら自分の命と生計を守る為に。岸山さんは民族主義の過激化を励さあらへん可能性あるけど、自分が励さあらへん物に殴り返されへんように、自分の行動を慎むのが必要やろ」

「ところで、厚喜さんの偽証を守る証をあげて賢かった。あの廃墟の建物での出来事が貴方達に素敵な盾をあげたんです」

「はい、多分あれも過激派の企みにあったのでしょうね。彼奴らはあそこで厚喜さんを拉致して、あそこから自分の企みがどう行われたのかを全く観察してました。こうやって、彼奴らの企みが空から見えざる手によって起こされたと見えるようになったのです。あとはあそこをぶっ壊したら完成」

「てことは、爆発を利用してあの事変の首謀者はあそこを逃走したんだね。以前の火事と同じ逃走の仕方をやったじゃん」と言った澁薙君。「ただこの火事は町の幅で大胆過ぎだったよ」

「彼奴らの技術の程度にしたら、大胆なのは彼奴らのパフォーマンスの一番濃い味。ハリー・フーディーニの演出みたいな味」

「たった今、君が口で話せるのはフーディーニさんみたいな大胆だよ、マサちゃん。じゃあこの大胆な女子の顔は五日間後どうなったのかを見てみようか?」、降恆ちゃんがそう言ったら、ゆっくり私の頭と顔をきっちり覆った包帯の一層目を外していた。その一層目を外したのちに、私の髪、両耳と左側の顔面が見られた。現れた二層目は私の頭に十字架の形に巻かれたままだった。

「雅實君、お前海賊に似合ってるんだぞ」と弄った純彦君。

「今日から、君が普通に口話しても良いけど、鎮痛薬を次の二週間でずっと連れて行くわよ」

「うん、どうせ君の口がよく動かないとだ、上顎の神経が早く元に戻れるように」と言った澁薙君。「けどさ、君の艶やかな長髪にはとても残念だったよ。その髪は今肩にしか届いてない」

「んー、既成事実なので。とにかく今から長くし直さないと。私の櫛もこの箪笥にあるからこれから大丈夫」

「大丈夫と言うたくせに、まだ悲しい顔をしてんや。あんたの短髪の格好も可愛いよ、小学生の女子らしゅう。数ヶ月後、髪が元に戻ったらきっと前より成人らしゅう」と激励して言った智埼ちゃん。

「こら、チサト、京都の八年前の思い出を懐かしむつもり?あの頃も同じ短髪を持ってるのよ」

「あっ、その二房の『黒い象牙』がまだ残ってて良かったな」

「カサト君、『黒い象牙』じゃあらへんで『黒い触手』なんや。その二房の髪も消えてもうたらムラマサちゃんがもうムラマサちゃんにならへんわ」

「ただ変じゃありませんか、その二房の髪が?鎖骨にも届くほど長い。もしかすると、万一迷子になってたらそれが立派に助けてあげるかなと思いますよ」

「『犬猿の仲』の時代では、マサちゃんはその『黒い触手』を揉みながら僕と口喧嘩してます。あの頃は、僕達二人はうちの学校の一番調子に乗ったし格好付けた者ですから」

「そんな過去を自慢話にしては駄目なんじゃないの」

「記者のことに戻るというと、記者達を誤魔化したのは数学大会の前に余りな注目を浴びたくな いその為もだったでしょう。但し、あの大会が始まったと、皆が渡邊君の傷跡に数学の挑戦よりも興味がありがちな恐れがあるんだ」、松澤先生が遂に会談に入った。

「そうですね。数学大会といえば、山葉君がこの事変を一番気になった人でしかいないかも。私とスミヒコ君は彼の一番の相手だからですね。今朝、彼よりの手紙を受けたのです」と言ったら、私が箪笥から山葉君の手紙を見せた。明るい茶色の封筒。「火曜日に書いて送ったけど、今朝に私の手に届きました。長野の山地によって鉄道の輸送がちょっと大変ですね。彼がそう書きました。『君における記事を読んで衝撃的になりました。一昨日の夜の酷い目に遭って寝た切りの病人になってしまって残念でしたが、意識が戻る為、お祈りを申し上げております。君と絲島君と同じような秀才としては、あの素晴らしき夏祭りは、狂信者達の棘となってあの出来事への動機だったと理解しました。今日の朝には僕達の団体も長野の警察に尋問されていたんです、君達の夏祭りの客だったというたったの故に。恐らく、東京の憲兵隊もこの催しを利用して君達を不利に落としてしまう可能です。幸い、うちの学校は憲兵隊の士官を教育したことがありますから、僕達の団体の影響の下でなんとあの士官達にこれ以上の事情を深くさせないように任せていますから、ご心配なく数学大会の為に復習し、一緒に船に乗りましょう』というのです」

 純彦君がちょっと激しく反応した。「危ない状態に落ちてしまうだろ、この奴が。憲兵隊は過激派に比べて危険性が五分五分だぞ」

「ないしは、過激派は憲兵隊を自分の操り人形としてるのだ。憲兵隊がこの事変を見逃しちまう訳がないでしょ。但し、憲兵隊の士官が皆で過激派に操縦される訳じゃないと感覚がする。夏祭りを最後まで上手く開いたし、この事変の余波を深重にしなかったのは憲兵隊も中央政府も東京の大学も内部が互いに争ってる証だ」

「いわゆる潜在の内戦というものだね」と言った松澤先生。「対立の思想がある以上は、何の組織でも戦いが暴れる。『花火團』を国家の発展の動機とする思想と、『花火團』を国家の発展の阻害とする思想を持つ者達が必死に争ってるんだ、声が大きく出せるように」

「それで、夏祭りの巨大な売上は私達の最強の救い主なんじゃない?あの一週間で、数千人のお客様が野球場の半分ぐらいの敷地に通って楽しんでお金を立派に支払ってくれて、この国の統領である係員殿に騒々しい雰囲気を掛けてあげるほどもあったからだね」

「その通り、スミヒコ君。群衆の力、お金の力と、新しい物の力はそういう雰囲気を与えてるのさ。それに、昏睡中の私を主題にした記事も私達の催しを支持するあちこちのお客様に衝撃を与えて、応援の手紙、花束、そして屋台からのお土産を真似た手作りの物も送ってくれるほどでした。山葉君はそういう支持者の一人です。以外には、安佐子ちゃん自身と彼女の家族と友達、倉上家、物理の屋台で会ったロシア人の家族と彼の外国人の友達など」と私が言ったら、皆に箪笥の抽斗をよく開き、色んな封筒の集まりを見せたよ。

「今では覚醒した貴方についての記事はああいう数千人の客に届いたら、期待に値する朗報を与えるようですね、きっと」

「はい、更に半分の真実、彼らを好奇にさせる物もです。残りの半分を見付け出さないかどうか、彼らの度胸次第です」

「やはりね、群衆を鎮める半分の真実という起筆の術。但し、君達が記者達に伝えた半分は読者の鳥肌を立たせる十分だ。怪奇な話しにしかないのに本当の世界で起こってしまったなんて、誰でもぞくぞくさせるじゃないか」と言った松澤先生。

「そういう術も博士達にパズルピースを作りに組み込まれてるんじゃありませんか。全く違くないだろう」と言った純彦君。

「んー、半分の真実でしか人間を想像させることが出来ないもんですね。自分が分からない物を怖がるという原始な恐怖を加えるなら、真実に完璧な盾をついてやれたんです。但し、いずれにも関わらず、貴方達は私達がわざわざ隠す真実を掘り抜こうとしてて、嬉しい以上もありませんよ。だからこの相談を昨日から続けることですね」

「はい。岸山記者も入ったら必ずこの相談を明後日も延長出来るんですよ。どんな時代でも、恐怖も抱えたかもなままにしても、少なくとも恐怖を抑えて好奇心をあげた人がいることです。それじゃあこのような人種である私達には、博士達の真実の残りの半分を教えて下さいませんか?」と言った笠人君。昼食に必死に労働した後に、遂に彼も私達の面白い相談に参加した。

「うん。では続けましょうか?昨日の夕食中で私と松澤先生が『花火團』の残りのメンバーに知らせたので、真実の幕を上げていきましょう」と城木先生が言ったら、半球体の盾が再び出てきた。

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