9.1.「チサトちゃんと、スミヒコ君と友達を作った思い出は私を起こしてくれたの」
「お前なんか娼婦の娘だからだ。人生に値しねー」
「俺達の本屋をぶち乱して悪運を齎してんのかい」
「挙手の番を盗りっぱなしだな、この野郎が。泥から必死に目立ち上がりたいでしょ。汚い娘のくせに」
「お前とはな、友達を作るなんて無駄。お前が俺を汚しちゃう」
「あんたの娘があたしの子と仲にするなんて許さぬ」
「渡邊はん、もう助けて。うちの親も助けて」
「なんでうちのおとん助けや出来ひーんのか?」
「雅實はん、一生の友達になろうね。この日澤智埼が誓っとる」
「君はきっと秀才になってくんだ。純彦君と勝負してみな」
「俺は女の子に負けたら一生の恥を抱えてってしまう。それを忍ぶにはお前とは普通な男の子と見做すんだ」
「くっそー。恥ずかしい。お前何処からその脳を付けたのかよ」
「俺は絲島純彦と申す、改めて。これから俺の相棒になろうね」
それらの甘いもあり、辛いもありの追憶が私の真っ暗な『認識の空間』を騒々しくさせてくれた。もしかして臨死に落ちちまった人ならそれらの追憶が頭の奥で本人が生きた人生を映画のように映して見せるのかな。ただこの状態ではちょっと違う。智埼ちゃんの八年前の友達作りの宣言や、純彦君の三年前の相棒作りの宣布の思い出はどうやらその空間の真中で白い光を閃いた、マッチを擦るように。その光がどんどん大きくなり認識の空間を段々明るくし、私の魂をまるで物凄い速度で真っ直ぐの道路を渡り乗せていた。すると、その光が暗闇に溶けちまい、私が自分の目が瞑っていたのが感じられた。そして、誰かが私の手をぎゅっと握っていたのも気付いた。
「マサちゃん、マサちゃん、僕のこと聞こえてる?」、降恆ちゃんの声が聞こえていた。落ち着かずに感動極まる声。私が少しずつ動き出した度に、降恆ちゃんが重そうに息をし、子供が一生の成功を得たような抑え切れない歓喜を暴いた。
「おじさん、おばさん、起きて起きて。マサちゃんが、マサちゃんが」、降恆ちゃんが泣きそうに、私にずっと付き添っているお父様とお母様を起こそうとした。
起きたばかりなお母様が早速私の病床に駆け込んだ。「雅實ちゃん、母だよ。ヒロシ、こっちも早く」
お父様もお母様の横に私の病床に寄せた。「本当か?息子ちゃん、僕達を気付けたのか?雅實ちゃん」
多分長い時間経って、私が遂に口を動かした。激痛が体を苛め始めたところで呻き声をすることを通じて認識を戻し始めた。両腕と指を動き出したところに、関節が摩擦し合う軋むような音もした。痛みを我慢して手をちょっと高く上げたと、お母様が一刻も早くこの手を握り、私が遂に起きたと最後に承認した、涙が流れてくる顔と共に。お父様も歓喜を隠さず病室の外の皆に共有したくて、「おい皆さん、僕の子が目を覚めたぞ」と喉の奥から叫んでいった。実際にこの具合では私が片目でしか覚めなかった。右目が固定で開き兼ねた。恐らくこれからも開かないわ。
たった左目が開けたが、動き出せば右目も同期に動き激痛を起こしちまうので、右目の下の深重な怪我が治るまで周りが見られるようになる為、首をも回すしかなかった。目を開いたと、最初に見たのは涙の両流が濡らした美人の顔のお母様と、私があの夜から託した白衣の降恆ちゃん。お母様は子供のように号泣し始めた。今までの私の人生を渡って、お母様の号泣を目撃したのは珍しいことなんてないが、お母様が同時に悲しさと嬉しさを出して泣いたのが初めてだった。そして、目もぬるぬると見えた降恆ちゃんがこんなに凄い歓喜を披露したのも見たことなかった。
「おかー様、ふりーつーねーちゃん、おとー様。あたしが、生きてるのですー」、私がとうとう言い始めた。
降恆ちゃんも我慢出来ず号泣しながら返事をした。「もう、死ぬほど心配させないでよ。あの場所で君を見付けたとは君がもう殺されたと思ったのに」
私がいきなり咳き込んだ、多分二酸化炭素の埃がまだ肺で残るせいに。降恆ちゃんが泣いていてもこの具合を見て私を左に横向き寝させ背中を叩き、毒害な埃の残りを引き出そうとした。この咳き込みのお陰で、私の声が平常に戻ってきた。「はー、生き返った。前から言ったでしょ、危険な怪我をしちまったら山口家のお嬢さんに任せるって・・・」と言った、まだ息急きをしながら。
その直後、『花火團』は澁薙君の先駆でここに急いで入った。私が起きたばかりか言うのも出来たのを見たと、私のあだ名を絶叫し、私の病床に駆け込んだ。たった澁薙君が感動を抑えた一方で、恥を忍んでも泣かないと言われた硬い純彦君さえも皆が歓喜の涙を流した。一番泣いていたのは他にならない私の幼馴染。確かに、あの夜の大火災はなんと智埼ちゃんに八年前の大火災の思い出を振り返らせちまい、最も苦しい痛みを再び掻き立てさせたかもしれなかった。『花火團』のメンバーも私のように身体のあちこちで傷を負った姿で現れたが、ただ回復する時間が掛かるのは私の方が一番でしょう。あの廃園へ一人っきりで厚喜さんを助けに行く代償だね。
「ほら、チサトちゃん、自分の手を濡らしちまうよ、包帯巻いたから。私がまだ死んだらあかんで」
智埼ちゃんが泣き声で可愛く叱責した。「いつでも待たへんで勝手に一人っきりで。ただの女やろがい」
私が智埼ちゃんを胸に抱き、幼馴染を宥めようとした、自分の目も濡れちまったが涙を出し得ず。「ごめんね。ごめん。ただ貴方のと同じ事情に誰でも落ちさせたくないから・・・チサトちゃんと、スミヒコ君と友達を作った思い出は私を起こしてくれたの。二人と出会わなければ私の寿命は今まで延びるのが偉過ぎたよ」
「も、申し訳ない、雅實君。お前の電話に出たのに、もっと早く行けたら」、純彦君が懺悔を抱えたままに言った。
「自分が悪かったと思わないでよ。私の方は悪かった。自分の負けず嫌いのせいで災いを招いちまった」
他のお患者さん達も開けている扉の隙間に集まり私の具合を見ていた。幾つかの人も私達と同じ嬉しさを表した。「皆、雅實ちゃんが本当に起きたんだ。小田原の救世主が目覚めたんだ」
「お患者様、廊下でお静かにして下さい」、ある看護師さんが大きく通報したあるおじさんを注意した。
「多分警察官達もお見舞いをしようとしてくるかもだ。特に緒方大尉。彼はまっちゃんとスミ君のこと一杯感謝しに来るからさ」
「あのさナギ君、私が寝たのはあの夜から何日でしょうか?」
「ちょっと言いにくいけど、四日間だ」と澁薙君が答えて私を呆れさせた。「君は刀を装備した犯人に6㎝ぐらい右目の下で斬られちゃった。切り傷は終点が唇と3㎝以上少し長く離れたし、深さが右の上顎洞を両分でほぼ割って、もう少しだけで深ければ頬骨と上顎骨をも割ったんだ。そして、その傷は始点が奇跡的に君の右の眼球と5㎜しか離れなかったが、顔面動脈、顔面静脈と上顎神経を深重に損傷したり、結膜と下瞼を破ったり足りたよ」
降恆ちゃんが涙を拭いもっと簡単に纏めた。「つまり、マサちゃんの右目は泣いたような様子となったが、その涙が酸性の水で、出たとはその下の肌を溶かすように見えたよ。リューちゃんこそあの建物に到着した次の人として、消防官と一緒に君と厚喜先輩を担架で運んだ間に、僕達が執刀する手術前にそう描写した」
笠人君が降恆ちゃんの言葉を続けた。「あの時、圧倒的な負傷者の人数によって中央病院は過負荷になってしまったからだ。八田蜜か白濱かに君と先輩を運ばなければいけなかった。森本さんが調達した馬車のお陰で、二人共を白濱に間に合って乗せたんだ」
澁薙君がもっと言った。「火災が起こった時は亡霊の軍団が撤退した後だから、白濱の皆が数十人の負傷者を森本さんの馬車を通して病院へ運んで学校の収容を減らすことが出来た。八田蜜は原崎さんの馬車にそういう事情。まっちゃんと厚喜さんはあの夜の最も深重な負傷者だから、僕達がいた白濱へ運んだ。二人共は更に燃焼生成物である二酸化炭素と一酸化炭素を危険に近いほど呼吸しちゃったが、あの所の水溜りのお陰で、この時代の医療がやったことない『気管切開』を行われなくて良かった。但し、肺臓の中の毒気を洗う為、ツネちゃんは、まだエーテルを吸入させてない二人共の気管に『挿管』して空気の袋を設置して空気を送ってあげたんだ」
「そうだね。あの部屋の水溜りからの水蒸気は二酸化炭素を押し上げたり一酸化炭素を中和したり火事の危険性をどうか下げた。本当に理解出来ないほど優しかったよ、あの犯人が」
「マサちゃんの方がもっと危険。君が元のように言ったり食べたり飲んだり生活したり出来る為、僕が危機が多い手術をやらないといけなかったの、ナギちゃんと医療部の数人の仲間と一緒に」ともっと言った降恆ちゃん。すると、彼女が手鏡を与えた。寝た切りのままの私は鏡が映した自分を見てから予めそういう想像したもののまだ可哀想な顔をした。左側の顔面を除き、頭部ぐるみは包帯に真っ白にされた。ただ少なくとも三層の包帯の下には右目の直下の肉部を埋めるガーゼが真っ赤に染まったかも。確かに弾丸が掠った左側の側頭部を埋めるガーゼも埋められたよ。
降恆ちゃんが言い続けた。「その手術は前代未聞かもしれないね。焼灼法を行うなら血を止めるもののより大きい傷跡を顔に残すし感染させやすい故に、破れた上顎神経、血管そして外部の肌を縫合することにした。君の上顎神経は完全に切れたとはないけれど、右側の顔面が感じ直せる為、一時間掛かって接合して縫合した。同時に、焼灼をせずに血を止めるには動脈と静脈の切れ目を挟めてパレ先生の結紮法を行った。失った血が結構大きかったので、『輸血』すると決まったのだ」
『輸血』を聴いただけで私が凄く呆れた。「『輸血』?私のお父様とお母様が献血してくれたとしても、私の血に適合することにならなかったら確実に死ぬのよ」
「当たり前に知ってるでしょ、僕達が。でも『輸血』しなきゃ君が苦しく死んじゃう。だから君のご両親から採血して君の血液と一緒に検査した。君はこのおじさんとおばさんの娘で、血の抗原と抗体が君のお母さんとお父さんのを受け継ぐもので、『輸血』の成功率が高まる。君の血液を混ぜたと、弘作おじさんの場合には血が色が変わらないまま溶け合った一方で、清三茅おばさんの場合には血が凝集したという結果で、おじさんの血液を決めた」
「てことは、私とお父様が同じ血液の種類を持ったのか、ないしは違う種類けれど適合可能だったのかね」
「僕は家族の柱だから決して家族の誰でも死なせてはいかん」、お父様がまた誇らしい声を掛けた。
「まったくもう、お父様の血が合わなかったら私が墓場に引っ越ししちまいましたよ・・・お父様は再び誰かの命を救ってくれましたね。以前はお母様、住吉さん、倉上さん。今は私のこと」
お母様がまた姉上らしい声を掛けた。「貴方は運で雅實ちゃんのことを救ったのよ。本当に救ったのは降恆ちゃんの方だ。澁薙君と小田原のお医者さんの言うことが正しいのならば、雅實ちゃんは『輸血』を上手く出来た日本史上最初のお患者さんになったし、日本史上最初の『輸血』を上手く行った者は奇妙的に経験のお医者さんではなくて女子中生の降恆ちゃんだそうだ」
「僕の友達ですから死なせちゃえば一生悩んでいきます。白濱に運んできたばかりのマサちゃんの具合を見た時は、いきなり頭の中で何かを思い付いてマサちゃんを大丈夫に助けようとしました。んー、というよりもマサちゃんを『実験動物』にしちゃったのです」と降恆ちゃんが言って皆を笑わせた。「『実験動物』だとは言え、危険な療法をした僕は一番心配してます。12時間後療法が成功だと確認したものの、マサちゃんが目覚ますまで安心してなかったのです」
「12時間後はお患者さんの生存状況を確認する時間だからです。ツネちゃんと付き添う僕は自分の彼女の震え捲る手があの時からずっと見えました。まっちゃんがまだ息してるのを小田原のお医者さんの皆で見た時、僕達の療法は本当に成功になって、先生達にその名声を頂けたんです」
「だから私が目覚めたら降恆ちゃんがそんなにぞくぞくして泣いたほど喜んでるわね」と私が言ったら、急に唇の右端が痛くなった。「あー、痛っ痛っ、この唇のここが動いて痛い」
「先ほど話し続けたんだから。今日はこれまで話して良いよ」、降恆ちゃんが医者の職業に戻り私の具合を面倒し直した。たった今私が右手で点滴にされたと気付いた。点滴用の瓶が既に水を尽くして新たな一本で交代された。静脈に浸潤するその水は潔く温かまった水と塩と砂糖の溶液。降恆ちゃんを手帳で何の水なのかを聞いたら、水の1ℓと塩の2匁と砂糖の10匁で混ぜたという重傷による電解質と体内エネルギーの損失を治す溶液だと答えて貰ったよ。これから一週間で一時間以上口頭で話せばいけないことになった。右隣の箪笥に置いた私の茶色の手帳だけで皆で会話することが出来た訳さ。
「とうとう君が恩返ししてくれたんだってな」と私が書いて瓶をゴム管と取り付ける途中の降恆ちゃんに見せた。降恆ちゃんがちょっと恥ずかしがる笑顔で返事をした。去年の5月末のあの最後の喧嘩からこれは降恆ちゃんの恩返しの機会だったね。降恆ちゃんは私に対する肉体的なお医者さんだとすると、私は降恆ちゃんに対する精神的なお医者さんだという訳だ。過去の三年間を経つ私達の『犬猿の仲』の関係は自然的にこの山口家の令嬢の高慢な仮面を脱ぎ脆弱な内心を明かしつつあり、彼女を正道に戻し得た。運命が定めるかのように、また一生忘れない喧嘩があの同じ建物で起こったわ。
やがて、私がいる病室は小田原中央病院の一番賑やかになったものだ、高橋ちゃんが先駆した5年3組、廣瀬君の団体と、吉岡君が先駆した5年2組の皆がお見舞いをして祝福のお土産を贈ったところに。私の具合を知ったはずで、贈ったお土産はあまり噛まずに楽しめる餅、和菓子、お茶、スポンジケーキー、更に海賊らしい眼帯で私が笑って堪らなかった。へへ、退院してからこれを付けながら学校に行ったら格好良過ぎない?周りで寝た切りなお患者さん達そして隣の病室に迷惑を掛けちまう恐れがあったが、多分皆が気にならなくて逆に私の具合を同感して下さった。皆が擦り傷やら危険じゃない筋肉の創傷やら最悪でも深重じゃない火傷を負って良かった。結局、私達を『地へ墜つ星座』でぶっ倒すと思われた敵は前から小田原とこの町の住民を滅ぼすつもりなんてなく、ある危険なゲームを一緒にやって欲しくて、誰でも亡くならないほど傷付けたでしょうね。
想定外なく、緒方さんは息子と数人の警官とお見舞いに来た。二個の弾丸が左肩に差し込み右腰を掠ったせいで入院したが、改善した具合により今朝退院するちなみに、私達に感謝の一言を言いに来た。灰色の浴衣の姿の彼が私達に敬礼をし、警官の帽子を脱ぎ下ろし、そういう感謝して下さった。「9月10日の夜の攻撃を一緒に大変にご協力、ご作戦、ご勇敢下さり、小田原の警察の代表として感謝を申します」残念ながら、あの夜で亡霊の兵団を操る犯人達を逮捕することが出来なかったが、せめて彼奴らをもう長い時間掛かって捕まえなければならないと覚悟した。彼奴らはレベルが私達どころか人間前の文明を作った種族の科学者達と競えるとは馬鹿馬鹿しいことではない。だからこれからも緒方さんそして私達の味方となった法執行機関に宜しくお願いします。
緒方さんと別れたら、私が一番会いたかった厚喜さんも彼の家族と一緒に来ていた。厚喜さんは患者服の姿で足を引き摺りながら、来てくれて嬉しかった。厚喜さんのことを間に合って助けず逆に負傷となったと私が謝ったが、厚喜さんも『花火團』を巻き込み私を一緒に入院させちまったと拝礼をするほど謝ったよ。厚喜さんのご両親ももう私達を疑わず、厚喜家の特産物である『泉港玉露茶』の袋を贈って下さった。さすが私達の夏祭りのお茶の供給源の一番熱心な資本家だね。厚喜家は全日本にお茶の貿易で政府が支える財閥の会社と競えるからでしょう。この時代ではお茶を売るならそういう力を持つ。全国の一番高いお茶の一つを贈った後のご夫妻は肝が青空ほど大きい自分の貴公子を叱ったが、私が厚喜さんの後輩になったことを感銘し、慶應義塾に行く将来を期待し私を支え続けると伝えたよ。でしょう?後輩なら先輩にさっぱり従う訳じゃなく、先輩が能力以上の困難に遭えばその困難を代理で手伝うとは問題じゃないからね。
厚喜家から続いては他ならない日向町長、軽部先生、森坂先生、松山先生や、特には松澤先生。日向ちゃんが付き添った町長さんは小田原の住民の代理で『花火團』のメンバーの家族に、あやめの花束を贈った。ちなみに、日向町長もあの夜の事変後の小田原の様子を知らせて下さった。『大熊座』が通り過ぎた小田原の家の並びが炎にほぼ破壊されちまったが、外装と地上の部分が壊れなかった。八田蜜と白濱もそれと同じく火花の雨を注がれ『灰の大蛇』のような跡を残された。負傷者を運ぶ者達が火花の襲撃に火傷を負ったこともあった。5年3組と5年2組の仲間が肩まで手ぐるみをさっぱり包帯を巻かれた理由だ。消防士の必死は勿論、通りに避難した住民達が川水も海水も加えて協力したお陰で、私達の家も彼らの家も真っ暗に塗っちまう余波を受けたものの、守り抜いて頂けるようになった。
詳しくは、私の家では、読書室と実験室がまだ安全だが、私の寝室と勉強室が75%で焼かれたし、庭の芝生に真っ暗な一本の直線も残ったし、恐らく勉強室で置いた本とか、私服をしまったワードローブも燃えちまった。お母様が私の服を親の寝室に持って行ったなんて有難うね。更に、火も上級な電気の厨房を襲い漏電を起こし発火したが、まだ制御出来た、砂で。
純彦君の家では、隣の焼酎の製作所とお酒の倉庫が大変な事情に落ちた。焼酎が発酵中故に一刻も早く製作所が火に覆われちまったが、酒匂の川辺に立ったから、川水に火の挟撃を解け絲島家の製作所の半分を保護して貰えた。
智埼ちゃんの家では、化学実験室が一番守るべき所となった、そうでなければ小田原の一番危険な所となるから。化学実験室も自身で時限爆弾を役にして消防の時間を延長出来るには、日澤家の自宅の構造をちょっと変更したら良い。日本の殆どの家が木材から建てた割に、智埼ちゃんの家が壁と天井をコンクリートで更新し珍しいものとなった。断熱性が高いコンクリートなら火がどの風に突撃しても対応時間が延び得る。
笠人君の家では、生ごみから生成したガスを使って調理する厨房を悪魔の熊が狙っていた。あのガスはほぼメタン、数百人の鉱夫を失命させる石炭の鉱山の爆発の主因だから、火に当たるなら地面を震わすほど爆発を起こす。消防中でメタンを漏洩から防ぐには、笠人君が生ごみを布で埋め、夏祭りのトイレで用いた残りの活性炭を掛け上げた。そう、トイレの排出物処理機の最も簡単な型なのさ。
少なくもともう二ヶ月掛かって小田原は回復出来ることになった。管理職か住民かも構わず退院してから公衆の仕事を完成させなければならなかった。通りを綺麗にすること。六時間半立つあの事変は火薬の灰、木の灰、川水、海水、砂、薬莢、血、木の葉や馬の毛を小田原の通りでさっぱりばらばらしてやって戊辰戦争の戦いとは違くなかった。コンクリートで固まった通りなら、皆が箒で固体のごみを集め捨てたり、手拭いで液体のごみを消したり、誰かが割り当てを一番早く終えるかを競い合うほどした。自然な土の通りなら、窯の灰、川の沖積、沈泥などで溜り或いは痕を埋め付けるしかなかった。これからもう一週間を経ったら基本的に掃除しちまうかも。その後、焼かれた数軒の家の復旧の為に、日向町長の政府が地方の金庫から結構大きいお金を供給することになったよ。そのお金は夏祭りの売上の一部分なので、夏祭りの最大の影響を見せる機会を取らなきゃ。