……モゲロ!
キサラ、伊達に生きていません。
王都に到着した私達は、乗り合い馬車で一緒になった皆さんと別れを告げた後、冒険者ギルドに行き、モンスターの素材買取りをお願いした。
前回の失敗を踏まえて、解体場に行き、そこで異空間収納からモンスターと、盗賊の首級を出したわ。
更に、やりたかったテンプレを実行に移したわ。
「大変だろうけど、仕事が終わったらどうぞ。」
と言って、私は解体長に金貨1枚を渡す。
解体長は、手に置かれた「金貨」を確認すると、大声で言ったわ。
「野郎共! 此方のお嬢さんが、仕事終わりの1杯を頂いた。気合を入れてやるぞ!」
「「「「「「おお!!!」」」」」」
「よろしくね。」
査定には数時間掛かるし、ビックバイソンの肉は欲しいから待ち時間を潰す為に、ソーマの屋敷にお邪魔させて頂く事になったわ。
「此処が俺の家だ。」
「……ソーマ。公的な身分は?」
私のジト目に冷や汗を流しながらソーマは言ったわ。
「……伯爵です。」
やっぱり!
家と言うには大き過ぎるわ。
王都に庭付きの屋敷を持っていて平民は有り得ないわ!
「ソーマ、伯爵様だったの!?」
「ああ。そうだよ、エリカ。」
その後、ソーマと元初恋の幼馴染みから奴隷になったエリカとの場末の復縁要請合戦を始めたけど、屋敷から色々なタイプの美少女達が現れて、見事にエリカは撃沈した。
……ソーマの嫁達の名前と元の身分は、正妻リズティア(第3王女)、第2位シルキール(公爵家次女)、第3位ミスティナ(エルフ公国宰相の長女)、第4位グラウディア(近衛騎士団長三女)、第5位レビィア(獣人国辺境伯の次女)……以上!
「……モゲロ!」
「キサラ……」
「ソーマ。」
「な、何かな、キサラ……さん。」
「ソーマが、私の故郷に来たら、『全て』を廻る権利を与えるわね。」
「勘弁してください!」
……ソーマは私に土下座したわ。
「ソーマ、お帰りなさい。とりあえずは中に入りましょう。話も聞きたいし、ね。」
「……はい。」
自宅に出荷されるソーマの後を歩いて私達は、屋敷に招待されたわ。
ある種の絶望から床と睨めっこしている奴隷エリカを置いて私達の自己紹介が終わると、改めてソーマの嫁達に言ったわ。
「私は、ソーマの嫁になるつもりは一切無いわよ。」
「理由をお聞きしても?」
「先ずは、私よりも弱い。」
「……え!?」
「私よりも年下。」
「……ええ!?」
「異性よりも仕事。」
「……はい!?」
「……と、いう訳で、ソーマを異性として見る事は無いわ。まあ、魅力的な男性である事は認めるけどね。」
彼女達は、漫画なら口開け白目状態で呆然としているわ。
それと、リンは自分の前に置かれた前世の知識チートのお菓子に目を輝かせながら食べているわ。
私も、彼女達が戻って来るまでの間、出された芋羊羮を口にし緑茶風のお茶を飲む。
……あ、帰った。
「貴女、ソーマより強いの?」
「ええ。最低でも魔法無しなら勝てるわ。」
「ソーマが年下?」
「ええ。事情は話せないけど、ね。」
「……仕事?」
「ええ。私は、とある方の依頼を受けていますから。」
私は、餡パン、ショートケーキ、プリンを頂く。
「ソーマ。」
「何、キサラ。」
「彼女達は、ソーマの過去を知っているの?」
私が、そう聞くと、ソーマが周りに目線を向けると、壁際に待機していたメイド達が退室して、彼女達も姿勢を正した。
……なるほど。
彼女達には話しているみたいね。
「ああ。リズ達は、知っている。」
「……そう。改めて言うわ。私は、ソーマと同じ故郷よ。」
「……そうだったのですね。それで、我が家と一部の者達しか食べれないお菓子に対して驚かないし、食べ方を知っていたのね。」
「そう言う事になるわ。」
「それに、食べている時の綺麗な所作。」
「そうね。見とれてしまったわ。」
「綺麗だった。」
「という事は、コレの遊び方も知っているか?」
私の前に出して来たのは、「オセロ」とか「リバーシ」と呼ばれるアレだった。
「勿論よ。」
私の全戦全勝で、元王女のリズティアには接戦だったわ。
「まさか、リズが負けるなんて。」
「それなら、コレは?」
出されたのは「将棋」も全戦全勝で、次が「チェス」で、コレも全戦全勝したわ。
流石に、「囲碁」は無かったわ。
私、囲碁が一番得意だったんだけどね、残念。
私としては、元々好きだったけど、「ヒ○ルの碁」で更に燃え上がったわ!
因みに、トランプ等は、技術的にまだ難しいみたい。
「……つ、強い。」
「年季が違うもの。」
……大分、時間が過ぎたみたいね。
「ソーマ。」
「何、キサラ。」
「冒険者ギルドに行って来るわ。そろそろ査定も終わっているだろうし。」
「そうだな。」
「付いて来なくて良いわよ?」
「いや、一応な。」
「分かったわ。」
私達は、冒険者ギルドに向かったわ。
リン。
そんな切なそうな顔をしているけど大丈夫よ。
私達が王都に居る間は、多分、ソーマの屋敷に滞在する事になるだろうから。
「キサラ。」
「何、ソーマ。」
「王都に居る間の暮らす場所はどうする?」
「私が唯一知っている伯爵様の屋敷にお世話になりたいと思っているけど、良いかしら?」
「それで良いよ。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
ほらね。
そんな事を話している間に冒険者ギルドに到着した私達は、ビックバイソンの肉と、モンスター討伐の素材の代金を頂いて、ソーマの屋敷にとんぼ返りをしたわ。
因みに、代金は大金貨2枚だったわ。
屋敷に帰った私達は、夕食の前にお風呂に入る事になったのだけど、いつもの癖なのでしょうね。
「あ!」
ソーマも脱衣場に来たから、私は笑顔で、ソーマに鬼術の氷系を放ち追い出した。
私の顔を見て、自分の失敗を自覚したみたいだけど、少し遅かったみたいね。
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