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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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急に降り出した雨



 雲の様子がおかしいなと思っていたが、山近くの天候は崩れやすい。


 先ほどまで冴えていた青空は灰色で、

 

 足下や服に斑点を現わしたかと認識したすぐあとに雨粒の量を増やしだした。



 森を歩いていた僕たちは、


 茎が太く葉が大きい植物を傘のかわりにして急ぎだし、


 「「雨宿りぃ」」と同時に言って、


 巨木の切り株のうろに入った。



 その巨木は通常の「大きな木のうろ」の想像より桁違いに大きいと思う。


 どうやって切り株になったのか分からない。


 中はくり抜かれたようにぽっかりと開いていて、


 そしてその中は不思議な魅力で僕たちを歓迎してくれた。



僕「この・・・ヴィジョンは何?」


アデル「浮かんで見える。これって・・・この木の『夢』かもしれない!」


僕「なんだって?どうしたらいい!?」



 見えた様子を再現するために、


 僕たちは『藏之助』の中から丸いテーブルと椅子を取り出した。


 何かの役にたつかもしれないと思って、本棚ごと書籍を入れてある。


 そっちも「それでいいと思う」と言う理由で、うろの中に家具のように設置した。


 なんかあったら古本屋で売ろう、と思っていた棚なので役にたてたなら光栄だ。



 そこに森の精霊がちろちろと羽根を輝かせて飛んできて、嬉しそうに笑った。


 胸に片手を当てておじぎをふたりですると、


 そこにキャピックがいた。



 キャピックとはウサギの頭にトナカイの角を持つ聖獣だ。


 その存在は気に入った者に徳をもたらす、と言われている。


 その姿を見る者は百年に一人かもしれない、と里では言われている貴重な存在。



 緊張して対面している僕たちに、キャピックが感覚で言った。



 ついてきなさい、案内しよう。



 ・・―――― ・ ・・・――・ ・ー ・・



 キャピックの足は速く、健脚自慢の僕たちも時折振り向かれて様子を見られる。


 雨脚は弱くなっていて、もうほとんど足下がぬかるんでいる程度だ。


 そして案内されたのは蔓草に出入り口が隠れている洞窟。


 中は意外にも明るいな、と思ったら大きなしめじみたいな光キノコがはえている。



 キャピックが、あいつの夢を叶えてあげてくれ、と感覚で言った。



「そうか!照明器具みたいに見えたのは・・・」


「この光ってるキノコっ?」



 岩肌にはえているその光キノコは暖かな色合いで光る。


 そしてどうやって生えたのかは分からないが、


 里の植林キノコの知識でどうにかなりそうだと思った。



「慎重に」


「慎重に」


 

 いくつか持っているナイフのうち一本を使って、光キノコのまわりを削ってみる。


 様子を見ていたが、僕たちは顔を見合わせた。



「うん」


「こりゃ子守歌が必要だな」



〈 ふたりが謳った子守歌 〉


 月の光に 清い夜

 猫の盛りじゃないんだね

 いずれおとずれ 花が咲く

 春がぬくぬく ポッカサン

 雪はいつしか 溶けて いく



 本の中の知識だが、うとうとしているキノコは植林しやすい。


 そのため里では、男も子守歌を普通に練習する機会がある。


 将来の自分の子供のためなのか、植林キノコのためなのかちらほら話題にのぼると


 箸が転げて笑った経験のあるだいぶ年上のひとたちに、


「年頃だねぇ」と言われるか思われる。


 なぜかその時「年頃だねぇ」と思っている表情は隠せない。


 そこらへんに神や精霊の存在を連想することは別に悪いことでもないらしい。


 どっちかって言うと、天の意思とか命の決まり、みたいな感覚がする。



 まぁ、詳しくはないんだけど。


 父さんが話してくれた不思議で魅力的な話について、いきなり聖獣との出会い。


 奇跡的だな、思った。



 そんな時、キャピックは言った。



 お前の父親があの巨木を切り株にした。



「・・・ええぇえっ?なんでぇ?」



 詮索はするな。

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