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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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英雄の剣


 黒竜のよこしまな匂いにつられ、幽鬼ゆうきが飛び回り、魔物が現れ始めた。


 それに対応しているのはリーリ。


 召喚獣グレゴルは、リーリの記憶を代価に次々に敵を倒していく。


 その側で兵隊たちは消火作業。


 湯と化した池の水を、バケツに汲んでリーリを守る。


 リーリは自分の足で立つことも難しくなるくらいに疲労していた。



 そこに、天使日徒化したアデルとアデルのお団子頭にへばりついてるカルロリナス。


「一旦、城で休憩しろっ」


 それを聞いて気絶したリーリを兵士達が城へ運んでいく。


 特別なトンネルがあるらしく、すぐに姿を消した。



「僕の怪力は、いつ僕を英雄の仲間にしてくれるんだ・・・?」


 カルロリナスがぼやく。



「矢に乗って、飛んで、昔カイトおじさんが残した傷口をえぐるとか、か?」とアデル。


「ほーう・・・ほうほう。まてよ。傷口が、なんて?」とカルロリナス。


「ん?なんだよ?」


「黒竜の傷口が、なんて?」


「残ってるんだよ、傷口が」


「・・・いざ!!」


「はぁ!?」


「僕の身体は小さいぞーーーー!!」



 カルロリナスが黒竜を指さした。



「マジで!?」


「早く弓を番えなさいっ」


「マジで!?」


「早ーーーくっ」



 アデルの弓矢も一流だ。


 そして天使羽根加工された弓矢を持参していた。


 その矢に軽く、くくりつけられて「よし、準備完了」と言っている指丈小人ひとり。


 カルロリナスは本気だ。



「マジでなのか・・・?」とアデル。


「マジで!!」とカルロリナス。


「俺、どうしたらいいんだよっ」


「城に戻って、このことをカイに伝えてくれーーーっ」


「さっしたーーーー!!」



 放たれた矢。


 雄叫びを上げるカルロリナスを添付した高速の矢が、鱗のすきまに刺さった。


 カルロリナスは怪力でヒモを解くと、背中から首まで移動を試みる。


 カイト・オン・ジョニエルが残した黒竜の傷口は首。


 それしか情報はない。


 気合いを入れようとするカルロリナスが叫んだ。



「くっせーー!!なにこいつ、くさいぃぃぃぃ」



 一方、城。


 最後の矢でも倒せなかった・・・そして英雄の剣を持つ僕。


 自然と皆の視線が僕に集まった。


 それを感じ取ってはいたけど、スーザン系の能力をコントロールに集中。


 そこに、リーリと、アデルが来てくれた。


 担架に乗っているリーリが、少し天使羽根薬酒が残っていると水筒を示した。


 アデルが上半身を抱き上げて、何かあったら結婚しよう、とリーリに言った。


 僕が振り向く。



「えっ?カルロリナスはっ?」


「・・・あっち」



 アデルが指を差した方向には、黒竜がいる。



「は?」


「伝えてくれ、って言われた。今、うまくいけば、多分、黒竜の背中あたり」


「カルロリナスと結婚したいっ」とリーリ。


「それならそれでいい」とアデルは身を退く。



 こちらにやって来て、リーリからあずかった天使羽根薬酒を示した。


 剣にそれをかける。


 まばゆい光を放ち始める『英雄の剣』。


 鍛えてもらった時に、柄と刃の部分を遮る部分がはぶかれていたから思いついた。


 僕は目をつぶって、その意思と気持ちを同調させた。


 おもむろに開いた僕の翡翠色の目に、スーザン系の能力が働いた。



 黒竜の首元に、「く、くっせー」とぼやきながら、近づいてく指丈小人の姿。


 どうもカルロリナスの存在に、どうすることもできない黒竜。


 首元まで到着した彼は、件の傷口に手をかけると、気合いと共に鱗を剥ぎはじめた。


 酷くみにくい悲鳴があたりを凌駕しそうになっている。


 そして僕が下した決断は、アデルとの相談だった。



「な・ん・てっ!?」



 黒竜の悲鳴がうるさい中、僕はアデルに言った。


 英雄の剣を、番える。


 側にいるカルロリナスを避けて、傷口から剣の刃先を貫き、そのまま首を取る。



「何言ってんだ、お前っ!?」



「足が・・・」


「なにっ?」


「足が震えてるんだ・・・応援してくれっ」


「分かったっ」


 平手打ちをして、「これでいいかっ?」と大声で言うアデル。



 僕の笑っていたひざが、どうにか元に戻った。


「うん」


「よし!」



 装備屋の息子アデルにより即席に改造された弓は、一見装飾要素だ。



 僕は改造された自分の弓に、英雄の剣を番えた。


 角度的に、斜めだ。


 発射機では叶わなかった。


 そしてスーザン系能力で見るに、カルロリナスは側にいる。



「聞こえてるでしょうっ?僕の着地の時も考えて~っ」


「アデルっ」


「なんだっ!?」


「危険を承知で言う。カルロリナスの着地の補助を天使日徒としてっ」


「オーケイっ」



 翼を背中から出してバルコニーから飛び立ったアデル。


 真っ赤に燃えている情景に一旦姿は見えなくなる。



「集中・・・集中・・・とせ、もせ、ちせ、ませ・・・とせ、もせ、ちせ、ませ」



 目のズーム能力が最適な時間だと判断した。


 僕は弓剣を放った。


 そしてまばゆく光るその剣は、さっくりと黒竜の首を落とした。



 兵士達の喜びの歓声と共に、黒竜の巨体は落ちていく。


 カルロリナスとアデルが心配だ。


 バルコニーの手すりから身を乗り出して、確認をしようと試みる。


 黒竜の身体の方が地面に倒れる音がした。



「アデールっ。カルロリナーースっ」



 数秒の間。



 大火事の中、黒竜が倒れた場所あたりから飛翔していくる影。


 そしてそれは、すぐに明瞭に無事なふたりの姿だと確認できた。



 歓声と一緒に、両手を上げて喜ぶ僕は小躍り。


 リーリが起き上がって、よろよろと僕に近づいて来た。


 泣いている。



「わたしもう、カルロリナスかアデルかカイと結婚したい・・・」


「それでいいから、もうっ」



 両手を広げてみせると、リーリは僕に抱きしめられて泣き出した。



「よかったよぅ。助かって、よかったよぅ」



 そこにアデルとカルロリナスが戻って来て、四人ではしゃいだ。



 黒竜の討伐とうばつに、成功した。


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