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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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黒竜の襲来


 酷い匂いとその恐ろしさにもらしそうになる。


 それくらい黒竜は怖い存在。


 リーリが物質バリアを張ってくれていたおかげで、助かった。


 まず、巨大石像の前で一ノ矢を撃って、尻尾をかすめた。


 その飛んでいる速さが信じがたい。


 巨体が空を飛ぶ分だけのパワー・・・そしてスーザン系の見る力の発動前に通過。


 黒竜は鳴き声を上げて、よこしまなる炎を噴いた。


 一瞬。


 築くのには時間が普通かかるけど、破壊は一瞬で成立することもある。


 皆が時間をかけて作った山吹色の瓦も畑も、すぐに黒く変じた。


 墨と化したそれが萌えだした空気中に混じり、兵士たちが咳き込む。


 一般人がいなくてよかった、と出産をしたばかりの姫が言ったそうだ。



 姫は、黒竜に求愛されていた。


 そして姫はその頃、パピルスと秘密で付き合っていた。


 ・・・と言うより、子供を産むまで極秘だった、と。


 魔族であるパピルスとの子供は、頭の硬い王に秘密裏だった。


 国を黒竜に襲われ、その件で妃が亡くなった。


 王は心から仕えているパピルスを時々、疑ってしまいそうな心地がしたと書に残した。


 もしやパピルスは黒竜の使いなのでは、と。


 そしてそれは、事実無根。


 パピルスは魔族であるが、優しい性に悩んでいた。


 王も王で、本当のところはそれに気づいていた。


 そうでなければ姫の側付きなんてさせないだろう。


 疑ったのは王としてなのか、父としてなのか・・・そこらへんは分からない。


 事実として僕が言うなら、カイト・オン・ジョニエルの子供だと姫は嘘をついた。



 ただ、姫とパピルスの間の子供だと知れた当時の状況では、生むのは難しかった。


 姫の命も国に貢献しているパピルスの命も危ない。


 そこにきて父さんが、「俺の子供ってことでいいぜ」と言ってくれたらしい。


 それは未来が見えてたから言った言葉なんだろうか?


 それともメイドと子供を作ったことを里に隠したかったのか。


 父さんは姫にみそめられて、姫と子供をなしたことになっていた。


 姫、十五年の妊娠期間をへて、無事、出産。


 床に伏しているもう寿命が短い王が咳き込みながら、パピルスに言った。



「まことに姫との間に子をなしたなら、お前に王の座をやろう」



 それを聞いてうやうやしく挨拶をしたパピルスは泣いていた。



「英雄カイト・オン・ジョニエルの息子よ、期待している」


「光栄です、王様」



 そのあとおもむろに目を閉じた王は、黒竜再来の日、崩御。


 王を慕っていた部下たちも泣いていて、絶対に黒竜倒そうと言うと、うなずかれた。


 赤子をその手に抱いてほしかった、と姫は悲しみに泣いている。


 産後、情緒が不安定なのだろう。


 それでも姫は、この国のためにお祈りをする女達と城に残った。



 すすけた物質バリア・・・


 バリア越しにも熱気がある。



「一旦バリア揺するからっ」


 リーリが魔法を使って、バリアを揺するとすすは落ちた。


 ごうごうと周りが燃えている匂いや音がする。



 スーザン系の能力、『耳』を使って黒竜のデータを取る。


 速い・・・でも飛ぶ速さの統計はとれた。



 バルコニーから発射機を使って、二ノ矢を放った。


 黒竜の悲鳴が聞こえ、矢は身体の大きさにしては小さめの腕の付け根に刺さった。



 そしてその飛翔の速度が緩まった時、足を使って矢を打つ兵隊たちの出番。


 兵隊千人・・・一度に千本を越える黒い矢が黒竜を雨のように襲う。


 普通の矢に天使羽根の加工をしてある矢。


 それは黒竜に小さな傷を大量に作った。



 三ノ矢・・・黒竜の顔面を狙う。


 これで倒せるかもしれない。


 そう思って放った三ノ矢は、黒竜の噴く炎の勢いで落下した。


 とんでもない熱を含んだその矢は、高床式方面の水を湯に変えた。


 突然の温度変化に、いくつも魚が腹を見せて浮いたと言う。



「あと、二本・・・」



 どうやら黒竜を倒せるかもしれない可能性を持つ矢は、あと・・・残り二本。


 そして僕は発射装置をぐんと上に向けて、四の矢を撃った。


 弧を描いて落下するその黒鉄の矢は、黒竜の背中に刺さった。



 武官たちから歓声が沸いた。



 次の矢で最後・・・


 五ノ矢を放つ・・・


 背中をのけぞらせた黒竜の腹に、五ノ矢が刺さった。



 それでも黒竜は生きている。


 矢はもう、ない。


 だとしたら・・・




 僕は父さんから受け継いだ、『英雄の剣』を思い出した。


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