レオナリドミオ王国
あんな襲われかたをしたのは珍しく、また船員が替わったばかり。
恐竜たちの安心する周波数を放つのを忘れていたらしい。
なのでお礼に、と、飛行船でレオナリドミオ王国の手前まで送ってもらった。
どうやら帰路の近くで、手前までならついでに寄っても問題ないらしい。
お金持ちさんたちからのお礼で、特別にシェフが作った豪華な料理を食べた。
◇飛行船で飲み食いしたもの◇
・『良い感じ』でよく焼いたステーキ
(「お肉のほうどうします?」って言われて、「焼いて下さい」って答えたら笑いなに?)
・ドレッシングをかけた海藻サラダ
・トマトをベースにした魚介のスープ
・ストロベリーパイ
・メロンソーダー
床の魔方陣はリーリが気をつかって、以後、本人にしか使えないように細工をした。
宿泊部屋にはベッドがよっつあって、ふかふか。
皆でお昼寝しようぜ、って言って眠って起きたら、夜だった。
浴室もあって、シャワーを浴びて着替えると涼みに甲板に出た。
濡れた髪先を気にしていた時に、ドレスを着たマダムが遠くを見ていた。
なんで夜なのに日傘を差しているんだろう、と思った。
マダムはこちらに振り向き、微笑んで見せた。
「こんばんは」
「あ、はい。こんばんは。何を見てるんです?」
「亡くなった旦那との思い出よ」
「それは・・・あの・・・どんな言葉をかけたらいいのかわかりません」
「ふふ。優しいのね。ありがとう」
「カイ」
そこに来たのはリーリで、探したんだからぁ、と言って近づいて来る。
そしてマダムは、苦虫を噛んだかのような顔をした。
舌打ちをする。
「客じゃないのかい」
「・・・ええええっ!?ごめんなさーいっ。リーリー、た、す、け、て~っ」
リーリの側に走り寄って、「怖いよう」と言うとハグをされて背中を軽く叩かれた。
「大丈夫、大丈夫。ほら、部屋に帰りますよ」
リーリと部屋に帰ろうとした時に、
温泉宿の娘さんからもらったネックレスが色を変えた。
あれから首に飾っていたけど、ネックレスが予兆のように白に色を変えた。
今回は光った。
キラキラとした小さな粒の輝きが、ネックレスの石に集まっている。
「なんだろう?」
「何か起こるのかしら?」とリーリは興味深げ。
レオナリドミオ王国についてから知った話だけど、
近くの空賊がその時間、
なぜか恐竜を遠退ける周波数を放つことができずに、沈没したらしい。
空賊に狙われていたのはおそらくこの『ソフィア号』・・・
石が光ったのと・・・なにか、関係があるんだろうか。
――・ ・・ ― ・・・・――――
山を削り取って作られた対の巨大石像、一方が剣、一方が盾を持っている。
レオナリドミオ王国の入り口だ。
「うーわー、すっげぇーっ」とカルロリナス。
「上から見たのと下から見上げるのともなんか違うな」とアデル。
「お姫様、可愛いひとかなぁ?」とリーリ。
「そう言えば、僕のきょうだい・・・」
「カイ・ラヴィンガーデンとその一行?」
急に聞かれて驚いたが、そこにいたのは真っ赤な髪に巻き角のある美青年。
そこに兵隊たちが現われて、どうも巻き角を持つその者は魔人だと知った。
その魔人はレオナリドミオ王国の姫の側付きらしい。
こちらを迎えに来てくれた、ってわけだ。
アーバの話をしてみても、苦笑されただけ。
まぁ、巻き角があるってだけで全員が知り合いなわけもないか。
彼の名前はパピルス・ルビル・ライジン。
聞いたことがある名前だ。
「父さんがあなたのこと聞いたことがあるかもしれない」
「ほう、どのような言われ方をされたんだろう?」
「うーん・・・そう言えば、恋愛がうまく進んでいない、みたいに・・・」
失恋とかをしていたら部下の前ではされたくない話かもしれない。
発音している間に、尻すぼみになる。
「まずはお城にご案内します」
なぜか苦笑したパピルスがそのあと僕に耳打ちをした。
「恋愛の件、あとで相談したいです」