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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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飛行船ソフィア号


 ガバリオ君同行で、飛行船ソフィア号に乗った。


 横に大きな風船みたいなのに、カゴが吊されてるみたいな言い方しかできない。


 プロペラとかが先端にあって、舵を取るひとがいて、空を飛ぶ船だ。


 カゴじゃなくて船って言えばよかったかな。


 船状の部分にひとが乗れて、風船部分は縄みたいなので連結されてある。


 もしかしたら、その黒いロープはメカニックなのか聞いたら正解。


 伸縮性のある丈夫なメカニックロープらしい。



「もしかしてあの黒いロープをさ、矢とかに付けたらさ・・・」とアデルがぼやく。



 するとガバリオ君が大興奮。


 最近そんな文明が普及しつつあるんだけど、争いの火種になりかねないらしい。


 手で持ちはするんだけど、機械の反動で飛んで行く鋼の矢。


 しかもそれにメカニックロープがついていたら、飛んでいる敵を引きずり降ろせる。


 もしくは銃の中にそのロープと矢の先が合体したやつを撃ち込んで、移動手段にする。


 つまり、丈夫なロープを斜め下に撃って、金属片の取っ手をひっかける。


 そのまま手の力で自分の体重を支えて滑り降りる・・・そんな話。



 運動神経のいいひとは、靴底に仕掛けをしたらロープの上を滑れないか聞いた。


 ガバリオ君、「素敵ぃ」と言って、興奮しすぎて少しの間、気絶。


 何歳なのかアデルに聞いたら、ガバリオ君は32歳らしい。


 作業に没頭中、世話をしてくれていた近所の娘さんと結婚した話を小さい頃聞いた。


 小さい頃は身体が弱くて、空想をするのが好きだったんだそうだ。


 僕の場合は物書きを選んだけど、ガバリオ君はメカニッカーを選んだってわけか。




 そこに、小背こぜいを思わせる杖を持った老婆が近づいて来た。


 気絶しているガバリオ君を診て、そして僕を見て驚いていた。



「翡翠の髪をした剣士はいずれ黒き竜ののどを裂いて災厄を打ち破り、


 背に翼を持つ青い目の付き人の内なる力の目覚めが、


 病と呪いを打ち砕く」



 少し驚いていて、老婆に話しかけようとした時だった。


 空から、翼を持つ魔物の出現。


 僕とアデルは魔法石指輪藏之助から弓矢を出して、番えた。


 そして何匹か落としている間に、光線銃やら、電気の走る網やらが飛んだ。


 網に掴まった魔物のはずのその生き物が、けたたましく鳴いている。


 人相の悪い中年たちが、「高く売れるぞ」と言ったのが聞こえた。


 ・・・どういう意味だ?魔物は売れない。肉も食べたらいけない。


 アデルはすぐさまそちらに向かって、「何事か」と呼び止めた。


 電気の走る網なんて、なんだかひどい・・・アデルはそういうのを許さない。



 そして僕は、そういうのはちょっと無理な体質で気持ち退いていた。


 だから様子を見て距離を取っていた。


 そしてアデルと中年たちがケンカを始めた頃、大群で空飛ぶ魔物がやって来た。



 気絶から目覚めたガバリオ君が俺の側に来て言った。


「あれは魔物じゃなくて、恐竜なんだ。箱庭地区で、数を増やしたらしい」



 保護区の温厚な恐竜たちを思い出した。



「それはー・・・自然と?」


「さぁ、な。箱庭地区には人がいないことになっている」


「じゃあなんて、箱庭って名前なの?」


「神のごとくあろうとする者が少なからずいるのは聞いてる。見たことはない」


「・・・ん?」


「もう、その神のごとくあろうとしている者が人型をしているのか分からない」


「怖いな」


「それはどうして?」


「この世の理に反している」


「いかにも。だとしたら、とても怖いことだ」と小背の婆。


「あれは、恐竜なの?」


「一説に。魔物と恐竜の掛け合わせだ」


「共存は?」


「言葉は通じないタイプだ」


「ん?」


「色々いるって聞いてるんだよ」


「なるほど、ね」



 僕は弓矢を番えて、生き残るために放った。


 そして軌道をそらそうとする飛行船と、ケンカをしているアデルと中年。


 傾いた飛行船、中年に殴られた拍子に空中へと投げ出されたアデル。


 僕は急いでその飛行船のへりを掴んで、アデルを呼んだ。



 その時、僕の藏之助は白く変じて、『蔵伸:くらのび』になっていた。



 『蔵伸』は、藏之助が個体で亜空間を所有している件で


 何かの条件を満たせば、それに干渉できる進化をした証に白く変じた石のこと。



 僕の藏之助に入っていた賢者の石のパワーが発動して、アデルに作用した。


 賢者の石に選ばれた僕が望んだのは、アデルの進化だった。


 そして天使日徒であるアデルの背中から翼が一気に芽吹いて、広がった。


 体勢を持ち直した船とアデル。


 乗客たちが唖然としている中、白い光に包まれたアデルが目を覚まし、体勢を直す。



「いやっほーうっ」



 僕は嬉しさに指笛を吹いた。


 遠くにいるアデルが僕を見つけて苦笑しているのが見える。


 スーザン系の能力が自然と働いているのを見抜かれた。



 アデルはこちらを見て、「船のほう任せた」と言った。


 アデルはそのまま空中戦をする気らしい。



 僕は魔法力を代価に光線が出る銃を拾って、二丁拳銃をぶっ放した。


 なんてたって、親友が空を飛んでいる。


 魔物恐竜さん、そちらの都合はよく分からないです、って調子が乗っていた。


 調子に乗るんじゃなく、調子が乗っていた。



 しばらくの間の戦闘を終わらせたのは、リーリの炎魔法だった。


 床に陣を描くのに時間がかかったらしい。


 頭がハート型の錫杖のような魔法の杖で、カルロリナス補助で刻んだらしい。


 そして発動した大きな火の玉の爆発で、空を飛ぶ魔物は箱庭へと戻って行った。



 船に帰ってきたアデルは少しよろけた。


 そして背中にはえた羽根が、ごっそり根元から離れた。



「これ、もらってもいい?」


 リーリが言うと、ぜーはーと息をしているアデルが眉間にしわを寄せる。


「天使の羽根の成分は魔物に効くのよ」


「じゃあ・・・使えよっ・・・」



 ひざを床について、リーリの魔法の杖を掴んでいるアデルは今にも気絶しそう。


 僕を見つけたアデルは笑ってみせた。



「必要だったら羽根生えてくるって言っただろうに」


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