アムスデリア
聖堂での旅の祈願の参拝をすることになった。
宿で入念にお風呂に入って新しい服に着替えて、
旅の仲間と共に聖堂を訪ねる。
キラキラとしたシャンデリアが陽の光に反射して輝いていて綺麗だ。
壁に描かれた絵には魔法がかかっていて、
あの傑作、『天使ふたりと聖女の木漏れ日』が描かれている。
豆知識として少し書いておこう。
その絵に出てくるのは、白羽根の天使と黒羽根の天使。
それは双子であって、ふたりの人格はとても似ていて仲もいい。
けれど黒羽根は、「黒と白の概念」に悩んでいた。
そんな時に出会ったのは、木漏れ日に見とれている女性。
木漏れ日には光と影があって、どちらも綺麗だと言った聖女。
木漏れ日に正義も悪もない、と。
そこにあって、誰かを癒やせるかもしれない存在。
それはきっと善人であって、どこか自分が優しいことを忘れているひとだと。
天使ふたりは『木漏れ日』の眷属となって、コモレエルとビエルと名乗った。
その壁絵の羽根や風に揺れる木々や木漏れ日が、魔法により動いている。
たしか「ツクモガーミ」と言う魔法だ。
聖堂に掲げられているのは、世界樹のお墓としての彫刻。
世界は一度、終わった。
そしてこの世界が始まった。
そこには「もっと生きたかった」って言う想いが魔物になった存在がいる。
それが僕の知っている世界事情。
魔物には供養は効かないと聞いている。
形式がムズカシク最近は討伐するだけだ、と。
理解してはいけない存在だ、と。
そして僕は、疑問を持った。
本当だろうか、と。
それは僕が小さい頃から悩んでいたことのひとつ。
魔物は供養できるんじゃないか、ってこと。
それを旅の仲間に打ち明けた。
アデル「何度もそれで、連れて行かれてるやつがいるんだろうが!しっかりしろ!」
リーリ「どこに連れて行かれるの?」
カルロリナス「異世界ですよ」
その声の張りは少し目立ったらしく、神父がやって来た。
「何度も試みたのですが、魔物は、魔物という生き物です。思考回路が違う」
アデル「カイは優しすぎるんだ」
僕は苦しくなった気がして、唸った。
リーリ「やっと、自分を認めることができる!わたしもそれ悩んでた!思考回路が違うひとは意外なほど違うのよ」
僕「なるほど・・・」
アデル「うんうん」
カルロリナス「僕は思考回路が違うなりに、皆さんのことが大好きですよ!」
「「ありがとうね」」
神父「そちら、珍しい毛色だね。出身は?」
「カイト・オン・ジョニエルの息子、カイ・ラヴィンガーデン」
驚きを隠せぬ神父が、とあるものを預かっていると別室に僕たちを招いた。
そこで渡されたのが、魔法のかかった絵画の中から取りだした赤い石。
「賢者の石だよ」
「・・・はぁ!?」
「これを君にさずけようぞ、カイ・ラヴィンガーデン」
「どうやって使うんですか?」
「持っているだけでいい。藏之助にでも入れておきなさい。きっと助かる」
「どうも・・・」
片手いっぱいに乗るくらいには大きな赤い宝石。
それが、「藏之助にしまっておけ」と喋った気がした。
「僕はまた、何かに選ばれたの?」
神父「ははは。そんな台詞みたいなの、英雄となる者の性かもしれないな」
「砕いたりしたら危ないですか?」
「大丈夫、時間はかかるが元に戻る」
「伝承通りだ」
神父「まぁ、伝承でしかないんだけどね」
「「ん?」」
神父「いい、いい、もらって、もらって」
アムスデリアでの見聞も、なかなか充実した。
図書館に、『漫画』と言うものがあって夢中になって読んだ。
内容は主人公の親友のひとりが天使の女の子。
男親友女親友と三人で仲良しなのに、
『自分との時間を代価』に親友ふたりの恋仲を叶えてあげる話。
天からの慈悲で、出会い直しが許されるのは泣きそうになった。
新しく出会い直すんだ、って思ったその天使は人間とのハーフ。
そしてそれに気づいたあんぽんたんに、車にひき殺される。
その場にいた主人公とその恋人が倒れているその子の天使の羽根を見て、
何かを助けただんろうか、って空を見上げる・・・そんな終わり方だった。
もっと他に、違う終わり方はなかったのかな、って思った。
その感想を持った時の自分が書き手だったのか分からないから幸せな時間だった。