父さんのニセモノ
旅路、父さんについて情報が入った。
近くの街に父さんがいるかもしれない、と。
再会したい!!
旅の仲間に了承を得て、道を少し変えた。
その街に入ると、そこは魔法と文明が混在していた。
父さんがこの街にいて、鍛冶に剣を頼んでいる、と聞いた。
なので鍛冶に会いに行く。
急やる想いを胸に、そこで青い光の魔法を見る。
鍛えているのは刀で、槌で叩く度に高い音を出して青い火花が散る。
その周りに飛ぶ火花が、小さな花型だ。
もやもやと熱気がしていて、近寄りがたい。
「おう、注文した品はできたかい?」
そこに現われたのは、中年男。
鍛冶が、とっくに出来ているよ、と、剣を手伝いに取らせに行かせた。
鍛冶が僕たちを見つけて、「そいつぁ、英雄のカイトだ」と言う。
「「・・・え?」」
僕とアデルは呆然とする。
目の前にいる中年男・・・?
リーリが感動に声を上げる。
「カイのお父さんですかっ?」
「ん?どういう意味だろう?わたしには40人ほど子供がいてね・・・」
「・・・ん?カイのお父さんですよね?」
「いや~・・・知らないなぁ」
リーリがこちらに振り向く。
僕とアデルはかぶりを振る。
リーリは眉を寄せた。
「どういう意味??」
中年男がリーリを凝視している。
それに気づいたカルロリナスが怒りだした。
「なんスか!?」
「いや~・・・可愛いお嬢さんだ。一緒に食事でもどうかね?ふたりっきりで」
「何を言っているの?目の前にいるカイに何か言葉はないのっ?」
「わたしの名前は、カイト・オフ・ジョニエル!!あの英雄ですよっ」
「・・・ん?」
「ん?」
リーリが不思議そうにして、カルロリナスが驚いていた。
僕とアデルは真相に気づいて、呆れて溜息を吐いたりした。
リーリに肩をすくめてみせる。
「ちょくちょくあるんだけど・・・このひと、父さんのニセモノだ」
「・・・ん?」
「「なりすまし」」
「はぁっ!?」
驚くリーリを見て、鞄の中に戻るカルロリナス。
「は~あぁ、なぁんかどうでもよくなってきた~」
苦笑する僕たちに、カルロリナスは「なんぎよの」と声をかけて鞄の中に隠れた。
結局その街で本物の父さんとの再会はなく、複雑な気分のまま見聞をした。
― ・―・・ ――・ ・―
街の図書館で、アデルが適当に本を選ぶ遊びをしていると、紙切れを発見。
どうやら書き留め。
不思議なことが書いてあった。
ここに記しておく。
〈カイト・オン・ジョニエルのメモ〉
意外だったのは歯、『竜の歯』。
竜に『歯』があって、通貨になっている。
これは驚きだった。
鱗あたりは予測していたが、ここに来て『歯』。
どれくらいの価値なのかと言うと、種類がある。
牙歯、普通歯、乳歯。
まるで金、銀、銅、である。
価値としては銅よりも細かな価値であることが基本条件らしい。
ものによっては、『竜歯』自体が金貨より高値だったりの異例もある。
特に抜けた歯を使用するので、乳歯ばかりだと聞く。
竜の抜歯は禁止されているが、やはり多少の流通があるらしい。
それに関しては色んな意味合いでブリーダーが深く関わっているそうだ。
あの関所と高い壁に守られた地区。
その場所で竜は育つもんだと思っていた。
それは当然であって、竜が異世界から次元の歪みで来訪するのは知らなかった。
特に竜の卵があの付近で発見されがちなんだそうだ。
背の高い立派な関所関門には、竜の彫刻が彫られている。
その柄だけでもいいから近くに見に行きたいと思っていた。
そこに来ての依頼で、関所をくぐることになった。
――
――――・・・
これ以上は書けそうにない。
・・・――――
――
本当に父さんが残したメモなのだろうか?
だとしたら父さんって、空想を書き出したのだろうか?
司書さんいわく、昔この街に父さんが立ち寄ったことがあるらしい。
それ以来、ちょくちょく「なりすまし」が出るんだとか。
ただ、物書きとしてカイト・オン・ジョニエルを名乗るひとは知らないと聞く。
その息子であることを言うと、サインを求められた。
司書さんが個人的に持参した読書中の書籍に、なぜか僕のサイン。
喜んでいる司書さん。
「サイン、もらってみたかったの~」
僕はアデルに振り返った。
「これでいいの?」
「・・・よく分からない。お前が物書きとしても売れたらいい」
僕、サインに価値が出るように頑張るよ。