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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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親友のアデル


 僕が暮らしていたのは何の変哲も無い田舎町。


 お客さんが外から来ると、「どんな関係なんだい」と聞かれるような所だ。


 皆が皆そう訪ねるわけではないんだけど、客人との関係話はすぐに広まる。


 僕はなんだかそういうのがイヤで、里の大人とはあまり関わっていなかった。


 子供たちの中ではリーダーを張っていた僕は、読書と剣術と弓矢の練習ばかり。


 父にかまって欲しい一心だったけど、絵本を買える家なので子供リーダーだった。



 一度本をぬかるみに落とした里の子供が、それをごまかした。


「アデルがやったんだ」



 アデルとは片親の家の一人息子で、つんけんしたやつ。



「ああ、俺がやったんだ。それが何だ?」



 アデルに聞きに行くとアデルはそう言ったけど、周りにいた子供たちは笑っていた。


 泣きそうになりながら「アデルがやったんだ」と言っていた子はにやにや笑い。


 そこで感づいた。



「わざとか?おどされているのか?」



 はっとしたアデルが、「違う」と強めに言った。



「じゃあ何?」



 周りの子供たちの機嫌と目つきが悪くなってくる。



「おい、アデル・・・やめろ、よ」


「俺は、どうせ疑われて犯人にされると思ったから・・・」



 そこに偶然父が来て僕を探していた。


 僕が事情を話すと、他の子供がぬかるみに絵本を落とした所を偶然見ていたと言って、アデルに犯人のふりなんてバカにされるようなこと今すぐやめなさい、と言った。


 アデルはうしろにいる子供たちにバレないように泣いた。


 それを父さんは抱き上げて、俺に「家に戻るぞ」と言って先に歩いて行く。



 家について一緒におやつをしようと父さん越しに彼の悩みを聞いた。


 その内容の詳細は書くつもりはないけど、母親の片親家庭で彼は当時12歳。


 色々と大人になっていく身体についてなんかの不安も父が相談にのった。



「いいから、食べなさい」



 涙声で相談をしていたアデルがおやつを見たあと僕を見た。



「食べていいんだよ。僕、君と友達になりたい」



 目をぱちくりさせたアデルが「本当なのか」と少し心が澄んだ印象になった。



「君がそれでいいなら、今日から副リーダーになれよ」


「分かった」



 ―― ・ ・・・―   ・――ーー・・ ・―――



 それからはアデルの筋が良く、父さんの指導のもと剣術と弓矢を共に習った。


 競うようにして本の貸し借りもしたし、充実していた。


 

 ただ、父さんが突然いなくなってからの暮らしは色があせた感じがした。


 子供たちからのアデルへのいじめが再発し、


 リーダーである筈なのに消沈していた僕が気づくのが遅れた。



 15歳になっていた僕たちは、それぞれが多感期で自然と離れた。


 僕は具合を悪くした母さんの世話をしながら読書にふける日々。



 アデルはと言えば、酒場に出入りをして新しい仲間ができたようだった。



 父さんがいた頃はスイカやきゅうりやトマトをザルに入れて、

 川で冷やして一緒に食べた。


 夕暮れまでなんやかんや一緒にいて「明日もな」と声をかけあって家路。


 とうもろこしの収穫を手伝った日は、アデルの家で一緒にとうもろこしのお茶を飲んだ。


 そのとうもろこしは、他の野菜と一緒に、間違えて川で冷やされたやつだ。



 そんなことを思い出話に、同い年のアデルと酒場にいた。


 この区では15歳から酒場での飲酒が許されている。


 

「今でも貴様のことを親友だと思っている」



 少し驚いた様子のアデルが、「隣か向かいに座れよ」と言った。


 座らない僕。


 そして意を察して、アデルが席から立ち上がった。



「なんなんだよ?一緒に見聞の旅??」


「そうなんだ。ひとりじゃ不安だ」



「リーダーと福リーダーの件は?」


「貴様がそれでいいならやめる」



「どれくらいの旅なんだ?」


「父さんの言っていた外の世界を、納得するまで見てみたいんだ」



「俺でいいのかよ?」


「里に来た天啓では、村からふたり見聞の旅に出しなさい、だと」



「ほう・・・じゃあ、俺でいいのかよ?」


「僕はそれでかまわない」



「じゃあ準備をする」


「旅の?」



「ああ、そうだ。記述用のノートはもう買ったか?」


「もちろんだとも」



「防具や武器は?」


「そこらへん相談したいな」



「いいだろう、お前は俺を選んだ。旅につきあってやるよ」



 アデルは武器や防具になかなか詳しい。


 装備屋の息子だから、当たり前かもしれないけど。



 こうして15歳の時に母を亡くして酒場に通っていたアデルは、


 親戚がついだ装備屋に酒を持参して、


 上質な装備品を格安で用意してくれて、僕との見聞の旅に出ることになった。

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