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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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砂漠のハーレム


 そう言えば、忘れていた。


 父さんは物書きとして本を出版していて・・・


 あれ?


 なんだっけ??


 なにか記憶が消えた・・・?


 いずれ思い出すだろう、って何が言ったんだろう?


 うーん・・・まぁ、いいや。



 砂漠のオアシスに招待された僕たちは、室内に噴水のある御殿に招かれた。


 緑も涼しげで、合理的かつ妖艶な服を着た美女たちが出迎えてくれる。


 この御殿の主人の名は言えないが、皆に位としての「マヤルン」と呼ばれている。


 紗でマスクのように顔を隠した褐色の美少女が、「あなた」とマヤルンに言った。


 マヤルンからの紹介で、その美少女が正妻であることを知った。


 見た目は10歳くらいなのに、実年齢は40歳なのだと言う。


 究極系の童顔で小柄、って言えばいいんだろうか?


 それともからかわれているのか?



 今でも分からない・・・


 

 マヤルンからのお願いで、外の話や砂漠地帯の配慮としての植物の話をした。


 すると彼女は喜んで話に参加した。


 マヤルンご機嫌で、「他の女たちを好きにしてもいいぞ」と言い出す。


 やばい、本で読んだことがあるぅ・・・ハーレム!!


 でも、話がしたい。


 美女たちがお酒やジュースを杯に注いでくれて、大きな葉っぱであおいでくれる。


 カルロリナスの存在に、きゃっきゃとしている美女たち。


 美女にはカルロリナスって可愛く見えるらしい。


「リーリさん、僕、浮気はしませんっ」


 カルロリナスがそう声を透しても、リーリは植物の話に夢中で生返事。


 わたくしたちと遊びましょうよ~、と美女たちがカルロリナスに興味津々。


 誰か~、どうしたらいいのか、教えてくれ~と悲痛なカルロリナスの声。


 美女たちがきゃっきゃと取り囲み、カルロリナス、見えなくなる。


 時々カルロリナスが、お願いー、助けて~と言うのが聞こえていた。


 盛り上がる雑談。


 夜になり、眠くなってくる。


 そう言えばアデルはどうしたんだろう、と思った。


 

 客間が用意されていて、旅の仲間全員がその一部屋に集合。


 カルロリナスはリーリに飛びついて泣いている。


 すすり泣きをしている彼に気づかないアデルに、何をしていたの?と僕が聞く。


「楽しかった~」


「なに?」


「夢のような美女たちだった」


 リーリが、「早く眠れっ」と声を上げる。


「わーかったよ、眠るよ」と素直にアデルが言って、横になる。


 数秒後、いびきが聞こえる。


「ああ、寝ぼけていたのか」


 すすり泣いているカルロリナスが「死ね、って言いそうになった」とぼやく。



「それは言い過ぎだろう・・・?」


 僕はそう言うしかなかった。



 ――・ ―――― ―・ ・――



 眠ってる時に赤毛のかつらが取れたらしく、翌朝、起こしに来た従者さんの悲鳴。


 そりゃ翡翠色の髪の毛は珍しかろうな。


 ぼんやりとしてたけど、眠る前にカラーコンタクトレンズ『人魚のうろこ』も取った。


 虹彩も翡翠色。


 ああ、どうしよう?


 碧の一族に知れたら・・・


 するとマヤルンが直々に客間へとやって来て、僕を見て「ほーぅ」と言った。



「売れば、かなりの高額だろうなぁ」


「なんですってっ?」とリーリが声を上げる。


「ははは。きっと冗談、だ」とアデルがリーリを落ちつける。



 実は気づいていた。


 読み物での知識だが、砂漠のオアシスでは人身売買が行われている。


 買われるのはおもに美女。


 リーリはその知識を持っていない・・・カルロリナスはリーリの声で起きた。


「え、どうしたんですっ?」


 すっとんきょうな声をあげたカルロリナスを発見し、マヤルンの側付きたちが困惑。


「神・・・?」


「・・・なんて?」


「指丈の人型と、白い魔女と、緑色の髪と目・・・!!神か神の使いですっ」


「「は?」」


 アデルが、「え、俺は?」と言っている。


 マヤルンが困惑しながら苦笑して、「そういうことになってる」と言う。


「え、俺は?」とアデル。


「神の使いに使えるひと、って言ってある」


「ああ、そうなんだ・・・」



 その場では隠していたけれど、アデルが『保護区』出身なのは「天使日徒:てんしびと」だから。


 先祖に天使と交わった伝承があり、天使日徒は天使の血を引いている。


 里でも、「神の使いの血」って呼ばれていた。


 それをいじめてた里の子供たち、今頃なにをしてるのかなとかふと思った。


 苦笑した僕に、アデルが気づいて眉根を寄せる。



「今、俺のこと想ってるだろう?」



 さらに顔をそらして笑うのを我慢して顔に出ているらしい僕にアデルが言う。



「必要だったら羽根はえてくるもんねっ」



 本域で笑い出した僕に、アデルは「なんなんだ」とぼやく。



「父さんが「何色なんだろうね」って言ってたね」


「あれは、意外だった~・・・純白がいいだろう?」


「知らないよ」


「いや、ここは概念的にさ・・・」


「知らない」



 マヤルンがくくくと肩を揺らして笑い出す。


 美青年だが、ひと癖のあるひとのような気がしてならない顔立ち。


 まぁ、印象でしかないけど。


 マヤルンが朝食を一緒にしよう、と言ってくれた。


 そこにマヤルンの背後に隠れていた奥方がひょっこり顔を出す。



「一緒にお風呂に入りたいわ」



 ・・・と言うわけで、なぜか全員で大浴場へ。


 タオルを巻いて入ろう、ってことになったんだけど、問題はカルロリナス・・・


 布の切れ端をもらって、いざ、皆でお風呂。



 奥方とリーリは女子ならではの話で盛り上がっていて、マヤルンは嬉しそう。


 普段は奥方の位に対して、そんな話をするひとがいないらしい。



「客として招いてよかったよ。当初は首を取るつもりだった」


「「やっぱりかぁ」」と男陣。



 大笑いをして「なんか違うなっ」と喜んでいるマヤルンに女子たちびっくり。


 泳いでいて、こちらの話は聞こえていなかったらしい。



 それからカルロリナス・・・すぐにお湯から上がって、石像の側にいた。


 肩肘を頭に置いて横にねそべり、こちらを見ている。


 湯気が幻想的な感じを出しているね、と言うと彼は「はっ」と鼻で笑った。



 どうも美女達に取り囲まれた件で、助けなかったことを根に持ってるらしかった。



 朝食はおもにフルーツと氷菓子。


 マンゴーは里にもあって、アデルと一緒になつかしがった。


 ぶどうの実を初めて食べたカルロリナスは、感動。


 リーリは桃に夢中。



「白魔女さんの身体に、碧の一族の証である刺青があったと妻が言った。気にするな」


 マヤルンはそう言って、杯の飲み物をぐいっと飲み干した。


「ふぅん・・・今日も毒は入っていないみたいだ」


 マヤルンはそう言って笑った。



 美女を抱けなかったのはちょっと残念だったけど、僕たちは無事にオアシスを出た。


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