召喚獣グレゴル
森を更に進むと、崖に橋がかかっている。
その橋横にある綱はしごを使って、崖の下に降りた。
「そう言えばウィーザードボードを使っていれば早かったなぁ」と僕。
「怖かったのにぃ・・・!!」とリーリ。
面々が苦笑。
崖と言っても、そんなに落差はない。
まぁ、飛び降りたら膝とかを壊すかもなぁって感じの落差だ。
崖下には特に植物ははえていない。
「ここらへんに・・・いるのかな?」
「「グーレゴールっ!!」」とカルロリナスとアデルが叫ぶ。
軽快な足音が聞こえて来て、岩陰から出てきたのはグレゴル。
翼を持つ、猫猛獣。
翼の色はそれぞれ違うようだ。
「《案内しよう・・・それから、正式な発音は『グレゴール』だ》」
父さんの残した記述書には、この場所が記してあった。
グレゴルの隠れ住処の神殿。
そこに、『召喚獣:しょうかんじゅう』がいる、って。
「《わ~、人間だぁ~》」
そこにわらわらと現われたのは、グレゴルの子供達。
とても無邪気で、可愛い。
群れのリーダーであるグレゴルが「《可愛いだろう?》」とちょっと自慢気。
「なんて可愛いの」とリーリ。
「僕は?ねぇ、僕は?」とカルロリナスが言うと、グレゴルたちが発見。
顔を見合わせた赤ちゃんグレゴルたちが、突進してくる。
「わーーー!!あんな可愛いのに攻撃は無理だぁーー!!誰かー、たーすけてー!!」
ひょいっと僕がつまみあげて、肩に乗せる。
「きっと大丈夫だから」
「はぁ~・・・びっくりしたぁ」
「それで、召喚獣って言うのは、リーリが取得するのか?」とアデル。
「そうらしい」と僕。
「少し心配です」とカルロリナスがぼやく。
「皆の役に立ちたい。祈りの場に案内してほしいです、グレゴール」とリーリ。
「《まぁ、いいだろう。責任はとらんからな》」
リーリを見送るために、小さな神殿の門の辺りまで皆で進む。
お前達はここまでだ、とグレゴルに言われる。
リーリは「行ってきます。必ず帰る」そう言って、薄暗い神殿の中に入って行った。
・ ・―― ・ ―――――― ・・・――――
これはリーリから聞いた話をもとに記述する。
神殿の中は薄暗いけれど、光たんぽぽがかなりいた、と。
そして光魔法で自分を光らせて、自分の姿を確認できるようにしたらしい。
『芯間:しんま』と言う聖堂にたどり着き、美しい祈り子を見つける。
常にお祈りをするかわりに、眠りを選んだひとたち。
かつてはイケニエと呼ばれていた者たちがいる・・・
溶かした魔法石液の中で、自分を抱きしめるようなポーズをしている。
リーリは祈り子に丁寧な挨拶をして、召喚獣が欲しいと願った。
なんのために・・・?
「守りたい。役に立ちたい。もうすぐ黒竜が目覚めてしまう」
・・・代償は、記憶だぞ?
「・・・・・・せめて、彼らのこと、少しだけ・・・思い出したい」
ほう。まことの仲間・・・
・・・お前の人生を見たが、代価は記憶だ。
苦しかった、お前の過去だ。
この会話は戦いが終わって目覚めるまで、思い出せなくしておこう。
「・・・えっ?」
手を組んだ祈りから意外で顔を上げると、そこには半透明のグレゴルの姿。
「《私たちはお前を選んだ。協力しようぞ。外を見てみたくなった》」
「・・・ありがとう!!」
一方そんなことが起きている時、僕たちはグレゴルに催促をされた。
「《オソレルナの歌を、知ってるか?》」
「「おお、知ってる知ってる!!」」と僕とアデル。
「《俺は歌が歌えないんだ・・・どうか子供達に教えてやってくれ》」
「なに?」とカルロリナス。
グレゴルの子供たちが言う。
「胡瓜蛇、南瓜顔、茄子の蒲焼き、桃の種・・・メロディが分からない」
微笑んでアデルを見ると、「親父さんが教えてくれた歌だよな」と僕に言う。
「なんだか嬉しい」
「《そうか、そうか。頼む》」
ノックするような仕草でコン・コンとリズムをとる。
僕とアデルが歌った。
きゅうり へび~
かぼちゃ がお~
なす の かばやき
ももの たね!
・・・・・・ん?
「・・・あれ?続きなんだっけ?」
「しらたきがみ?」
「あれ?やばい、ごめん。思い出すのむずかしい」
グレゴルは意外そうにした。
「《このあと続きがあるのか》」
そこにリーリがふらふらとして神殿から出てきて、アデルが慌てて支えた。
リーリは微笑して、「召喚獣、取得したよ」と言って気絶した。
しばらく眠っていたし、誰も手出しなんてしてない。
むしろ戦いの予兆に、女子を巻き込んだ罪悪感がしていた。