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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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リオナルドミオの姫の子供



 なんと子供ができた?


 郵便鳥さんが今朝飛んで来て、手紙をくれた。


 郵便鳥さんが敬礼をしたので、思わず敬礼を返した。


 僕は手紙の送り元に眉をひそめ、郵便鳥さんにお礼を言って見送った。


 遠くに見える鳥影に空はこの日晴れていて、宛先は事実、僕に宛てたものだった。




 豪奢な金の縁取りのある便箋。


 内容を読んでみる。



【 私はレオナリドミオ王国の姫、ペインです。


  英雄カイト・オン・ジョニエルの子供を宿しました。


  彼が優良種だと思ったからです。


  どうか英雄の剣を持つ者よ、


  ドラゴンからこの国を守りたまえ 】



「子供ができたっ・・・?」



 旅の仲間がいっせいにこちらに振り向く。


 アデルが「誰とっ?」と声をあげる。


「父さんだよっ」



「「・・・ん?」」



「父さんがお姫様と子供作っちゃった、って!」


「「あ~あぁ」」


「まさかレオナリドミオ王国の姫と?」


「そのまさか、だ」


「行きたくねーー!!」


「なんか・・・その国、都合良すぎないか?」



「優良種だって。父さんのこと」


「「うんうん」」



「どうしたらいい!?」


「「分からない」」



「僕、弟か妹か分からないけど、会いに行きたいよっ」


 アデルが「だったらそれでいい」と言った。


 すると旅の仲間が、「うん」と返した。


「とりあえず朝食の続きをしましょぅよう。冷めますよ?」とカルロリナス。


「あ、ああ」



 森の中をエビの足で歩いていた白身の魚、オカムー。


 それを火であぶって、ハーブソルトをふりかけて食べた。


 僕はぼやいた。


「ハーブソルトじゃなくて、ただの塩がよかったかもなぁ」


 食べたあとで手紙を読み直してみようと思ったら、二枚目があった。



【 追記


  一枚目に書くのを忘れていました。


  15年間の妊娠の末、ようやっと臨月状態です


  ややの兄にあたるあなたにぜひ王国に来て欲しいです


  うわさでは黒竜の傷が癒えて再び災厄をもたらすと・・・


  どうか、姫の立場として城から出られないわたくしに


  あなたの見聞の旅をお聞かせ下さい。


  うまれて初めてわがままをしました。


  カイ・ラヴィンガーデン宛 ペインより 】



「僕はっ・・・レオナリドミオ王国の姫に会いに行く!!」



 その時、悲鳴のような鳴き声が辺りに響き渡った。


「何事っ?」とリーリがおびえている。


「なんだ、今の不気味な声・・・?」とアデルも少し動揺。


「あれは多分、グレゴルの亜種です」とカルロリナスが言う。


「亜種?」


「グレゴルは人語を解する猫猛獣よね?」とリーリ。


「人語を解するって、喋ったりするってことか?」とアデルはいぶかしそう。


「そのまさか、なんです」とカルロリナス。


「ん?」


 

 気配が近づいて来ているので、


 リーリは杖、アデルは弓矢、僕は剣、カルロリナスは持参のナックルを装備した。


 森の中全部が騒ぎだしているんじゃないかと錯覚しそうな風が木々の木の葉を揺らす。


 天候は曇り。



「もしかしたら雨、降るなぁ、こりゃ」とアデル。


「数は?」とリーリ。


「ざっと・・・20」と僕。


 カルロリナスが、「亜種は狂犬病なんです」と言う。


「「早く言えっ」」


 少し笑ったカルロリナスが、「ごめん、ごめん」と言った。


 だからひとりで旅は無理だなぁ、って思ってたんです、とぼやかれる。


「「なるほど」」と僕たちは共感。



 狂犬病って言うのは、奇病におかされた犬のこと。


 攻撃性が強く、人間をまるで恨むかのように襲う。


 今回はグレゴルの亜種で、グレゴルは猫猛獣。


 しかもやって来たその姿に、ボロボロになった翼を見つける。


 骨とかが飛び出ている。


 毛並みも悪く、所々がはげているし、生臭い匂いがする。


 口からはよだれをたらしているものもいるが、その液体すら有害。


 噛まれたら、人類はもれなく脳みそが浸食される。


 狂犬病にかかった人類は約15分で脳を浸食され、普通、死ぬ。



 猛毒のヘビに噛まれたら死ぬことがあるみたいなこと、らしい。


 カルロリナスにとっては亜種グレゴルの危険性は当たり前だったのだろう。



「カルロリナス、ひとりで旅に出なくてよかったな!」


 アデルが勝ち気に言い放つ。


「僕、僕は-・・・負けないっ!!」



「可愛さでは私のほうが上よっ」リーリが、亜種グレゴルを前に言う。



 カルロリナスが声を上げる。


「そんなこと言ってはいけません!グレゴルの亜種は喋れないだけで、聞けるんですっ」


「・・・どういう意味?」リーリ。



「グレゴルは、かつて人に飼われるために掛け合わせされた存在なんですっ」


「じゃあ、なんでこんな所にいるの?」


「捨てられて、魔物食べて変異したんですっ」



「・・・すまなかった!!」


 僕は思わず、グレゴルの亜種のボスに向かって土下座をした。



 アデルははっとして、


「グレゴルの亜種たちよ、俺はお前達より可愛いっ」


 そう言って、土下座に付き合ってくれた。



 数十秒、沈黙が起った。


 気配が消えていく。



「《お前達は通っていい・・・》」



「・・・え?」



 すっと、どこかへグレゴル亜種たちの気配がなくなった。


 カルロリナスが意外だ、と言う。



「戦って勝たないと通れないのかと思っていました・・・学ばねば」


「土下座って、ありえない・・・でも、今度こんなことがあったら・・・」



 リーリが言いかけて、僕が「大丈夫だ、これ以上言うな」と制した。



「なによっ、女だからって・・・」


「男と女は違うっ。男は夜のこと意外で女の服を汚させるの普通イヤなんだよっ」


「・・・え?なにそれ?聞いたことない」


「「男の秘密」」と僕たち。



「私は・・・本当に一緒にいてもいいの?」とリーリ。



「「それでいい」」



 涙を指先で拭いながら、「分かった」とリーリは答えた。

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