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英雄の剣物語ーヒーローズ・ソード・ストーリーー  作者: カイ・ラヴィンガーデン
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集落の名はケルトン


 集落だがけっこう立派な宿がある。


 巨木をくり抜いて作られた宿で、階段なんかも壁と一体化している。


 本棚も、ベッドの基礎も、くり抜かれた一本の木。


 里の、おそらく父さんが切り崩したんであろう樹を思い出す。


 宿の本棚に好みの本が特にないので、三冊、寄付をしたら喜ばれた。


 なぜ肉食巨鳥が街に出現したのか聞いてみると、空魚が原因らしい。


 なぜか一定の場所に浮遊をしているだけで、巨鳥の対処ができない、と。



 空魚、巨鳥、食べることできない。


 ・・・どこかで聞いたフレーズだ。



 そしてそれが里にいた頃の父さんの残したヒントであることを思い出した。


 集落のひとたちからの解決の依頼もあって、アデルと空魚の元へ。


 大きな網も持ってきていたので、魔法石指輪から出して、空魚を捕獲。


 空中を浮いている空魚たちを風船のように移動させる。


 アデルはそのあと、煙を吐いている地面の穴に岩でふたをした。


 数年に一度、吹き出してくる地面からの煙。


 その香りが空魚には心地良いらしく、どうもぼうっとしてしまう。


 空魚たちを集落の丘までアデルと一緒に連れて行く。


 網を解放すると、その頃には空魚たちは意識を取り戻しつつあった。


 今から食べられる・・・


 なんだか可哀想だね、とアデルとぼやく。


 牙を持った空魚は、お腹が空いているらしく鳥笛でやってきた肉食巨鳥を食べた。


 群れでの食事で通り過ぎる速さで巨鳥の骨格があらわになり、地面に落ちる。


 小魚化していた空魚たちの大きさがふくれあがっている様に感嘆の声が出る。



 ちなみに鳥笛とは、鳥が反応しやすい鳴き声に似た音を出す笛。


 集落のひとがくれた。



 さて草原に出たし、小荷物も持っている。


 次の旅に出ようか、って時に、アデルが悲鳴を上げた。


「なにっ?」


「いてぇ~っ・・・いてぇよう・・・あぁ・・・」


 丘には草がいっぱいで気配に気づくのに遅れた。


 アデルは毒ヘビにかまれて、僕は思わずヘビの頭を掴んで遠くに投げた。


 携帯していた粉末玉露を水に混ぜて傷口にかける。


「い・・・いてぇーーーーーっ」


 ものすごい叫びかたに、そして僕はその傷口にもぎょっとする。


 おかしな色に変化している部分が急速に浸食している。


「や、ヤバい!!まさか、猛毒のヘビっ?」


 ウィーザードボードを使うために指輪に意識しても反応しない。


「板で飛べない場所なわけっ!?」


「やべぇ・・・もらしそう・・・」


「ま、まて!集落に戻ってひとを呼ぶからっ」


 手頃な布で噛まれた足の関節近くを縛り、僕は全速力で集落まで走った。


 そして一番近くの家の扉を叩いた。


 すでに夜中、出てきたのは白魔女さんで、僕の話に驚いて薬酒をくれた。



 小荷物を抱え、治療のために一緒に行くと言ってくれる。


 草原に急ぎ、気絶しているアデルの傷口を白魔女さんが治療してくれた。


 正直もう、助からないなんじゃないかと泣きそうになるさまだった。


 白魔女さんは「癒やし魔法」を使いながら、特製薬酒で毒を抜いてくれた。


 僕と言えば、その三時間ほどの治療の間、ヘビやなんかに警戒する役割。



 面倒なので周りの草を拓いていた。


 何もしないよりはましだ、と思いながら。



 癒やし魔法を使った白魔女さんが、大量の汗をかいている。


 読み物で知っていたが、癒やし魔法は自分の命をだいぶ使う。


 三時間で、どれだけの分量なのかは分からないけど、白魔女さんに感謝した。



 アデルがぶたっぱなを鳴らしたあと、目覚めたからだ。


 そしてそれを聞いて、ふぃ~、と白魔女さんが汗を拭った。


 あまりにもアデルは普通に起き上がった。



「・・・あんたが俺を助けてくれたんかい?」



 一方白魔女さんは、身体をふるわせている。


「怒られるっ・・・」


 アデルははっとして、白魔女さんのローブの袖を勢いよくめくった。


 すると、青あざ。


 眼帯をしている彼女の片方の顔には、あざがある。


 アデルが滝壺で心配したのは、そのことだ。


 それはヘビの毒ではなく、人間がもたらした暴力の痕。


 白魔女さんは「このまま逃げたい」とぼやいて気を失った。



 ――

 ――――・・・朝方。


 草原を抜けたあと、ウィーザードボードを担架がわりにふたりが浮いている。


 白魔女さんとアデルを草原を切り開きながらおぶって進む作業を終えたってこと。


 森に入り、目を覚ました白魔女さんが、はっとして起き上がろうとした。



「大丈夫、このまま僕たちの旅の仲間になればいい」


「本当なの?」


「そうだよ」


「よかった。あなたたちなら、女の機能それでいいかもって思ったの」


「・・・いつ?」


「家の扉を叩かれる少し前、なぜかその時間、眠れなくて」


「何かの導きかもな」


 ふふ、と白魔女さんは可憐に笑う。


「何歳?」と僕。


「14歳」


「「ほ~・・・」」


「親が両方死んで、時々、親戚が家に来る・・・」



「「察した~。このまま旅に出ようぜ~」」



「本当なのっ?」


「「本当」」


「本気なのっ?」



「「本気」」



「私、名乗ったかしら?」


「「いいや」」



「リーリ・ララ・ティルナー」



「リーリでいいの?」


「それでいいわ」


「俺はカイ、そっちはアデル」


「聞きたいことがあるの」



「「何?」」


「娘のレンジィちゃんの名前の意味」



 アデルを見ると微笑していた。



「『最新』」


「ん?」


「電子レンジから来てるんだよ」


「ええっ?なに、それっ?」


 その場がなごんだ。


 リーリはアデルの命の恩人だから、もう、旅の仲間。


 僕的には、それでいいことだ。

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