序章
名は カイト・オン・ジョニエル。
父さんは英雄として界隈で有名なひとで、母と籍を入れていないので僕は母方の苗字。
英雄伝と共に、浮名もある父。
僕に弓矢や剣術をなんとなく教えてくれたあと、
散歩に行くと言ったきり、うわさでは放浪していて、事実行方不明中。
もしかしたら異母きょうだいがいるかもしれない現実に、僕はとりあずひとりっこ。
逸話では40人ほど子供がいる父。
仕事は何をしていたひとなのか、一緒に住んでいる時期聞いてなかった。
今でも本当のところ自分的情緒で謎のままだ。
僕は文字の読み書きは環境的にできる。
家にある本はたいがい読んだ。
そして物書きに憧れた。
身体の弱い母は風邪をこじらせて死んで、僕はひとりきり。
・・・そんな中、何をしていいのか分からなくなって・・・
そして父の聞かせてくれた冒険の話を思い出して、自分も旅に出てみたいと思った。
僕の名前はカイ・ラヴィンガーデン。
性別は男で、当時17歳。
里には身体の相手役がいたけど、旅には連れて行かない。
母さんの葬式に出席しなかった父を、少しだけ恨みそうになった。
僕は、そんな普通っぽいひと。
親戚のおばがニワトリに変身した、とか父にからかわれたのを思い出す。
なんでそんなこと思いつくんだろう?
物書きにあこがれてはいるものの、物語なんて全然思いつかない。
そんな折り、いつものように眠っている時に天啓があった。
内容はこうだ。
見聞の旅に出なさい。
村のひとたちに相談したら、嘘じゃないと思うと言われた。
村のひと何人もが、村からふたり見聞に出しなさいと夢を見たかららしい。
――・・ ・― ・・・―――― ・―
旅はすでに終えてあって、道中を客観的に書いていこうかと思う。
その件について、旅の仲間たちに合意を得て口出しをしてもらった。
下書きみたいな雑記はあるんだけど、そちらのことだ。
さて、どこから書き出していこうか、って今悩んでいる。
旅の少し前から日記を書くのが日課だったから。
内容を確認すると、記憶が妙に近かったり遠かったりする。
のんびり思い出にひたろうかと、今、机に向かっている。
今日はうららかで涼しい風の吹く日だ。
カーテンが風にゆっくりふくらんで、そして風を押し返したように見えた。
それだけで少し、安穏に幸せを感じる。
白いレースのカーテンが光を透して綺麗だと思った。
ああ、そうだ、旅路のことだった。
章に小分けして書いたほうが分かりやすかろうか。
とりあえず僕の冒険をペンに踊ってもらおうかと思う。
これは父が教えてくれた、作家のなまりらしい。