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スウィートカース(Ⅵ):流星観測・井踊静良の結果往来  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第三話「通過」
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「通過」(5)

 メガネ越しにふたりへ低温の眼差しを投げかけ、ソーマはつぶやいた。


「なぜジュズがここに?」


 ヒュプノスの前に割って入り、セラは必死に取りつくろった。


「いきなりはひどいよ、先生。話を聞いて。このジュズは敵じゃない」


「ジュズという単語の意味がわかっているのか、セラ?」


 ソーマの鬼気は本物だった。片手はポケットに入れたまま、硬い声で告げる。


「ジュズは存在そのものが世界の害悪だ。そいつらは未来で生物界の頂点に君臨し、人間を食って生きている」


「に、人間を……?」


 救いを求めるように、セラもヒュプノスへ視線を移している。


 やや間をおいて、なんと、ヒュプノスはうなずいて肯定した。


「〝竜巻の断層(トルネンブラ)倉糸壮馬くらいとそうま。我らの生態にずいぶんくわしいではないか」


「きさまらの情報は克明に記されていた。異世界の裏切り者、指名手配犯のメネス・アタールが残していった資料にな」


 ソーマの手首で、銀色の腕時計はにぶい輝きを照り返した。


組織ファイアはいま、現代に現れた特別製スペシャライズドのジュズを抹殺するために奔走している」


 そう言い放ったソーマの瞳を真っ向から見返し、ヒュプノスは反論した。


「我は嫌々ながらに、ホーリーの指示で人を栄養源にしていた。地球史上六度めの氷河期をむかえたあそこには、ほかにろくな食料もない。だが現代はちがう。刃の記憶の結果使い(エフェクター)よ。我に敵意はない。なんとか共存の道は探れないだろうか?」


「そうだよ!」


 声高に同意したのはセラだった。


「ヒュプノスは殺人鬼〝魔性の海月(ヴーゾンファ)〟の退治に力を貸してくれる! 自然の保護にだって前向きだ! だから先生! 結果呪エフェクトを収めて!」


「そこをどけ、セラ」


 鋭利な呪力の刃は、ソーマの全身から立ちのぼった。


「ジュズは人類を生態系ピラミッドから追い落とす捕食者だ。ほうっておけば、あっという間に地球は滅亡するぞ。いまここで始末しなければ」


 身構えながら、ヒュプノスは再確認した。


「話し合いの余地はない、ということだな?」


「質問なら、解剖後のきさまの内臓に直接聞く。いくぞ、ジュズ」


 ふたりの中間地点で、爆発が起こったのは刹那のことだった。


 灼熱した呪力の隕石が、窓ガラスを割って床に直撃したのだ。


「〝輝く追跡者(ヴェディオヴィス)〟……」


 あらゆるものがなぎ倒されたクレーターのそばから、セラはヒュプノスを起こした。


「ごめん! 先生! 逃げるよ、ヒュプノス!」


「わかった!」


 がらあきの窓から、セラとヒュプノスは夜へ飛び出した。

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