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6話 月光での生活


 接客を終えて、晩飯となるオムレツのセットを食べているとルカさんが同じ席に着いた。


「それで、どうして客であるがミカさん働いているの?」


「ミカでいいですよ。一応歳下ですし」


「そうか、なら私もルカでいい。冒険者だから礼儀なんかは気にするな」


 とりあえず、お客として接すのも面倒だと思いお互い普通に呼び合う事にした。


 それと私が働いている事が疑問に思ったらしく、私が依頼で働いていた事とルカさんの妹であるアルマさんがいない事について話す。


「そう、依頼でね……それにアルマを助けてくれてありがとう」


「いえいえ、運良く助ける事が出来ただけで、アルマさんの運が良かっただけですよ」


 そして、話しながらオムレツを食べると、オムレツはふわふわな出来で、口の中は蕩ける卵に絶妙な塩加減とトマトソースで幸せな感じになる。


 そんな風にオムレツを食べていると、ドタドタと足音が聞こえて従業員室の扉が勢いよく開いた。


「ヤバい!ヤバい!超遅刻したぁぁ!!」


 どうやらアルマさんが起きた様で、私を含めた全員の視線がアルマさんに向いた。


「アルマ!起きたのね」


 そう言いながらアリナさんはアルマに近づいて抱きついた。


「ちょ、お母さん!どうしたの」


「どうしたも何も、何があったかを覚えていないの?」


「ん?普通に寝坊したんじゃないの?」


 どうやら、アルマさんは自分に起きた事は夢と思っている様なので、自己紹介も兼ねて何があったかを説明すると「えっ!アレって夢じゃないの!?」と驚いていた。


「なるほど、ミカが……助けてくれてありがとう」


「いえいえ、助かったのはアルマの運ですよ」


 そう言うと皆苦笑いを浮かべて、雰囲気は和んでいった。


「それにして、夢じゃないならミカって相当強いんじゃないの?」


 アルマは純粋に聞くと、ルカもそれに同意した。


「ああ、多分だけど、私でも勝てるかどうか怪しいと思うところさ」


 "そうなのかな?"と疑問に思いながらそこまでに至った理由を聞いた。


「まずだけど、そもそも給仕の仕事の動きが尋常ではない。あの動きだけも体感や姿勢制御が私よりも高い事はわかるよ」


「えっ?お姉ちゃんよりも?」


「そう、私的には初見でミカがEランクって事を聞いたら、嘘だ!ってなるよ」


「うーん、そんなにおかしいかな?」


 そうミカは思っているが比較対象としているの相手がおかしいのである。


 ミカの比較対象となるのは軍神アレスに守護神アテナ、英雄ヘラクレスに同じく英雄オリオンと殆どが人外クラスの化け物達だからである。


「それで、依頼達成したのはいいけれど、明日は何の依頼を受けるんだ?」


「うーん、特には考えていないですね」


「そうか……」


「ん?どうしたルカ?」


 そう答える少し考えていたミカに食器洗いから戻って来たドルマさんが戻って来て会話に加わる。


「いや、ちょっと考えていてね……ミカ、良かったら冒険者ついでにここで働かない?無論ランクアップまでだけど」


「ど言ゆ事?」


 少し意味がわからなかったので思考が少しふにゃけた感じになったが、詳しく聞く事にした。


「いや、今回アルマが誘拐されかけて、それが今回で終わればいいが、現状黒幕が分かっていないから迂闊にアルマに買い出しをさせるのは少し危険に思うんだ」


「なるほど、アルマを誘拐されかけた事を知っていて、その誘拐犯供を返り討ちにしたミカはうってつけと言うわけだな」


 どうやらアルマが誘拐された事と、誘拐犯相手に返り討ちにした事が私を勧誘する事になったらしい。


「わかりました。午前中は無理でも午後からなら受けます」


 これを受けるのに理由が有り、まずこの都市で友好関係を築きあげれるチャンスである事。


 次に現状戦闘系の依頼をこなせないので、誘拐犯や恐喝をしてくる人が居れば、気にせず練習相手(実験体)になってくれるからありがたい。


 そして月光亭は宿泊場所なので、接客は客次第であるが、移動時間は殆どかからないので働きやすく継続して稼げる。


 この事から依頼を受けるのも悪くないと思い、この話を受ける事にした。


「そうか、ありがとう。これからよろしくねミカ」


「ええ、こちらこそ」


 そう言って私とルカは手を合わせるのであった。



︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦


 月光亭で働く様になって二週間が経ち、大体の生活が安定してきた。


 まず朝7時に大体起床して、月光亭には裏庭あり、そこに井戸がある事を知って私は着替えて、井戸に向かって水を汲み、その水で顔を洗う。


 顔を洗ってから裏庭にある小さいマンションの様な作りの建物にあるルカの部屋に向かう。


「ルカ、起きてる?」


 ルカの部屋の扉をノックして起きているかを確認するが、反応はなかった。


 反応が無いので扉に耳を寄せて部屋の音を盗み聞きすると部屋の中からはルカの寝息しか聞こえてこず、寝ている事を確認する。


「仕方ない【ライトボール】」


 光属の魔法で光の球を作ると、ルカの部屋の中に侵入させて、気配を辿りルカの元に辿り着くと次の一手を行う。


「【フラッシュバン】」


「うわ!めっ、目がぁぁぁ!!」


 先程出した【ライトボール】を爆発させて、太陽と同等の光量を2秒程浴びせると、部屋から大声が聞こえて来る。


 大声が聞こえてから数秒が経ちドタドタと足音が聞こえて扉が開かれる。


「おいミカ!、眩しいだろ!!」


「いや、これくらいしないと起きないじゃん」


 何故私がルカを起こしているかと言うと、一週間前。



︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦


 その日私は少し遅めに起きた朝、朝食を食べている最中にドタドタと勢いよく足音が聞こえる。


「ヤバい!寝坊した!」


 どうやらルカは寝坊をして急いでいるらしく、慌てていた。


「とりあえず、行ってくる!!」


 そう言って月光亭を飛び出して行き、再び静かになったので食事を再開して、朝食を食べ続ける。


 それから冒険者ギルドで情報収集やギルドにある雑用依頼のお使いをこなしたりして、午後になり月光亭に戻ってからは買い出しや掃除をこなしてあっという間に開店時間となった。


 開店してからも月光亭はそれなりに人が多いためアルマと一緒に接客をして普通くらいに捌けていた。


 途中からルカが帰っきたので、三人体制で接客をしてからは苦もなく接客をして、閉店時間になった。


 閉店してから私、アルマ、ルカの三人で食べているが、ルカには疲労によって疲れていた。


「はぁ、疲れた……」


「お疲れ様。朝から急いでいた様だけど結局ギルドの依頼はどうだった?」


「んなもん出遅たから、面倒で有名なスカイバードを5匹討伐する依頼を受ける羽目になったよ」


 スカイバードは鳥系の魔物なので、ゴリゴリの戦士職であるルカには難易度が高いのはよくわかる。


「お姉ちゃん、なら寝坊しなければ問題無いじゃん」


「アルマ、私にそれが無理という事は分かっているよな?」


「まあね」


 溜め息を吐いて少し落ち込んでいる、ルカを見ているとアルマが何かを思い出した様に目が開く。


「そうだ!ミカに起こしてもらうってのはどう?」


「ん?私?」


 唐突に選ばれた私に少し驚くき、ルカは首を横に振った。


「アルマ、一応ミカはお客だぞ?」


「でも、今は月光亭で働いているから同僚みたいなものでしょ?それにミカに起こして貰えば、最低でも寝坊する事は無いでしょ」


「それはそうだが……」


「別にいいですよ。起こす事くらい」


「え?良いのか?」


 何も問題無いので"良いですよ"と答る。

 ぶっちゃけ起こすくらいなら、そこまで労力は必要無いし、一応お世話になっているのでお手伝いと思えば苦は無いのである。


「それじゃ、明日から頼むよ」


「了解です」


 その日からルカを朝起こす日課が出来た。



︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦


 そして現在……


「もう少しやり方を考えてくれ……」


「じゃあ、普通に起きてよ」


「……」


 私がルカを起こす様になって一週間の間、ルカはドアのノックで反応した事が無い。


 ルカは朝寝起きが悪いらしく、普通に起こそうとしても無意味なのはわかっているので、魔法で起こす様にしている。


「とりあえず、準備をしたらどうですか?」


「……わかったよ」


 そう言ってルカは部屋に戻っていったので、食事場に向かい朝食食べる事にする。


「よお、ミカ。この時間なら昨日の残りのスープとパンがあるがどうする?」


 食事場に着くとドルマさんがいて朝食をどうするかを聞いてきたので、「それでお願いします」と頼む。


 この体は基本的に好き嫌いによる拒絶反応などは無く、何でも食べることが出来るの事からアリナさんの朝食を食べる事が出来て良い。


「それでは、いただきます」


 今日の朝食は昨日の残りであるシチューとパンで、昨日の残りでも味は落ちておらず美味しい朝食を食べる。


「ごちそうさまでした」


 数分ぐらいで食事が終わり食器をカンターに返却してゆっくりと冒険者ギルドに向かう。


 ゆっくりと冒険者ギルドに着くと、中はそれなりに人がおり、ほぼ全員が優良依頼の争奪戦に勝利する為、依頼掲示板を虎視眈々と狙っている。


 私の場合はどうでも良いので、適当に空いている席で待つ事にした。


 それから数分してギルドの職員が依頼掲示板に依頼を貼っていき、冒険者達の目は獲物を狙う猛獣の如く身を光らせ殺気が立っていた。


 そして依頼書を貼り終えた職員が受付に戻り小型の鎚を持ち、受付にある始業と就業の合図を知らせる鐘を勢いよく叩き、鐘の音が鳴る事で冒険者達は動き出した。


 動き出した冒険者達は雄叫びを上げ依頼に群がる、その勢いはスパルタ兵を彷彿させて、内心"うわぁ……"と思いながら眺めて落ち着くまで待つ。


 依頼書を入手した冒険者達は受付に向かい、依頼を受理して貰い、ギルドを出て依頼先に向かって行ったので、人が少なくなった依頼掲示板を見る。


 全体的に掲示板を見るとB〜Dランクの依頼はごっそりと無くなっていて、Aランクは冒険者自体が少ないので手はつけられていなくて、Eランクは初心者が受ける依頼が多い為、それなりに依頼はあるが、薬草採集系の依頼や街中での雑用依頼が多く余っている感じだ。


 私の場合はEランクである為、そこまで依頼に困る事は無いので、午前中で終わりそうな依頼を探して受ける事にする。


 依頼書を取り、受付嬢の元に持って行き受理してもらう。


「あら、今日も雑用依頼の方してくれるのね」


「そうですね、いつも通り午後からやる事があるので、午前中に終わる依頼は受けやすいですからね」


 受付嬢は私がいつも対応してくれる受付嬢で二週間も経てばそれなりに親しくもなっている。


 受付嬢の名前はスミレナさんと言って、元冒険の受付嬢らしい。


「そう言ってくれるとありがたいわ。多くの冒険者が討伐依頼や割の良い依頼ばかり受けているから、こう言った雑用依頼が塩漬け状態で困っていたところなのよ」


 案の定人気の無い依頼は塩漬けされているらしく、色々と大変そうであった。


「まぁ出来る限りは雑用依頼でも受けますから大丈夫ですよ」


「ありがとう。それと依頼を受理したから行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 そう言ってギルドを出て依頼先に向かう。

 今回受けた依頼は屋根の修理依頼と鍛治屋の掃除その他も同じ様な依頼で、塩漬けされるのも納得と思えた。



︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦


 それから4時間近くかけて受けた依頼全てを終えてギルドで依頼達成の報告を受けて、月光亭に戻りドルマさんに今日の仕事内容を聞く。


「よう、ミカ。ギルドの依頼は終わったのか?」


「はい、今日の依頼を終えたのでこちらの手伝いに入ろうと思います」


「わかった。とりあえず今日の買い出し分は書いておいたからよろしく」


「了解しました」


 そう言ってドルマさんから買い出し品の書かれていた紙を受け取り商店街に向かった。



 商店街についてからまず向かうのが、リーゴンド商会と言う主に食品系の依頼を扱うに関してはこの都市内だと一番とも言える商会だ。


「よお、嬢ちゃん。今日も買い出しか?」


「はい、今日はジャガイモ、とうもろこし、キャベツ、にんじんを中箱でそれぞれ一箱と白パンと黒パンをそれぞれ二箱、スカイバードの肉を10匹分、岩塩5キロと胡椒を1キロをお願いします」


「あいよ、変わらずすごい量だから準備しておくから少し待ってくれ」


 そう言って店員が店の奥に行ったのでその間、ちょっとした()()を済ませて待つ事に。


 それから30分くらいで準備を終えた様で、店員の元に向かう。


「準備終わったぞ、金額は金貨5枚(50万円)になるけどいいか?」


「大丈夫ですよ」


 そう答えて金貨5枚を支払い、小袋に食材を入れる。


「んじゃ、次回もよろしくな」


「はい、よろしくお願いします」


 その後他に必要な物の買い出し用事を済ませて、月光亭に戻る。



 月光亭に戻ってからはアルマと一緒に掃除や料理の仕込みをして準備をする。


 準備はそれなりに忙しいので時間が掛かったが、開店時間までには余裕で間に合った。


「「いらっしゃいませ!」」


 開店と同時に来る客をアルマと一緒に迎え入れて、今日はそこそこの数の客なので手伝いは楽に終えた。


今月に2話投稿できるよう頑張ります(未定)。

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