5話 接客
月2投稿になりそう(小並感)。
私はギルドを後にしてから月光亭に戻りギルドでの話を含めてドルマさんとアリナさんに伝えた。
「そうか……娘助けてくれてありがとう」
ドルマはそう言って頭を下げて感謝を述べた。
「それで、アルマを誘拐しようとした奴らは依頼で攫おうとしたのか?」
「そうですね、依頼がどうこう聞こえたのでおそらくは」
ドルマはアルマが依頼で誘拐されそうになった事を告げると少し難しい顔をして考えていた。
「あ、それとアルマさんが買い出しで頼まれていた物と追加の買い出し分を買っておいたのですがどうしますか?」
ギルドの帰りにそのまま直で帰らず、ギリギリで追加の買い出し分が購入出来たので買って来たのである。
「買えたのか?」
「ギルドの帰りにギリギリと言った感じです」
「それはありがたい。アリナ食材を入れる場所はあるか?」
「ええ、あるわ。こっちに持って来てくれる」
「わかりました」
そう言ってアリナさんに連れられて厨房の食材庫にやって来る。
「それじゃあ、ここに食材を出してちょうだい」
「わかりました」
アリナの指示に従い食材庫に置いてある机に食材を出す。
出した食材をアリナさんは確認して頷く。
「うん、問題無いみたいね。私は食材を整理するからドルマのところに言ってくれるかな」
「わかりました。何か手伝いがあれば手伝いますので読んでください」
そう言って私は食材庫を出て再びドルマさんの元にやって来る。
「戻ったか」
「ええ、アリナさんの方は大丈夫らしいのでこちらに来ました」
「そうか……」
そう答えるとドルマさんは少し考え始めて口を開く。
「ミカ、すまんが今日の接客を手伝ってくれないか?」
「接客ですか?」
「ああ」
ドルマさんに聞くとこうだった。
今日は土の日と言って、地球の曜日で金曜日らしい。
ちなみに曜日はこの世界では闇火水風土無光の順で月火水木金土日となっている。
そして土の日はとても忙しい日で、地球の金曜日と同じで次の日が休暇と言う人が多い為に、多くの人が月光亭に訪れると言う。
人数で言えば他の日の1.5倍近い数な為、いつもよりも忙しいらしい。
そしていつもの月光亭ではもう一人の娘であるルカさんが帰って来るまでの間はアルマさんとドルマさんで何とか捌ききっていたらしい。
ただ今日の場合アルマさんは恐怖で疲れた為か未だ寝ていて、ドルマさん一人では捌ききれないのである。
そこでアルマさんの代役に私を選びたいと言う事らしい。
「うーん、別に構いませんけど良いのですか?ほぼ素人の私が接客しても」
そう聞くとドルマさんは笑顔で答えた。
「何、嫌な顔をせずに客に迷惑が無ければ何も問題無いさ」
「そうですか、わかりました。受けることにします」
「おう、よろしくな」
こうして私は接客をする事になった。
︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦
日が暮れ始めゴ〜ン、ゴ〜ンと18時の時報がタルタスの街に響く。
それと同時に月光亭は開店して、忙しい時間の始まりであった。
「いらっしゃいませ、注文はどうしますか?」
まず、開店と同時にやって来た冒険者であろう男が四人入店したので注文を受付で受ける。
「そうだな、まずは酒はエールで飯は酒飲みセットで全員分よろしく」
「わかりました、では銀貨5枚になります」
「おう」
男達のリーダーが銀貨を払い、空いてる席に向かう。
そして直ぐに私は厨房に居るドルマさんとアリナさんに注文を伝える。
「アリナさん、酒飲みセット四人分お願いします!ドルマさんはエールの方を準備してください!」
厨房でも聞こえるように伝えると「了解」と返ってきたので受付の方に戻る。
すると直ぐに次の客が来たので応対する。
「いらっしゃいませ、注文はどうしますか?」
「いや、先に身体を拭きたいからタオルと部屋の鍵を貰いたい」
次の客も男であるが一人で、体格からしてソロの冒険者の様だった。
そして男は先に体を拭き汗を拭いておきたい様でタオルと部屋の鍵を要求される。
「わかりました。お名前確認して良いですか?」
「リフトだ」
そう答えられたので宿屋の客名簿を確認して、名前があるかを確認し、リフトと言う名前を見つけたので、その人の部屋番号を確認して、鍵を棚から取り出して鍵を渡す。
「後でタオルをお持ちしますのでしばし、お待ちください」
「わかった」
そう言った鍵を受け取った男は自分の部屋に向かっていったので、ドルマさんにタオルはどうすれば良いのかを聞く。
「ドルマさん!体を拭くタオルってどうすれば良いですか?」
「客用のタオルか?それなら受付の所にある桶にお湯を入れて、付近にあるタオルの入っている棚があるから、そこのタオルと一緒に持っていってくれ!」
「わかりました」
「それとそこにあるエールもついでに持っていってくれ」
「わかりました!」
そう言ってカウンターに置いてあるエールの入ったジョッキを持って先程エールを注文した客の席に運ぶ。
その間溢れない様注意しながら、数秒で席まで運び客に届ける。
「お待たせしました、ご注文のエールです。酒飲みセットはあと少しお待ちください」
「おう、ありかどな」
エールを届けて私は即座に受付の方に戻り、タオルの準備をしていると次の客がやって来る。
「いらっしゃいませ、ご注文はどうしますか?」
「そうね、今日のオススメは何かしら?」
そう聞いてきたのは冒険者の女性で後ろにはパーティーメンバーと思える人が数人いた。
「そうですね、今日はオムレツのセットがオススメですね」
事前にアリナさんに今日のオススメのセットを聞いていたのでそう答える。
「そう、それならオムレツのセットを五人分お願いね」
「わかりました。では銀貨二枚になります」
「わかったわ」
そう言って女性は銀貨を二枚支払う。
「それでは空いている席にどうぞ」
そう聞くと女性達は受付を後にして席に向かう。
受付を終えた私はタオルの準備も終えて客の部屋に向かい扉をノックする。
「タオルをお持ちしました」
「わかった、今受け取る」
そう言って扉が開き、上半身裸の状態で男が出てくる。
「こちらがタオルとお湯になります」
「ありがとう」
タオルを受け取ると再び扉が閉まったので即座にカウンターの方に向かう。
「アリナさん!カウンターにあるのは酒飲みセットで間違いないですか?」
「ええ、あっているわよ!」
「わかりました。それとオムレツのセットを五人分お願いします」
「わかったわ」
そして私は酒飲みセット四人分を持って(防御魔法をトレー代わりに)客の方に向かう。
「お待たせしました、酒飲みセットです」
「お、おう、ありがとう」
「では」
そう言って私は受付に戻ると2グループが待っていたので直ぐに対応する。
「すみません、お待たせしました。ご注文はどうしますか?」
「無論エールを十人分と酒飲みセットも十人分頼む」
その注文をしたグループは冒険者とは服装が違うが、体格は冒険者にも劣らない体格をして、尚且つほんのりする土の香りから土木作業員と予想した。
「それでは大銀貨1枚と銀貨2枚、大銅貨5枚になります」
「おう」
そう言って男は大銀貨1枚と銀貨3枚を渡された。
「はい、お釣りの大銅貨5枚になります」
「ありがとよ」
「それでは空いている席にどうぞ」
そう言うと土木作業員のグループは空いている席に向かい、次の対応をする事になる。
そして、これはまだ開店して5分の出来事なので、客足はどんどんと加速していき、混雑になるのだった。
︎♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦
開店して1時間が経過したくらいかに、ルカさんが返ってきたのか厨房の方からやって来る。
「あ、ルカさんですか?お疲れ様です」
「あ、いや、うん、お疲れ……」
ルカさんに挨拶を終えると私は即座におかわりの注文や宿屋の方の客の対応が少々追いつかなくなって来たので、身体強化の魔法や防御魔法を駆使して配膳をしたり、机を拭くときは一括で拭けるよう【浄化】の魔法をかけて掃除していく。
「いや〜、お客が多いので対応が難しいですね!」
「ちょっと待って、今日のお客の量いつもよりも多いからね!」
そう月光亭は基本的に混雑している時でも基本的に二人で対応できるくらいである。
しかし、現在は宿屋の方で数人が待機して、配膳が少し追いつかないくらいになっているのである。
「そうなんですか、それなら宿屋の方の対応をお願いします!待ちが三人とタオルの待ちが5番に二つと8番に一つお願いします!」
「ちょ、一気に言われても困るよ!」
そう言いながらルカさんは即座に対応する為に受付に向かった。
「そこの嬢ちゃん、注文いいかな?」
そこに土木作業員達の座る席から追加の注文が来たので対応する
「はい、どうぞ」
「エールをジョッキで後五杯頼む」
「了解です、それでは銀貨1枚と大銅貨2枚、銅貨5枚になります」
「おう、お釣り貰うのも面倒だから釣りは取っといてくれ」
「わかりました、それでは少しお待ちください」
銅貨5枚貰ったのもアレなんで少し早めに届けれる様にドルマさんにエールの注文を行う。
「ドルマさん、エール五杯追加お願いします!」
そう言って私はエールの追加注文をして、ドルマさんが準備している間に受付で先程タオルを持っていった男がいたので対応する。
「はい、お待たせしました。注文は何ですか?」
「ああ、鳥王山セットを頼む」
「わかりました、大銀貨5枚になります」
「わかった」
そう言って大銀貨を渡されたので、空いている席に誘導した。
誘導して即座に厨房に注文を届けた。
「アリナさん、鳥王山セットを一つお願いします」
「わかっ……え?」
何かに驚いた様でアリナさんはこちらに聞きに来る。
「本当に鳥王山セットを頼んだの?」
「ええ、確かに鳥王山セットと」
少し考えると「わかったわ」と言って厨房に戻って行った。
「ミカ!そこのエールを持っていってくれ」
「わかりました!」
そしてエールを五杯を土木作業員達の所に持っていく。
「お待たせしました、ご注文のエールになります!」
「おう、ありがとうな」
そんな感じで、他の注文を受けたり、料理を運んだりとして20分ほどか経ち、それは現れた。
「えっと、これは?」
カウンターに置かれたのは鳥が丸々3匹それぞれ丁寧に味付けされて、そこに鳥のササミサラダが山盛りが付いている。
「それが、鳥王山セットだから持っていってあげて」
アリナさんが疲れながら答えて、私は意識を切り替え鳥王山セットを持っていく。
運ぶ道中もその量に他の客も皆引いていて、"ですよねぇ"と思いながら注文した男の所に辿り着く。
「大変お待たせしました、鳥王山セットになります」
「ありがとう」
運び終えて気になりはしたが、私は直ぐに次の注文や料理を運ぶ事に集中した。
それから15分ほどしたのか、男は鳥王山セットを食べ終えていたのだった。
「ふぅ……美味かった」
その光景に客が全員驚愕して、少し騒ついていた。
「えっと、体調とかは問題ありませんか?」
「大丈夫だ、問題無い」
どうやらアレだけ食べても体調は何も問題無い胃袋の持ち主の様で平然としていた。
「料理人に"美味かった"と、言っておいてくれ」
「わかりました」
男はそう言って部屋に戻っていった。
それからはこれと言った出来事も無く、夜中の閉店まで接客をして、依頼を終えたのであった。
ちなみに鳥王山セットは塩、タレ、ヤンニョムチキンの様なピリ辛ダレの三つの味付けが幼体のホワイトバード(鶏に類似した魔物)を三匹それぞれの味付けで一匹づつが大皿にある野菜を下敷きに三匹乗っていて、そこに更に鳥のささ身サラダ(本場のではなく日本の中華料理屋でよく食べる(個人の感想)キュウリなどの野菜が下に敷いてある棒棒鶏)が山の様(大食いとかの量)なのが付いたセットになっている。
大牧さんたん
「普通は完食するの一人じゃ無理だと思う(井の中の蛙大海を知らず)」