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1.彼女は真中

 高校生男子の真中まなか 健吾けんごには、好きな子がいた。同じクラスの宮田みやた 聡美さとみという端正な顔立ちをした女子生徒だ。

 今朝、健吾が学校に登校すると、聡美と出会う。

「おはよう、宮田さん」

「真中の分際で声かけんな」

 嫌っているのかはわからないが、聡美は健吾にそう吐き捨て、去っていく。

「ちょっと待ってよ」

 上履きを履いて追う健吾。

「なんでついてくるのよ?」

「だって、同じ教室だから……」

「反対から行けばいいでしょ!?」

「でもこっちのがちか——」

「ああ! もう! あんたと一緒に歩きたくないのよ! そのぐらい察しなさい!」

「なんで宮田さんは僕にそんな態度なの?」

「鏡見て確認したら? あんたきもいのよ」

 ルックスの問題だった。

「そんなこと言わないでさ」

「うるさいわね! 突き落とすわよ!」

 階段を昇っていた聡美が立ち止まって振り返る。

「きゃ!?」

 足を踏み外し、聡美が転げ落ち始める。

「宮田さん!」

 健吾が聡美を捕まえようとするが、巻き込まれて落下する。

「痛……!」

 痛みに頭を押さえながら、聡美は起き上がる。

「え?」

 聡美は健吾の顔を見て疑問符を浮かべる。

(なんで僕がそこに?)

「いたた。もう最悪。あんたの……って、なんで私がもう一人いるのよ?」

 健吾が起き上がって聡美を見る。

「もう一人って、君は宮田さん?」

「そうよ。って、何よこの体!?」

「どうやら僕ら、落下の衝撃で入れ替わっちゃったみたい」

「みたいじゃないわよ。どうしてくれるのよ?」

「わからないよ。僕に聞かないで」

「本当に最悪。よりによって真中と入れ替わるなんて」

 苦虫を噛んだような顔をする健吾の姿をした聡美。

「いいこと? 戻れるかどうかわからないけど、あんたは私のフリをするのよ」

「う、うん……」

 健吾の姿をした聡美は、立ち上がって階段を昇っていく。

 一人取り残された聡美の姿をした健吾は、今の体を改める。

 長い髪。

 膨らみを帯びた胸。

 そして違和感を覚える下半身。

「な、ない……」

 そこへ精悍な顔立ちをしたクラスメイトの赤城あかぎ 悠二ゆうじがやってくる。

「聡美さん、そんなところに座り込んで何をやってるの?」

「ああ、赤城くん」

 聡美は立ち上がる。

「実はかくかくしかじかで」

「君は本当は真中で、宮田さんと入れ替わってるって?」

「うん」

「からかうのやめてくれ」

「本当なんだって!」

「本当だとして、どうするんだ?」

「どうするって?」

「俺の彼女が宮田ってことだろ」

「え!? 赤城くん、宮田さんと付き合ってたの?」

「その様子だと本当に入れ替わってるみたいだな」

「悠二!」

 健吾が階段を駆け降りてきた。

「えっと、真中の姿をした聡美さん?」

「事情は把握してるみたいね。そうなのよ。よりにもよってこんなやつと入れ替わるなんて」

「こんなやつって、真中はいいやつだよ」

「生理的に受け付けないのよ! さっきトイレで鏡見て吐いたわ」

 健吾は真っ青な顔をしながら言った。

「聡美さん、本当に嫌いなんだね……」

「僕は宮田さんのこと好きだよ」

「きもいんですけど」

 健吾と聡美の会話の傍らで悠二が苦笑していた。


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