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転生のおと  作者: 津多 時ロウ
第1章 紙月
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第4話 ボク④

「はーい、では今日は約束通りお金のお話をしますよー」


「はい、今日もよろしくお願いします」


 今日のボクの眠気は大丈夫なようだ。


「良いお返事ですね。ところでお買い物をしたことはありますか?」

「……」

「そうですよね、無いですよね」


 また喋る前に言われてしまった。やっぱり心が読めるのだろうか?


「お買い物をするときには、貨幣と呼ばれる銅貨、鉄貨、銀貨、金貨を売り物と交換するのが主流です。

 その名前の通り、貨幣はそれぞれの金属を加工して作られています。

 我が国で現在使用されているこれらのお金は、王家が厳しく管理する貨幣鋳造所(ミンツェ)という工房で作られています。

 国が貨幣を作る前は、バラバラだったので、お店は受け取るたびに重さを量ったり、ときには見た目が金でも中身が銅で出来ているなどの偽物が出回ったりしていました。あとは、持っている貨幣が、どれくらいのものと交換できるのか分かりづらくて大変だったそうです。

 国がバラバラの貨幣を回収し、代わりに、同じ大きさの貨幣を作って流通させたことで、商売がとてもやり易くなったのです」


「はい、先生。貨幣が割れてしまったら使えなくなってしまうんですか?」


「今日も良い質問ですね。

 ミンツェでは古くなった貨幣を材料にして、また新しい貨幣に作り直しています。

 そうしないとすり減った古い貨幣の価値が下がって、また混乱してしまいますからね。

 住民が沢山いるような大きな町には、古い貨幣を新しい貨幣に交換してくれるミンツェの出張所があって、破片がすべて揃っている場合は、新しい貨幣に交換してくれますよ」


「破片が揃わなかったらどうなるの?」


「破片が足りない場合は、それだけでは交換してもらえませんが、例えば銅貨の破片が足りないのであれば、足りない分の銅を一緒に持ち込めば貨幣と交換してくれるそうですよ。

 詳しい話はまたインターナートで教えてくれるでしょうから、一つだけ大事なことをお話します。

 それは、何かを買いたいときに必要な貨幣の数は、同じものでも変わっていく、ということです」


「ねえ先生、どうして変わるの?どうして?」


「そうですね、この国で2番目に多く栽培されている葡萄で、その中でもよく市場で売られているものを例にしてお話します。

 収穫の時期にこのよくある葡萄を一房買おうとすると、覚えているものだと銅貨15枚から20枚くらい必要でした。枚数の違いは一房の大きさですね。少し萎びてしまっているものは半分くらいです。大体どこのお店もそれくらいで買うことが出来ますね。

 ところが、収穫の時期なのにこの葡萄を買うのに銅貨40枚以上必要な年もありました。なぜだか分かりますか?」


「はい、せん……」


「はい、そうですよね、分かりませんよね」


 先生、心を読んで先に対応しないでください。


「理由は二つありました。

 一つは葡萄があまり実らず、収穫できた量がいつもの年よりも少なかったこと、もう一つの理由は、その前の年に銅をたくさん採掘できる鉱山が発見されて、次の年から本格的にそこの銅が出回り始めたことで、銅の価値が下がったからです」


「うー??? うーん???」


「少々難しかったですかね。これは大人になってお買い物をたくさんすれば何となく分かってきますよ」


「分かりました。大人になったらたくさんお買い物します!」


「ハハハ、ちょっと違うんですけどね。あ、もう時間ですね。それではまたお会いしましょう」


「先生、今日もありがとうございました」




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