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転生のおと  作者: 津多 時ロウ
第1章 紙月
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第3話 ボク③

「でーわー、本日はこの国の仕組みとお金の話をします。詳しい話はー、インターナートで教えーてくれるので、基本的ぃーなことだけおー話しますね」


 この先生はボクが眠たくなってくると、いつも変な抑揚を付けて喋り始めるのだ。

 今日は最初からこの調子だから、相当眠たそうな顔をしていたに違いない。

 いけない、いけない、真面目に聞かなければ。


「この国は王様が一番上、宰相が2番目に偉く、その下に有力貴族が色々なことを話し合って決める諸侯会議という会議があります。君の伯父さんは宰相だから、この国で2番目に偉いんですね」


 変な抑揚が無くなったから、眠そうな顔ではなくなったんだな。

 それにしても伯父さんは2番目に偉いのか。凄いな。


「王様と宰相が偉いと言っても、普通は諸侯会議で話し合って決めたことを王様に奏上して、王様が良いと言ったことだけを実行するんです。王様だけで決めることも出来ますけど、よほど緊急のときだけですね」


「はい、先生」


「はい、何でしょうか?」


「宰相はどんなお仕事をするんでしょうか?」


「はい、良い質問ですね。眠気も取れたようですし良い傾向ですよ。宰相のお仕事は王様から相談されることです。それから王様が病気のときに、臨時で王様の代わりに諸侯会議で決めたことの良し悪しを判断します」


「それはつまり王様と同じくらい偉いということですか?」


「違います」


「……」


「違います」


 次の質問をしようと思ったら、口を開いてすらいないのに否定されてしまった。

 この先生は心が読めるのだろうか?


「では質問が無いみたいなので、授業を進めますね。

 今度は王族や貴族が領地をどうやって経営……、うーん、言葉が難しいかな。どうやって治めているかお話します。

 領地が小さい貴族は家族だけで治めていけますので、領地が大きい貴族のお話ですね。

 領地を持っているからと言って、貴族が何もしなくて良いわけではありません。

 まずは税の徴収ですね。税は決められた日に納めることになっていますが、受け取る人や中身を確認する人が必要です。ただし、王様や領主に直接持ってくるとなれば、何日も行列が出来てしまうでしょうし、行列を待っている民にも大きな負担がかかってしまいますね。

 次に、領地には沢山の民が住んでいますから、町長や村長から問題がないか聞いて、問題があれば解決するように努力します。川の水や土地の分け方、商売のやり方などで民が喧嘩をしてしまったりしたときに、両方の話を聞いてどのように解決するか決めなければならないのです。

 また、熊などの恐ろしい野生動物が町や村の近くに住み着いてしまったときや、犯罪者からも民を守らなくてはいけません。

 更には他の貴族の領地との境目に住んでいる者同士が喧嘩してしまった場合には、相手の貴族とも話をします。

 このようなことをしなければ、民が安心して住めなくなり、領地からどんどん逃げ出して、領地が立ち行かなくなってしまいます。

 そして、領地が広ければ広いほど領主とその家族だけでは人手が足りなくなってしまい、領地は発展できません。沢山有る問題の一つ一つを少ない人数で対応していたら、とても時間がかかってしまうわけですね。

 そこで、領地を区分けして、大事なこと以外は信頼できる人に任せて、何かあればその人たち、クニヒトと呼ばれているその人たちに、領主が経営を委任し、ときには指示を出す仕組みが出来上がりました。

 今でも大貴族が民と触れ合うことはありますが、通常はクニヒトが税の徴収、任された領地の防衛、犯罪者の取り締まり、町や有力者との交流などを行なっています。

 クニヒトにも給金を支払わなければならないので、領主の収入は減りますが、領地の発展のためには欠かせないため、沢山のクニヒトが任命されています。

 ……おーやあー?

 すみません、少々興奮して長く話してしまいましたね。

 お金の話はまた今度にしましょう」


「ふぁーい、ありがとうございまひた」


 先生が雄弁に語っているのに比例して、ボクの眠気もどんどん高まってしまったようだ。




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