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転生のおと  作者: 津多 時ロウ
第1章 紙月

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第19話 ワタシ④

[1594年1月某日]

 娘が1歳になりました。

 生まれてから7ヶ月経ちました。

 産まれた年が0歳で1月1日になると皆1つ歳を取るのでややこしいです。

 子供が小さいときは数ヶ月のずれで成長が変わるので、5歳くらいまでは産まれてからの月数で数えることが多いですね。

 娘はハイハイするのが大好きなようで、今日もとても元気にハイハイしてました。

 たまに頭を壁や家具にごっつんこするのが心配ですが、とても元気で健康に育っています。

 今年1年、家族がみんな無事でありますように。


[1594年2月某日]

 今日で開店してから半年経ちました。

 最初の頃は誰も来ない日があるととても不安でしたが、魔物が多く見られるようになってから傭兵の皆さんは大忙しのようで、お店の経営はとても順調です。

 傭兵組合に加入する人も年々増えているようですから、今後も常連さんが増えるように頑張っていきましょう。


 最初の頃と言えば、今となっては笑い話ですが、開店してしばらくは看板を出すのを忘れていました。扱っている商品が物騒な物なので扉も閉めていましたし、初日の2人はどうしてここが武器防具屋だと分かったのでしょうかね。


[1594年4月某日]

 娘がお熱を出してしまったので、急遽お店を休みにして妻と二人で看病しました。

 妻が薬屋で買ってきたギューテ印の赤ちゃん用熱冷ましが効いたのか、ワタシの祈りがギューテ様に通じたのかは分かりませんが、夜半には熱が下がりスヤスヤと幸せそうに眠っていました。

 こういうときの妻はいつにも増して頼りになります。


[1594年8月某日]

 開店から無事に1年を迎えることが出来ました。

 贔屓にしてくれる傭兵の皆さんも増えましたし、職人さんからもご好評を頂いています。

 商人組合の委託販売の保証もなくなりますので、ここからが本番かも知れません。

 仕入れ代金を先に支払うようになるので、資金繰りに気を付けなくては。


[1594年11月某日]

 ワタシの自慢の妻が2人目を妊娠したようです。

 今度もきっと天使のような赤ちゃんが産まれてきてくれることでしょう。

 1人目のお転婆は元気に歩き回れるようになりました。

 この子はきっと誰よりも速く走れる大人になるに違いありません。


 それにしても妻には感謝しかありません。

 今度お店においてある一番高い品物でもプレゼントしてみましょうか。

 一番高いのはキュイラス(胸甲)かな。装着できますかね。


[1594年12月某日]

 アイゲントーマが久しぶりにワタシのお店に来て下さいました。

 内装と陳列を褒めて頂けてほっとしました。

 一人前の商人として認められた気分です。


 そろそろ今年も終わりますが、良い1年だったと思います。

 来年も良い年でありますように。


[1595年1月某日]

 娘が2歳になりました。

 生まれてから19ヶ月です。

 ワタシのことをたまにパパと呼んでくれますが、まだ、マンマということの方が多い気がします。

 なので、娘と一緒にいるときは出来るだけパパと言うようにしました。

 妻には負けていられません。

 

[1595年4月某日]

 数名で組んで活動している傭兵さん達が、お揃いの防具にしたいとのことで、久しぶりに大口の注文がありました。

 実家からも大口の注文があれば良いのですけど、大きな貴族は職人さん達に直接注文するか召し抱えるので商店には来ないんですよね。


[1595年5月某日]

 今日はスヴァンさんという50歳くらいの方が来店されて、傭兵を引退するので使っていた武具を買い取って欲しいというご相談をされました。

 今までご要望が無かったので買い取りはしていませんでしたが、状態の良いものなら補修し、他の物より安くお店に並べれば、お財布が寂しい傭兵さんに喜ばれそうです。

 うん、ワタシ決めました。今日から買い取りも始めましょう。

 買い取りについて思案していると、そのスヴァンさんがまじまじと見てくるので尋ねたら、父上と、父の兄上、つまり早世した先代の領主であるワタシの伯父上とも少し面識があるらしく、縁者かどうか聞くことを迷っていたとのこと。

 ちなみにワタシは伯父に似ているそうです。伯父上は大変聡明な方だったと聞いておりますので、少し嬉しくもあり、敬愛する父上ではないのが少し残念でもあります。


 それからスヴァンさんは神石、確か何年か前に使い道が見つかって魔石という名前になったんでしたっけ、の買い取りも所望されていましたが、残念ながらワタシには価値も使い道も分からないので、丁重にお断りしました。何に使えるんでしょうか?


 今日も良い日でした。




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