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転生のおと  作者: 津多 時ロウ
第1章 紙月

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第18話 ワタシ③

[1593年6月某日]

 今日はとてもお目出たいことがありました。

 愛しの我が妻が無事に女の子を出産したのです。

 お産で死ぬこともあると聞いたことがありますから、とてもとても心配でワタシが倒れてしまいそうだったんですけど、産婆さんによれば二人とも問題が無いみたいです。


[1593年7月某日]

 愛しの我が妻が出産して1ヶ月が経ちました。

 妻は出産の後しばらくは疲れ果てていましたが、ワタシが腕によりをかけた料理をモリモリ食べて今はすっかり元通りです。心なしか出産前より太っ……、いえ、ふくよかになった気がします。

 それにしても赤ちゃんは可愛いですね。

 ワタシの祖父も子供が大好きだったと言いますから、その血を受け継いでいるのでしょう。

 仕事でどれだけ疲れていても、赤ん坊と愛しの我が妻の顔を見れば、一瞬で幸せになります。


[1593年7月某日]

 今日は自分のお店を出すのに、とても良さそうな物件が見つかりました。

 なかなか条件にあう物件が無かったんですが、物件探しで通っていた地主さんが近々空く店舗用の物件があると教えてくれて、早速見に行って即決しました。

 賑わっている中心街からは少し離れますが、傭兵組合のすぐそばにあるので、武器と防具の商いとしては良い立地だと思います。

 今の店子さんはもう歳で跡継ぎもいないので、お店を畳むのだとか。

 現在は日用雑貨を販売していますが、棚を入れ替えれば武器や防具も陳列出来そうです。

 ワタシはご縁に恵まれてるなと改めて感謝した1日でした。


[1593年7月某日]

 今日がアイゲントーマのお店で働く最後の日でした。

 お店がうまく行かなかったらいつでも戻ってきて良いよ、と言ってワタシを送り出してくれましたが、そうならないように頑張らなければと決意を新たにしたのでした。

 ありがとうございました。商売を成功させて恩返しいたします。


[1593年8月某日]

 明日はいよいよワタシのお店の開店日です。

 8月は別名を星の月と言って、新しい挑戦を始めるのに良い月だとされていますから、良い時期です。

 本当は6月の商売の月が良かったんですが、物件も見つからなかったし、気持ちを入れ替えましょう。

 開店準備は愛しの我が妻も手伝ってくれて、陳列と在庫置き場の整理も無事に終了しました。

 商品を先に陳列して、売れたら職人さんたちに代金をお支払する委託販売という方法にしました。

 商人組合が資金が乏しい駆け出し商人のために、他の組合と掛け合って作ってくれた仕組みです。

 商人組合に保証金を納入しないといけないので、その分、ワタシの儲けが減ってしまいますが、資金が心許ない上に、ある程度の種類を揃えないといけないので助かります。


[1593年8月某日]

 今日はワタシのお店の記念すべき開店の日でした。

 傭兵風の2人だけ来客がありまして、革籠手と革のブーツ、大型のナイフなどが売れました。

 それからキュイラス(胸甲)の補修と直剣の砥ぎの取り次ぎも承りました。

 来店者2人で2人ともお取引頂けたとは、幸先の良いスタートです。

 補修と砥ぎの取り次ぎは前金を頂いた上で、職人さんに持ち込んで、幾ばくかの手数料をワタシが頂き、お客さんに品物とお釣りをお渡しするというものです。

 前金が足りないと揉めそうなので、判断が難しいものは先に職人さんに聞いて、それから前金を頂く方法にした方が良いかもしれませんね。




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