いろいろ色屋
子供向けに書いたものです。寝物語にでもどうぞ。
コンコン、カランカラン
今日のお客さんは誰でしょう
「いらっしゃいませ、こんにちは」
「こんにちは」
返事はあるけど姿が見えません。
「ここよ、ここ!」
色屋さんがカウンターを覗くと、小さな白い女の子が立っていました。
「ああ、かわいらしいお嬢さん。今日はどんな色をお探しですか?」
女の子はカウンターから一生懸命、顔を出して答えます。
「私に似合う素敵な色をちょうだい!」
「それではこんな色はいかがでしょう。どこまでも広がる、すっきり晴れた空のような青色はどうでしょう?」
色屋さんが青色の瓶を女の子に振りかけると、女の子の帽子が空のような青色に染まります。
「わぁ!すてき!とてもきれいだわ!他の色も見てみたいわ!」
「それならこの色はいかがでしょう?暖かい春に新しく咲いた若葉のような黄緑色はどうでしょう?」
色屋さんが黄緑色の瓶を女の子に振りかけると、女の子の髪の毛が若葉のような黄緑色に染まります。
「わぁ!すてき!とても優しい色だわ!他にもかわいい色はあるかしら?」
「じゃあこの色はいかがでしょう?みずみずしくてあまい、モモのようなピンク色はどうでしょう?」
色屋さんがピンク色の瓶を女の子に振りかけると、女の子のワンピースがモモのようなピンク色に染まります。
「わぁ!すてき!とってもかわいいわ!他にもすてきな色を見せて!」
「こんな色はいかがでしょう?夏に輝くヒマワリのような、元気な黄色はどうでしょう?」
色屋さんが黄色の瓶を女の子に振りかけると、女の子の靴がヒマワリのような黄色に染まります。
「わぁ!すてき!明るいきれいな色だわ!」
「どの色も全部素敵だわ!全部全部ほしい!ちょうだい!」
「そう言ってもらえて私も嬉しいです。少し待ってくださいね、小瓶に分けてあげましょう。」
「ほんとう!?ありがとう!」
女の子がピョンと跳ねてカウンターに飛び付くと、カウンターに並んだ色の瓶が、女の子に降りかかってしまいました。
「たいへん!お嬢さん、大丈夫ですか?」
あわてて色屋さんが女の子のところへ行くと、女の子はすっかり色の混ざったマーブルもようになっていました。
女の子は自分の色を見てポロポロと涙をこぼします。
「こんなのいや、かわいくないわ。」
女の子は泣きました、泣いて泣いて、マーブルもようの涙が床に落ちて、マーブルもようの水溜まりができました。
女の子が泣き止む頃には、女の子の色はすっかり落ちて、もとの真っ白に戻っていました。
でも、泣きすぎて、目だけが赤く染まってしまいました。
「お嬢さん、よかったら、私から新しくすてきな色を送らせてください。」
色屋さんは新しく、リンゴのような真っ赤な色で、女の子の靴を染めました。
ワンピースは夕焼けのようなオレンジ色で染めました。
髪の毛は紅茶のような赤茶色で染めました。
帽子は小麦畑のような黄色で染めました。
「まぁ!すてき!…ねえ、私かわいいかしら?」
色屋さんはにっこり微笑んで言いました。
「ええ、とてもかわいらしいです。そうだ、これを私からプレゼントしましょう。」
そうして、淡いバラのようなピンクのリボンを帽子に飾りました。
「ありがとう!色屋さん!とっても素敵でかわいい色!」
女の子は太陽のような笑顔で色屋さんにお礼を言いました。
色屋さんも嬉しそうに
「どういたしまして」
と言いました。
カランカラン
「また来るね!」
女の子は手を振りながら、扉を開けて帰っていきました。
「はい、またどうぞ。」
色屋さんも手を振って見送りました。
ここはとある美術館の片隅。
いろんな色があるところ。
『色屋』
みなさまも新しい色を探しにいらっしゃいませんか?
すてきな色がきっとあなたを待っています。
「それでは皆様、またのご来店を心よりお待ちしております。」
おしまい
優しい気分になれたでしょうか?どうぞあなたも、素敵な『色』が見つかりますように。