ルーティン
俺は目を覚ました。
傍らの時計は6:59分を差しており、俺は安堵した。
前回勝利を手にした時も、朝6:59分に目を覚ましていた。
俺は習慣として、以前勝った時と全く同じ行動を取る、ということを心に決めている。
何故そんなことをするのか。
有名所で言えば、ラグビーの五郎丸や、野球のイチローなど、一番を取る人間は必ずそういったルーティンをこなしているからだ。
「よし、起きるか」
布団をめくり、右足から着地。
そのまま15歩で洗面台に向かうと、2分ジャストで歯を磨く。
これも、朝メシを食べてから歯を磨く、ではダメで、歯を磨いてから朝メシを食べる、という順番は厳守しなければならない。
歯を磨き終えると、12歩で冷蔵庫に向かい、扉を開けて牛乳を取り出す。
これも、昨日半分残っていた物を捨て、新品に変えておいた。
万が一、牛乳の中身が殆ど無くなっていた場合、そこでルーティンが崩れてしまう。
それでは一番を取ることは出来ない。
二番を掴まされた時の後悔を、俺は嫌という程知っている。
軽量カップで200㏄きっちり測定し、俺はそれを飲み干した。
後から、ハンバーガー、カツ丼、ラーメン、焼き肉、寿司、が頭を駆け巡り、それらを食べたい欲求に駆られたが、今はぐっと堪えなければならない。
(勝ったときに、嫌という程食えばいいさ)
好きなものを食べるだけじゃない。
遊び、恋愛、そういうものを犠牲にして、初めて勝つことが出来るんだ。
あとコンマ1秒早ければ…… と泣きを見ることなどザラだ。
そのコンマ1秒早くする為に、俺たちは血の涙を流しているんだ。
人事を尽くして天命を待つ、という状態になっても、まだ終わりではない。
その天命を引き寄せる行為が、ルーティンなのだ。
玄関に向かい、右足から靴を履く。
ようやくこれで全てのルーティンが完了だ。
(やり残しはないな。 よし、行くぞ!)
俺はパチンコを打ちに、扉を開けた。




