その5
(ZOLL MAGAZINE 20XX年X月号 )
“ズギューン!”巻頭インタビュー)
「ワクワクしか感じない!」
ある意味、パンク史上に残る“伝説”をやらかしたアイツらが帰ってきた!
まだ記憶に新しい、今年1月12日。世間を騒がせた“あの事件”を経て、アイヴィー(Vo)が“ズギューン!”に電撃復帰!世の中的には知ったこっちゃないが、俺らのもとにはアイヴィーが帰ってきたんだ。こんなめでてえことはないよな!
メジャーを経ての変化、いま感じていること、そして話題に次ぐ話題となっている「活動拠点をアメリカへ」について…余すところなく語ってもらいました!
(注:ひょっとしたら一般誌に話さないような真相が語られると思って普段は絶対読まない本誌をめくっているゲス野郎へ。ZOLLはそんな低レベルの話題には触れねーよ、ばーかばーか!帰ってセン〇リでもこいてろ!)
(高円寺SPICY CURRY BAR「TRIP」にて)
Text:ダイちゃん
▶(うつむきながら)え~、それでは1年ぶりとなる“ズギューン”のインタビューを…フフッ。
ゴン(Gt、以下ゴ)「ちょっと待て、ちょっと待て。いったん、やり直そう…。」
▶改めまして、まずはアイヴィーさんに、皆さまへご挨拶を…ウフッ!
アイヴィー(Vo、以下ア)「どもっ!出戻りです!」
▶ブッ!も、もうダメだ~!ブフゥゥゥ~!
(以後、数分にわたり全員で大爆笑)
ゴ「落ち着け、落ち着け。」
ショージ(Ds、以下シ)「く、苦しい…。」
ア「ただいまっ!」
▶アイヴィー、もういい、もうやめてくれ(笑)。笑いすぎて聞きたいことも聞けない。
ア「だってこの話、マジメに話すと重いんだもん。」
▶そうだよな~。良くも悪くも世間に「パンク」ってもんのイメージを強烈に叩き込んで、引退…引退…(また笑い転げる)。
ア「DXでマイクを床に置いたときね、むちゃくちゃ真剣だったんだけど、一方で“山口百恵か!”って心の中で自分にツッコんだ(一同大爆笑)。」
▶ひいー!ひいー!
ゴ「今日、こんな内容でいいのか(笑)?」
▶いや、いいです。編集部から、今日はもう何でもアリで許可もらってるんで。
シ「さすがZOLL!他のゴシップ雑誌とは品格が違うよな。」
▶まあ、ぶっちゃけ、アイヴィーが「何をやったか」「なぜやったか」なんて、俺たちにとってみれば、どうでもいいことで。そんなことは、この誌面で聞こうとは思わないです。それよりも、これからのアイヴィーと“ズギューン!”のことを色々聞きたいんだよね。
(一同拍手喝采)
ア「それに、いま話しちゃうと、結構ヤバい立場になる話もあるんで(笑)。」
▶いや、せっかくマジメな方向に話が行きかけたのに(笑)!
ゴ「終わったら書けない話で盛り上がることにしよう(笑)。」
▶ということです、読者の皆さん悪しからず!まあ、あのDXホールがあってから2ヶ月、これでアイヴィーが正式に“ズギューン!”復帰ってことでいいかな?
ア「メンバーの皆さんに快く迎えていただきました(笑)。」
ゴ「そこはね、もともとアイヴィーは辞めたわけじゃねえから。しばらく旅に出て、帰ってきただけだよ。」
シ「でもお前、(アイヴィーが)抜ける時に、ここで『クビだ』って言ってたぞ(笑)。」
ゴ「それは言葉のチョイスの間違いだろ!お前だって分かってんだろうが!」
ア「まあまあ(笑)。」
▶ジャッキーは、どうなの?
ジャッキー(Ba、以下J)「…(無言のまま目頭を押さえる)。」
▶泣くなー(笑)!
ゴ「話そうとすると泣けてきちまうらしい。」
シ「まあ、気持ちは分かるけどな。」
(アイヴィー、微笑みながらジャッキーの頭を撫でる)
▶でも、これで元通り!って、ならないのが“ズギューン!”の真骨頂だね。いきなり発表された「活動拠点をアメリカに」って話なんだけど…何があったの?
ア「フェノメナール・レコードの社長のAJからの誘いなんだよね。」
ゴ「彼がたまたま来日してる時に、DXがあったんだよ。で、誰かがチケットを用意したらしいんだよね。その時は彼は“ズギューン!”のことも知らなくて、面白がって観に来ただけだったみたいだけど。」
▶そこに、あの騒ぎが…(笑)。
ア「それで、結果として非常に気に入られたようです(笑)。」
ゴ「口を開けば『クレイジー』って連呼してたもんな。」
ア「それで、何度かミーティング…というか、普通に飲んだのね、みんなで。まあ9割は何言ってんだか分かんないんだけど(笑)、とにかくアメリカに来い、来たら俺が面倒みるって話で。」
▶面倒みるって言われてもなあ(笑)。
ア「愛人か!ってのね(笑)。まあ、彼のバックアップは正直、大して期待してないのよ。だって“辞めました、戻りました、はい元通り”って、面白くないじゃない?」
▶他のみんなはどうだったの?いきなり「アメリカ」って言われて。
ゴ「そこは、全員あんまり悩まなかったな。というか、即決で“行こう!”って感じだった。」
▶それ、すごいね。
ゴ「アイヴィーが抜けた時期に、バンドを続けていく意義なんかも改めて考えてたからな。挑戦できる環境があって、今度は4人でチャレンジできる。こんな面白いことねえ!って思ったな。」
シ「俺も!金も嫁も何もねえからこそ、身軽に飛び込めるだろ。あと数年したら、そうはいかねえ。」
ゴ「お前、数年したら結婚できると思ってんのか?」
▶ジャッキーは?
J「…(無言でうなずく)。」
▶さすがの結束力だよな、改めて感心しちゃうわ。
ア「何も考えてないとも言う(笑)。」
▶ちなみに、みんな英語は?
ゴ「ジャッキーが少し分かる程度で、後は中学生レベルも怪しい(笑)。」
▶また、よりによって一番コミュニケーションに難のある男が(笑)。
シ「ハローとサンキューとファックユーだけ知ってれば、後は気合いで何とかなる!」
▶いや最後のはマジで止めろ、下手すると撃たれる(笑)。
ア「ショージ良かったね、知らないで言うところだったね(笑)。」
▶すでに4月からのツアーも発表されているわけだけど…地理感がないからイメージできないけど、またすごい数のライヴを詰め込んだもんだね!
ア「AJに“入れられるだけライヴ入れて!”って頼んだら、鬼のようにブッキングしてくれた(笑)。」
ゴ「ライヴよりも移動がどうなるのか恐いよな。でも、ワクワクしてるよ。」
▶ちなみにビザとかはどうなるの?
ア「その辺は、アレがこうなってああなって(笑)。」
▶ああ(笑)。
ア「なので、拠点を移すと言っても、それなりに日本にも帰ってくる予定なので。その時はライヴもやるから、みんな遊びに来て欲しいね。」
▶それは嬉しいね。そして、渡米前に最後の国内ツアーがあるわけだけど、これもまた1週間に6本という合宿スケジュールで(笑)。
ゴ「いや、実は広島と福岡の間がオフだったんだけど、高松が決まりました。」
▶マジで?
ア「渡米準備やなんやで、1週間しかツアー組めなかったからね。せめて目いっぱいやりたかったから、本望だよ。」
▶タフだねえ。すでにアイヴィー復帰ライヴはギヤで果たしたわけだけど、手ごたえはどうだった?
ア「その前に、DXの外の公園があったよ(笑)。」
▶いや、そうなんだけど(笑)!
ゴ「ショージ伝説の“手拍子パンク”な。」
シ「最高だったろ!」
▶(無視して)ギヤはどうだったの?
ゴ「何だろうな、今まで通りだけど、今まで通りじゃないというか。いい意味でな。」
▶分かる。何か、いつもの“ズギューン!”と同じく全力なんだけど、それでいて余裕があるというか。
ア「そんな感じだね。歌っていても、周りを見る余裕があったね。見るというか、感じとるっていった方が正しいかな。次に出す声、息づかいを、どの音を出せば、いま以上に熱くなっていくのかが分かるというか。」
▶それが、メジャーで得てきた経験値?
ア「うーん、どうだろう。それこそ冗談抜きに、あの公園でのライヴから得た感覚かもね。それにメジャーでは結局、DXでのライヴ1本だけ、それも途中放棄しちゃったわけだし。」
▶アイヴィーが経験したことだけでなく、“ズギューン!”として経験したことだから、バンド全体のエネルギーが上がったのかもしれない。
ア「まあ、後は強いて言えばメジャーの時はテレビ出演とかMV撮影とかが多かったじゃない。そこで周りをよく見たり、“観られていること”を意識するクセはついたかもね。」
▶経験してきた全てが力になっている?
ア「そういうことだね。」
ゴ「この一年、バンドとしては上がったり下がったりで、まさに激動だったけど。ここから、さらに面白いことができるんじゃないかと思うよ。ワクワクしてる。」
▶俺も、この期間を経ての“新生ズギューン!”は、さらにすごいことになっていく予感がしているよ。このバンドは間違いなく、とんでもないところまで行くって。
ゴ「嬉しいね。でも予想をはるかに上回ってやるからな。」
ア「あと、この一年を語るにあたって、松下のおばちゃんは外せないよ。もう、おばちゃんに足を向けて寝られないよね。」
▶おばちゃんと“ズギューン!”の出会いが、これだけのムーヴメントにつながった。奇跡のような縁だったね。
ア「5人目のメンバーと言ってもいいと思う。まあ、アメリカ行きで、しばらくは寂しい思いをさせるわけだけど。でも、高円寺の仲間たちが退屈させないでしょ!」
▶最後に、今後の“ズギューン!”として何か決意表明みたいなものをいただければ。
シ「ずいぶん改まってるな(笑)。」
ゴ「アメリカで待ってるぜ。」
ア「復帰したと思ったらアメリカとか言い始めて、いつも勝手でごめんね。アンチがすごいんで海外に逃げます(笑)、ってのは冗談だけど、今のところ何年くらい向こうに行くのかは未定。だけど、日本で生まれ育ったジャパニーズ・パンク・バンドですから!その誇りを胸にアメリカでも荒らし回ってくるし、必ず帰ってくるからね。愛してるよ!」
▶ありがとう、以上でズギューン!のインタビューは終了です。そして最後に、20年以上の長きにわたって日本のパンク・シーンを支え続けてくれたZOLL MAGAZINEも、今回をもって休刊ということになりました。最後にこんな最低で最高なインタビューを許可してくれた山口さんはじめ、編集部の皆さん、本当にお疲れ様でした、ありがとうございました。
シ「寂しいなー!」
ゴ「中学生の時、初めてZOLLを読んだ衝撃は忘れない。ZOLL MAGAZINEありがとう!」
J「…(深々とお辞儀)。」
ア「この雑誌に載ることを目標にしたり励みにしたりして日々がんばってきたし、ZOLLが無い日本のパンク界が想像できません。でも、それを作っていかなきゃね。雑誌は無くなってもアティテュードは受け継がれています。そして、いつの日か復活してくれるのを、アタシたちはいつまでも待ち続けてるよ!ZOLL FOREVER!!」