その4
(MUSIC MAGAZINE「スターダスト」20XX年X月号より)
アイヴィー インタビュー
この秋、すい星のごとく現れ、既存の音楽シーンに飽きつつあったオーディエンスを一瞬にして虜にさせた「パンク・ロックの歌姫」アイヴィー。テレビで、動画で、彼女の歌声を聴いて「ハッ」と目覚めた人も多いのではないだろうか?
*僕もその一人です!
11月にシングルで先行発売された、ハードでドラマティックなロック・ナンバー「歌姫」に続いて、12月20日にいよいよデビュー・アルバム「パンク・ロックの歌姫」がリリースされる。今だ謎に包まれたアイヴィーの素顔に迫ったが…う~ん、かえって分からなくなったかも(笑)。
Text:タケシタトモノリ
▶改めて、アイヴィーさんのソロ・デビューまでの道のりを教えてください。
「18歳の時に、パンク・バンドをやるために地元から上京してきました。最高の仲間たちと出会って組んだバンドが“ズギューン!”です。3年間、全国のライヴハウスを回って、毎晩ステージで汗を流してきました。アルバムを2枚出して、インディーズ・レーベルから声がかかり所属という形になりました。そこから、アタシだけが…(しばし沈黙)。」
▶前のバンドに、思いがあるようですね。
「前のバンド、とは思ってないです。アタシは、今でも“ズギューン!”のメンバーですから。仲間たちが“広い世界を見てこい”と言って送り出してくれた。みんなの代表として、ここにいるんです。」
▶いわゆるパンク・バンドから、ソロのシンガーに転身したわけですが、音楽性の変化などに戸惑いなどはありませんか?
「いや、曲を作るという意味では何も変わりません。パンク以前に、アタシの中にあるメロディーを表現して、アタシの中にある言葉を詞にする。ただ、今まではメンバー4人で作り上げていたのが、今はアタシが全て引っ張らなくちゃいけない。そこが違いですかね。」
▶ある意味、孤独ですか?
「…でも、一緒に仕事してくれるミュージシャンたちがみんな優しくて。そこに救われていますね。」
▶バンド時代は3コード的なナンバーが多かったと思うのですが、一足早くリリースされたシングル「歌姫」では、ストレートな楽曲ながらも転調を多用したり、かなり多彩な曲展開を見せましたね。
「何だろうね?“ズギューン!”の時には出てこなかった引き出しが、アタシの中にあったってことみたいですね。」
▶表現方法に広がりが出てきたと。
「あと、子供の頃に歌唱教室に通っていまして、厳しい先生だったので歌い方だけじゃなく、譜面の読み方から何から厳しく叩き込まれたんですよ。その時は楽器は弾けなかったんですけど、ここ数年で曲作りのためにギターを教わった時点で、頭の中に何となくあったイメージを、楽譜に落とし込んで具体化できるようになりましたね。」
▶いまレコーディングされている他の楽曲についても、今までのアプローチとは違いますか?
「いや、アタシの基本にあるのは、いつもパンク・ロックなんですよ。何て言えばいいのかな…キャロルと永ちゃん、本人の中にあるのは同じロックだけど、表現の仕方は変わりますよね。」
▶あー、なるほど。矢沢さん、お好きなんですか?
「ホントはそんなに詳しくないけど(笑)、“ズギューン!”のギタリストの影響で。」
▶確かに、そう考えると分かりやすい。
「ギター、ベース、ドラムだけじゃなく、ホーン・セクションやキーボードなどの導入は、正直に言って会社の方からの提案だったんです。それをどう自分の中の表現方法に乗せていくか考えていたら、自然に3コードを飛び出していたって感じです。」
▶なるほど、ますます楽しみですね。そしてデビュー・ライヴが年明け1月12日のDXホールという、大きな会場に決まりました。これについてはどうでしょうか。
「大きいハコでも小さいハコでも、変わらない気持ちでステージを踏んできたので、そこには大して感慨はないです。ただ、仲間のバンドが以前あそこで大きいフェスに参加して、それを観に行ったときに“気持ち良さそうだな”と思ったので、同じステージに立てるのは楽しみですね。」
▶ステージはどれくらいぶりですか?
「うーん…4か月?5か月?あまりにも短い間に色んなことが…。」
▶怒涛の変化ですよね(笑)。
「曲を作ってステージに立つだけだったのが、テレビのお仕事にプロモーションに、自分が何になったのか今でもよく分かりません(笑)。」
▶充実されていますか?
「そう…ですね。だと、思います。後から分かるんじゃないかな。」
▶やっぱり、ライヴがしたいですよね。
「ホントに!正直、シングルがどれだけ売れたとか言われても、アタシの中では全然実感がないんです。信じられるのは目の前のオーディエンスだけだから。早く、それを全身で感じたいですね。」
▶最後に「スターダスト」の読者さんからの質問です。まず、休みの日には何をしていますか?
「今は、ひたすら寝ています(笑)。」
▶人生で一番影響を受けたミュージシャンは誰ですか?
「日本のパンクに詳しい人じゃないと分からないかも…ガイアってバンドです。調べてみてください。」
▶スイマセン、僕も分かりません(笑)。ファッションがとても素敵ですが、気を使っていることはありますか?
「アタシにとっては、パンクは自分そのものなんで。例えばライダース・ジャケットでも何でも、着倒してナンボだと思うんですよ。誰かに着せられたような恰好はしない、それだけかな。」
▶ありがとうございました。年明けのライヴ、楽しみにしています。
「こちらこそ…って、硬いねアタシ(笑)。」