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その2

(ZOLL MAGAZINE 20XX年X月号より)

ズギューン!インタビュー

「ずっと順風満帆だったらパンクなんかやってねえよ」

1年ぶりとなる2ndアルバム「グロリアス・ボム」をリリースする“ズギューン!”。とにかく、ここ1年で高円寺の枠を超え、全国的な認知を獲得しつつある。暇さえあればライヴ、ライヴ、ライヴというスタンスで鍛え上げられた

生粋のライヴ・バンド。

前作から受け継ぐファスト+ロックンロールはそのままに、今作では曲展開やアレンジに格段の成長を見せつけている。

あと何年かしたら俺なんかが気軽にインタビューできなくなるんじゃないか、という存在感を見せつける4人に、いろいろ聞いてきました。

(新宿・喫茶「西武」にて)

Text:大四股はるよし


▶前作「FxTxC」から一年でニュー・アルバム発表。ここまで順調といっていいかな?

ゴン(Gt、以下ゴ)「…まあ、色々ありましたけどね。」

アイヴィー(Vo、以下ア)「揉まれて踏まれて、まあ確実には強くなったよね。」

▶ZOLLでのインタヴューも前回が1ページで今回は2ページ、しかもカラーだって。

全員「おおーっ(と感慨深げ)!」

▶今や高円寺だけじゃなく、全国区でも注目のパンク・バンドになってきた訳だけど、その辺は自覚してる?

ショージ(Ds、以下シ)「いや全然。」

▶まあ、ショージ君はね(笑)。

ア「とにかく、ファースト出してからライヴの本数が一気に増えて増えて、平日も週末も無くライヴ、ライヴで…。」

ゴ「ブッキングで地方のバンドとつながって、そこから地方に行けるようにもなったし。」

ア「秋に回った全国ツアーが大きかったよね。あれでだいぶ覚えて貰った。」

ゴ「ホント、しんどかったけどな。」

▶25ヶ所だっけ?

ゴ「偉大なパンクの先輩方を見習って…1回は修行に出てみたかった(笑)。」

ア「北は北海道から南は長崎…沖縄に行けなかったのが残念だけど。」

シ「ついにノッカーズとも対バンしたし!」

ア「あれは嬉しかったね~!」

▶機材を車に積んで来る日も来る日も移動してステージやってまた移動して、寝る場所も毎回違って、相当鍛えられただろうね。

ア「でも寝袋で寝るのも楽しかったよね。」

ゴ「全国のパンクスのご厚意に甘えて…熱い仲間だけはうんと増えたな。金はマイナスになったけど(苦笑)。」

ア「とりあえず、帰ってきて何人かはキャッシングに駆け込んだ。これ、マジ(笑)。」

▶そんな中で、満を持してセカンド・アルバム。タイトルが「グロリアス・ボム」っていうのは、何か由来が?

ア「前回が逆境からのスタートで、ホント高円寺の底辺から始めて。1年経って今は無限の可能性を感じる。人生って素らしい!って意味を込めて、その広がりを『爆弾』って言葉に込めたんだ。」

▶レコーディングどうだった?

ゴ「今回はキツかったですよ。」

ア「前はライヴでやってた曲をそのまま録っただけだけど、今回は曲数も足りなかったし、半分は新たに作った曲だしね。生みの苦しみは半端なかった。」

▶正直な感想としてはね、前作ではまだ“デスティーノ”の影をひきずってるというか、バンマスであるゴン君の主導で作られたアルバムって印象はあったんだよね。でも今回は完全に消えたね。

ゴ「ああ、それは俺も思いました。前回はヴォーカルも一発録りだったし、バンドとしての勢いを重視して、細かいダメ出しとかはしなかった。その分、ミックスには俺の色がかなり入っていたと思う。」

ア「なーんにも知らなかったもん。」

ゴ「そこからのライヴやツアーを通じて、信頼感を築き上げてきたから。今回は遠慮なく注文つけたし、それはみんなも同じで。ギターテイクも何回も録り直したから。」

ア「ブースでギター抱えて正座しながら“分かんねえ!分かんねえ!”って叫んでたよね(笑)。」

ゴ「あの時はヤバかったな(笑)。」

ア「でも、結果いいものが録れたから。」

▶全体を通して、基本路線は今までの「ズギューン!」だよね。ただ曲の輪郭がハッキリしてきたと思う。ファストな曲はよりファストに、ロックンロールな曲はよりロックにというか。

ア「まあ、勢いを通り越して次の段階に来た時に、今までやってきたことをいかに否定せず新しくなれるかっていう。」

ゴ「結局、持ち味を磨いていくしかないんだよな。いかに無駄なものを削ぎ落とすか、ですよ。」

▶確かに、ギターひとつとっても無駄なフレーズとか無くなってきたね。ドラムもエイトビートの手数も一切抜いてない。相当の努力とこだわりが見える。

シ「よくお分かりで!速い曲はつい4つ打ちに逃げたくなるけど、そこはガッチリとエイト刻まないと。ハードコアだって仮にもロックンロールだからな。」

ア「ショージが珍しく真面目に語ってる(笑)。」

シ「もう、これで1年は真面目なこと言えない(笑)。」

▶あと前々から感じていて今作で確信めいたんだけど、ジャッキー君のベースラインってハード・ロックの影響が強いよね?

ジャッキー(Ba、以下J)「あっ、はい。」

▶スティーブ・ハリスとか、ちょっとテクニカルな部分はむしろビリー・シーンとかの影響を感じるんだけど。

J「…まあ、タラスとかはパンクよりも先に聴いてて、そんなに興味は無かったんだけど、ベースを真面目に弾くようになってからは教則的に練習したりして…。」

▶もうMR.BIGじゃなくてタラスってところが(笑)。

(以下、しばしジャッキーとHM/HRのベース談義)

ゴ「すげえ、ジャッキーがこんなに喋ったの初めて見た(笑)。」

ア「ちゃんと話せるんだ(笑)。」

▶よし、続きは今度、個人的に(笑)。

J「…はい(笑)。」

▶あとジャケットがすごい写真。超立体的というか、ライヴの躍動感が完璧に伝わる一枚なんだけど、これは?

ア「松下のおばちゃんね。」

ゴ「60歳の女性カメラマンなんですよ。」

▶60歳!

ア「アタシが成人式に出る時にたまたま知り合ったおばちゃんで、写真撮らせてって言うからライヴのチケット買ってくれたらいいよって言ったらライヴまで来てくれて。そこで撮ってくれた写真。もう即決だったよね。」

▶初めてのライヴで、この写真?

ア「末恐ろしいでしょ。まあ、末ったって60歳なんだけどさ(笑)。」

▶曲順通りに見ていくと、1曲目がタイトルトラックの「グロリアス・ボム」なんだけど、これはゴン君の根っこにあるブルーズな部分が絶妙に。

ゴ「あの曲は…最初はもっとタイトというか、フックの無いストレートな曲だったんですよ。ちょっと面白みに欠けるなーと思ってスタジオでいじくり回しているうちに、悪魔が降りてきて(笑)。」

▶ロバート・ジョンソン的な。

ゴ「いや、どちらかと言えば山口富士夫的な(笑)。」

▶そっちか(笑)。

「そこにアイヴィーのヴォーカルが乗ったら、思いがけずハードコアになった。意味分かんないんだけど、成立したんですよ。これはもう1曲目でしょ!ってなって。」

▶ああ、でも言ってることは分かる。パンク・ロックを掘り下げて、もっと土着なものに到達するというか。

ゴ「そういう意味でのコアな部分が形になりましたね。」

▶2曲目「ジグザグ」は一転してシンプルだけどポップなところもあって、前作のノリに近い。

ア「やっぱり、こういうのがアタシの核にあるものなんだろうなと。」

ゴ「アイヴィーの持ってくる曲は核がめちゃくちゃ安定してるんですよ。アレンジがしやすい。」

▶前から思ってたんだけど、アイヴィーちゃんの歌い方って、我流じゃないよね。きちんとトレーニングを受けているように感じるんだけど。

ア「…分かります?」

▶“ン”の音の使い方とか、プロっぽいんだよね。

ア「そんな大げさなものじゃないんだけど、子供の頃に歌唱教室に通ってて。先生が元オペラ歌手で、童謡がメインだったけど、みっちり叩き込まれました。」

▶やっぱり。

ア「パンクっぽくはないのかもしれないけど、身にしみついたものだから。」

▶いや、揺らがない歌唱の基礎があるからこそ、多少崩しても全くブレないというか。

シ「すげーな大四股さん、ライヴ中アイヴィーのケツしか見てねえと思ってたら。」

▶お前と一緒にするな(笑)。4曲目「イーター」。イントロのベースラインが特徴的な。

J「…。」

▶何とか言えよ(笑)。

ゴ「これはジャッキーが持ってきた曲…というか、リハ前に指慣らしで弾いてたフレーズがやたら耳に残ったんで、みんなで音を重ねていったらああなった。」

▶曲名は、あのEATERから?実際、それを思わせるような歌詞が。

ア「それは遊び心で、無駄に食い散らかしてきた日々のことを歌ってます。」

5曲目「ファビュラス」は今までの“ズギューン!”にはなかった…サイケデリックというか。

全員「おおお~!」

ア「そうか、これがサイケデリックだったんだ(笑)。」

▶何かこう、ぐるぐるっとした感覚が。

ゴ「俺的にはニューヨーク(パンク)とか、あるいはソウルっぽいなと思いながら書いた曲。」

ア「でも歌ってみたら意外なほどハマったよね。もっとダウナーな印象だったんだけど。」

▶8曲目「エヴォリューション」は、まさに前作から今作に至るまでの自分たちの歩みを表現した歌詞だよね。

ゴ「“雑草の中の雑草 雑踏の中の雑草”ですか?」

ア「アタシら、傍からは順風満帆に見られてるけど、全然そんなことなくて。数え切れない悔しい思いをして、やっと迎えた朝もあるわけで。」

▶雑草も進化すると。

ア「ずっと順風満帆だったらパンクなんかやってねえよっていう。みんな曲がりくねった道を進んでたどり着いたパンクだし、ここで這い上がるしかない。その決意だね。」

▶10曲目「イン・ザ・グローリー」は、全てを吹き飛ばすようなスピード・ナンバー。ショージ君の「ドコドコドコドコ」ってドラミングが痛快で。

シ「これはね、俺も気持ちいいっす。」

ア「レコーディングでも、一発で録り終えた曲だよね。」

ゴ「まあバラエティに富んだアルバムの締めくくりに相応しいってことで。」

▶俺が“ズギューン!”に出会った当初から、このバンドの志の高さは他の追随を許さないというか、スポットライトを浴びるべくして生まれたバンドだと思うんだよね。

ア「そこは謙遜はしない。最初は東京でバンドができるってだけで幸せだったけど、やるからには一人でも多くを巻き込んで、とてつもないことを実現させていきたいから。」

ゴ「俺たちそのものがムーヴメントなんだよ。」

▶重い言葉だね。

ゴ「これを読んで生意気だって思われたら上等ですよ。踏まれるために立ち上がったんだから。」

▶最後に何かあれば。

ア「いや、言い尽くしたから、もうこれで十分です。」


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