✒ 子ギツネの手袋さがし 2
カラスと共にオオカミの子供を探す子ギツネですが、なかなかオオカミの子供を見付ける事が出来ません。
カラスは空からオオカミの親子を探しますが、なかなか見付けられません。
「 巣穴に戻ってしまったのかも知れない 」とカラスは思いました。
仲間のカラスに手袋を持ったオオカミの子供の事を尋ねてみると、オオカミの親子を目撃したカラスに情報を得る事が出来ました。
子ギツネはカラスと共に得た情報を信じて前へ進みます。
進み続けた子ギツネの目の前に、知らない森が見えて来ました。
森の前で立ち止まった子ギツネの4本足がすくんでいます。
知らない森の中へ入るのが怖いのです。
カラスの仲間の話では、「 赤い手袋をくわえたオオカミの子供が居るオオカミの群れは森の中へ入って行った 」と言うのです。
その森のが今、子ギツネとカラスの目の前にある森でした。
子ギツネは森の中へ入る事を何度も躊躇いましたが、意を決して森の中へ入る覚悟を決めました。
この森の何処かに片方の手袋があるからです。
探している手袋が近くにあるというのに、ここで諦めて帰ってしまっては、漢が廃ります。
それに子ギツネは1人ではありませんでした。
ここまで一緒に手袋探しを手伝ってくれているカラスも居てくれます。
子ギツネは自分の中にある勇気を掻き集めると、森の中へ進み始めました。
子ギツネは森の中で懸命に手袋を探します。
森の中で出会ったフクロウから手袋をくわえたオオカミの子供を見掛けた話を聞く事が出来ました。
「 オオカミの子供は手癖の悪いお猿の集団に絡まれた時に、手袋を取られてしまった 」と言うのです。
お猿の集団は森の中にある1番大きな樹のある場所へ向かって行った事を知る事が出来ました。
子ギツネは親切なフクロウに御礼を言うと、カラスと共に森の中にある1番大きな樹を目指しました。
もう直ぐ無くしてしまった手袋を取り返す事が出来ます。
子ギツネは一生懸命歩き続けました。
カラスが大きな樹を見付けてくれたので、子ギツネは大きな樹を目指して走り出しました。
「 ──はぁ、はぁ、はぁ……。
これが……この森で1番大きな樹……。
ピカピカ光って綺麗…… 」
「 黄金のまつぼっくりの樹だよ…。
結構、遠くまで来ちゃったんだねぇ… 」
「 お猿さんは何処に居るの??
ボクの手袋は何処にあるの?? 」
「 樹の上を見て来るよ。
お猿が居るかも知れないからね 」
「 有り難う、カラスさん 」
カラスは黄金のまつぼっくりが付いている樹の回りをグルグルと回りながら飛んでみました。
何処にもお猿の姿はありません。
お猿は黄金のまつぼっくりの樹には居ないようです。
子ギツネの手袋も見当たりませんでした。
カラスが子ギツネの元へ戻ると、子ギツネが母さんギツネと再会していました。
どうやら母さんギツネはカラスの仲間の協力で、此処まで無事に辿り着けたようです。
子ギツネは母さんギツネに抱き付いて大泣きしていました。
離れ離れになってしまった母さんギツネと再会出来て余程嬉しかったのでしょう。
安心した子ギツネの緊張の糸が切れたのかも知れません。
再会を果たし、喜びを分かち合ったキツネの親子の元へ戻ったカラスは、黄金のまつぼっくりの樹にお猿が居ない事と手袋もない事を伝えました。
カラスの言葉を聞いた子ギツネは落ち込み、ガッカリしました。
やっと手袋に近付けたと思ったのに、手袋を持っているであろうお猿が居ないのです。
「 …………ボクの手袋……此処まで来たのに…… 」
「 坊や、帰りましょう。
手袋はまた買いに行けばいいのよ 」
母さんギツネは子ギツネに手袋を諦めさせようとして、優しく諭します。
子ギツネの小さな瞳から涙が溢れました。
随分と遠くまで来ました。
最後まで諦めず、此処まで頑張って来れただけでも凄い事なのだと母さんギツネは子ギツネの頑張りと努力を認めて誉めました。
涙を拭った子ギツネは、手袋を諦める決心をしました。
幼い子ギツネが宝物を諦める事は容易ではありません。
それでも子ギツネは宝物を探し続ける事よりも、母さんギツネと洞穴へ帰る事を選んだのです。
「 ………………バイバイ……ボクの手袋…… 」
子ギツネは小さな声で呟きました。
母さんギツネとカラスと共に黄金のまつぼっくりの樹から去ろうと歩き出した時、数匹のお猿がヒョッコリと出て来ました。
キツネの親子の話を聞いていたのでしょうか?
1匹のお猿がキツネの親子に、ある事を提案して来ました。
「 お願いを聞いてくれたら、子ギツネが探している手袋を返してやる 」と言って来たのです。
落ち込んでいた子ギツネの顔に元気が戻りました。
子ギツネの目の前には、子ギツネがずっと探していた毛糸の赤い手袋があります。
お猿の1匹が見せてくれているのです。
子ギツネはお猿のお願いを聞く事にしました。
目の前と鼻の先に手袋があるというのに、断る選択肢は子ギツネの中にはありませんでした。
お猿のお願いは、子ギツネには難しいものでした。
黄金のまつぼっくりの樹に登り、黄金のまつぼっくりを1つ取って来て、手袋と交換をする──という条件だからです。
お猿が黄金のまつぼっくりの樹に登るのは簡単です。
器用に登り、黄金のまつぼっくりも簡単に取れてしまうでしょう。
然し、子ギツネの4本足で黄金のまつぼっくりの樹を登る事も、黄金のまつぼっくりを取る事も難しそうです。
大人のキツネならば、黄金のまつぼっくりの樹を登る事ぐらいは出来るでしょう。
母さんギツネが黄金のまつぼっくりの樹に登るのも、カラスが飛んで黄金のまつぼっくりをもぎ取って来るのも「 反則になるから駄目だ 」とお猿に釘を刺されてしまいました。
子ギツネは手袋を取り返す為に、黄金のまつぼっくりの樹に登る事を決意をしました。
難しい難題を持ち掛けて来たお猿は、子ギツネに手袋を返してあげる気が無いのではないか──とカラスは考えていました。
もしも、お猿が子ギツネに手袋を返さなかった時には、仲間のカラス達に「 お猿達を懲らしめるよう 」にと密かに合図を送りました。
そうです。
母さんギツネの友人のカラスは、カラス達のボスだったのです。
子ギツネの傍には常に心強い味方が居てくれるのです。