✒ ひとりぼっちのまつぼっくり
広〜い、広〜い、森の中に、大きな、大きな、樹がありました。
大きな樹には、沢山のまつぼっくりが実っています。
沢山のまつぼっくりは、何れもピカピカと光っていて、とても綺麗です。
そうです。
この樹は黄金に輝く黄金のまつぼっくりが採れる不思議な樹なのです。
この黄金に輝く黄金のまつぼっくりを求めて、欲にまみれた沢山のいけない人間達が森の中へ土足でズカズカと入って来るのです。
ある者は樹を切り倒そうとしてチェンソーで樹を切ろうとします。
でも、まつぼっくりの樹はとても丈夫で傷付きません。
ある者は爆発させて樹を倒そうと、大量のダイナマイトを樹に巻き付けて点火します。
けれど、まつぼっくりの樹は、やはり丈夫で傷付きません。
数え切れない程のとても多くの欲望の獣と化した人間達が、黄金に輝く黄金のまつぼっくりを手に入れようと奮闘していました。
時代は流れに流れて、約2万年後────。
黄金に輝くまつぼっくりの樹には、1つのまつぼっくりしか実っていませんでした。
そうです。
黄金に輝く黄金のまつぼっくりは、1年に1個だけ地上に落ちるのです。
2万年の時を経て、黄金に輝く黄金のまつぼっくりは、最後の1個を残して地上へ落ちてしまいました。
黄金のまつぼっくりの樹に実っているまつぼっくりは、何故か黄金ではなく、何処にでもあるような小汚ない茶色をした唯のまつぼっくりでした。
まつぼっくりの周りには、小さな芽が出ています。
新しい黄金のまつぼっくりの芽です。
この小汚ない茶色いまつぼっくりは、1万年という永い永い時間をひとりぼっちで生き続けるのです。
そして、1万年後の今日を迎えるまで、沢山のまつぼっくりの成長をひとりぼっちで見守り続けるのです。
めでたし、めでたし。