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 殺したオレコ族土匪を、村人に並べさせて数えてみたら二百五十六人居た。

 大隊規模としたら最低でもあと二百四十人ほど足りねぇ。

 バチャンの奴等は、軍支給の折り畳み式十徳小刀のノコギリ刃を使い、死体から角をゴシゴシ切り落とすのに余念が無い。村の奴等が恨めし気に睨むのも気に留めずに、だ。

 ハレシは目ざとくあの尻尾を首に巻いていたガキの死体を見つけ出し、血塗れの同胞の尻尾を回収すると、俺がブチ壊した顔面から角を引っこ抜く。頭蓋骨が砕けていたからノコギリの出番は無しだ。

 得意げに根元から血と脳漿が下たる小さな角を俺に見せつけて来るハレシ。俺は苦笑いを返す。

 知らぬ間にリ・ウォンが俺の傍に立っていて、耳元に囁きかけて来た。


「西方 つらの死体がありません。同盟の軍事顧問は上手くフケたようですね」

「みたいだな、うちの損害は?」

「死亡五、後送が必要な負傷十一、損耗率百分の八、作戦続行可能です」

「同盟野郎をとっ捕まえるかぶち殺さねぇ限りはまだまだお家には帰れねぇな、食料と弾薬、水の補充を、それから押収した武器類は全部破壊、村の小屋も掘り出した砲弾で突っ込んで全部吹っ飛ばせ」

「村人は?」

「村長と村の顔役は全員逮捕、ふん縛って『流星』に乗せろ、女子供年寄りはここから追い出せ、ただし一人手荷物一個は持たせる時間をくれてやれ、お情けだ」

「土匪の種を撒くことになりますが?よろしいんで?」


 リはそう言って、いやに色っぽい流し目を俺に送って来る。

 俺は見つめ返して。

 

「しゃぇねぇわな、殺すなって言われてんだから。それに、この土地にゃ前から憎悪って名前の地下茎がビッシリ埋まってらぁ、いまさら種の一握りや二握り潰しても屁のツッパリにもなりゃしねぇよ」 


 鼻笑いの様な、ため息の様なそんな呼吸を一つやって、リ・ウォンは「了解しました」との返事を残しそばを離れ、大声で俺の命令を中隊全員に伝える。

 夕焼けに染まった盆地の村に、風が渡って来た。

 そのきな臭い風には血と硝煙、人が焼かれる臭いが乗っている。

 その臭いはこの土地の臭いに成っていた。


 終わり

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