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第25層 F級の戦い

 登録ログインを済ませて俺たちは迷宮ダンジョンへ降りる階段へと向かう。

迷宮入口ダンジョンラウンジの奥に螺旋状の下へと続く階段が見え、その階段を数m降りると1階層となる。


 1階層は危険はほとんどない。F級(Fランク)でも部隊パーティさえきちんと組んでおけば、楽に階層フロア内を探索できる。

出てくる魔物モンスター粘液玉スライムタイプや小鬼ゴブリンタイプ、泥人マッドマンタイプなどの戦闘にあまり長けてない魔物が点在するだけである。下へと続く階段も実は入口スタートから一直線に進めば、2階層への階段があるのだ。

俺たちはここに用はない、とばかりにまっすぐ2階層を目指し降りていく。

 

2階層。

魔物モンスターの種類は群狼ウォルフタイプ、軍隊蟻(キラーアント)タイプなど、数で物を言わせる魔物モンスターが増えてくる。小鬼ゴブリンタイプには統率する者(ゴブリンリーダー)が混じっており、集団チームでは侮れない存在になってくる。


F級(Fランク)は、この層から本腰を入れておかないと大けがをする戦いが起こりえる場所である。

 階層フロア内も随一の広さで、ここで迷う者も少なくはない。

この2階層が我々、F級(Fランク)の主戦場であり、稼ぎの場であった。

 安い素材が多いものの、日用品に使われる物が多く、協会ギルドでは常に依頼クエストが発生してる素材が多い。


長年、F級(Fランク)冒険者をやってきた俺には、2階層は庭のようなものだった。

ここも一気に駆け抜け3階層へと降りる。


 3階層、

魔物モンスターのタイプは似たり寄ったりなものの、特殊な毒などの状態異常を起こす攻撃をしてくる魔物モンスターが増えるのが3階層の特徴だ。


 基本能力表(ステータス)も上がっているようで、2階層と同じ感覚で戦うと確実に怪我をする階層であった。

F級(Fランク)でここに降りるのはだいぶん戦い慣れた部隊パーティだけである。

E級(Eランク)の駆け出しがこの階層で慣らすことも多いが、ここで慣らすくらいなら2階層の方が安全だし、稼ぐなら4、5階層の方がいい。

 そのためこの階層は冒険者が少なく、だからこそF級(Fランク)は事故に遭いやすい場所となっている。

俺たちはここも素通りする。

1、2度、魔物モンスターに遭遇して戦闘はしたが、俺もシズクもこの階層には慣れ親しんでいる。難なく魔物モンスターを撃退する。

 競争相手の少ない3、4階層は俺たちのいい稼ぎ場所だった。

そのまま4階層も抜ける。


 5階層。

ここが俺の冒険者人生の最下層(ベストスコア)だ。

ここからはF級(Fランク)は本当の命がけとなる。

 まず、魔物モンスターにダメージを与えきれないのだ。

圧倒的に攻撃力不足が原因になり、戦闘時間が長引いてしまう。

魔物モンスターの種類も大蠍スコルピオタイプや合成種キマイラタイプ、牛人ミノタウロスタイプなど一撃に特化したタイプが多く、パワー負けは部隊パーティの全滅の引き金になる階層なのだ。

ここは一人前のE級(Eランク)の冒険者達がしのぎを削る場所であった。


俺たちはここからは慎重だった。

いや…慎重なつもりであった。

装備を整え、移動速度を落とす。


「ここからが本番だ。全員無理はするなよ」


俺は自分の視界を確認する。

きちんと


『相棒と踊れ』(バディリンクシステム)

STAND BY


が見えている。

敵と遭遇した場合、すぐに使う必要が出るかもしれない。俺は他のメンバーを見る。

 メーリィは緊張感はあるものの『相棒と踊れ』(バディリンクシステム)の体験者である。こんなところで躓くとは思っていない。

少し気持ちに余裕があるのが見て取れる。たぶん俺もそうだったのだろう、「油断」というやつだ。

シズクには、一応きちんと「システム」について説明はしてある。

だがピンと来てないようだったが…。

だからだろう、彼はかなり周りへの警戒度が高めだった。


今回の実験目的、その1、

メーリィ以外のF級(Fランク)を相棒に選ぶことができるのか?


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


そんなことを考えていると右折路の向こうから魔物モンスターの大きな叫び声が聞こえてきた。

シズクが大盾を構えて前に出る。


 シズクは防御役ディフェンダーと呼ばれる役割だ。

率先して敵の攻撃を受け止め味方を活かす。

D級(Dランク)のヴァシュがこの役割であった。

 彼はその圧倒的存在感で敵の注意を一転に引き受ける【挑発アピール】が上手かった。

だがシズクの控えめでおとなしい性格は、その巨漢そんざいかんの割に敵を引きつけるのは得意でなかった。

だが、彼は敵の攻撃を察知し受け止める、【割り込み(インターセプト)】に長けていた。

密集形態でのシズクの安心感は他では得られないほどである。

俺たちはシズクを前衛に戦闘態勢を取る。


 右折路を曲がって飛び出してきたのは狼男ウェアウルフタイプ。単体でならそう恐れる相手ではない。

だが素早い動きと一撃性は高い。

 一気に突っ込んできた狼男ウェアウルフは地面を蹴り、さらに壁を蹴って変則的な動きで正面のシズクを避けてメーリィを狙う。

メーリィはその動きに対応できていなかった。

襲い来る狼男ウェアウルフの爪、メーリィにヒットするかに思えたその攻撃は、大きな盾と身体に割り込まれる。シズクの素早い【割り込み(インターセプト)】だった。


 そのシズクの影から俺は飛び出し、狼男ウェアウルフの足を薙いだ。

血しぶきのように黒い塵が飛び狼男ウェアウルフの右足が切断され、大きな断末魔のような咆哮が迷宮を駆ける。


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


右足を失い、地面を転がる狼男ウェアウルフに警戒するメーリィとシズク。

狼男ウェアウルフは情けない鳴き声を上げながら地面を這うように逃げようと背中を向けて逃げ出す。

それを見たメーリィが、追撃に移ろうと前に体重移動をした瞬間、狼男ウェアウルフは、地面についた両手の力のみで後方へ宙返りをするように飛び跳ねる。


一瞬のことで誰もが驚いた。


 狼男ウェアウルフは後方宙返りでメーリィの頭部をもぎ取りに来たのだ。

完全に意表をつかれ、俺もメーリィも動くことができなかった。

だが、シズクのみがそれに反応して大盾で空中の狼男ウェアウルフを横からぶん殴ったのだった。


ギャンっ


という悲鳴と共に壁に叩きつけられた狼男ウェアウルフ

その狼男ウェアウルフの喉元に、スルリと剣を差し込み止めをさしたのはマーロウだった。

塵となって消えていく狼男ウェアウルフを見向きもせず、醜態をさらした俺やメーリィに向かって


「この程度の相手で苦戦するのはやめてもらえますかね?とっとと例の『システム』とやらの実験に移ってくれると助かるんだが」


面白くなさそうに彼はそう言うと剣を鞘に納めた。

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