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第18層 憩いの酒場

 まだ日は落ちていないが少し早めに行きつけの酒場に着く。

財貨の跡地(グーニーズ)』と書かれた看板が店主の趣味の悪さを伺える店名であった。

ここはF級(Fランク)からC級(Cランク)までの冒険者ご用達の掃溜め酒場で、質の悪い酒、容姿はいいが口の悪い給士たち、ボリュームだけのクソまずい飯を安価でお届けしてくれる、ならず者(冒険者)の天国だった。


 入口をくぐって店内を見渡すと、まだ静かではあったがそれなりに客がちらほら飲んでいる。


「いらっしゃいませー。あら?ひさしぶりじゃない?」


 顔見知りの女給が、俺の顔を見て気さくに話しかけてきた。


「ああ、ちょっと迷宮で死にかけてさ。しばらく顔を出せなかったんだ」


俺はいつも通り軽口を叩きながらいつもの席に着く。

女給はケタケタと笑いながら


「死にかけるくらいだからいつもより稼いだんでしょ?あとで一杯奢ってね。ご飯はお勧めでいい?」


 俺は手を上げて了承の合図を送る。

女給はオーダーを伝えに、厨房へと戻っていった。

俺は一人テーブルに肘をつき今日のことを思い起こす。



 戦闘後、闘技場より通路に戻り、すぐに『相棒と踊れ』(バディリンクシステム)を解除したが、やはり俺よりメーリィの負担が大きく、彼女は疲労でその場に座り込み、動けなくなる。俺のほうはかろうじてまだ戦闘できる程度の体力は残していた。

 迷宮ダンジョン内で使用することを考えれば、30分間でインターバルを置くべきだな、と考えていると

 いい歳をした男性が嬉しそうに駆け足で俺たちに近づいてくる。


「すばらしい!!!まるでS級(Sランク)じゃないか!!これは使えるよ。うん。実にいいぞ!!」


デモントは大興奮だった。

 疲れて返答に困っている俺を、見向きもせずひたすら身振り手振りを加えつつ、賞賛する副会長殿。

賞賛はしているものの、あれは頭の中では別のことを画策しているな、と思いつつ俺は彼の賛美を遮って


「納得してくれたみたいですね。ではこの間の契約は有効、と言うことでいいですね?」


 俺はデモントに確認をする。すると彼は真面目な顔になり


「それはもちろんだ。だが、特殊システムの公表はもう少し待ってくれないか?いや、S級(Sランク)の特殊システムは明後日、いや準備出来次第公表させてもらう。だが君たちのものについてはもう少しデータがほしい。そのシステムの解明が進んでからで、というわけにはいかないかね?」


 そう言われて、俺は少し考える。

たしかに、まだ確認できてないことはたくさんある。迷宮ダンジョン内での運用もしっかり確認してからでも遅くはない。

よく考えてから俺は頷き、

「それは了承しました。では1つだけこちらからお願いが」

そう言うとすぐに察したデモントが


「わかっているよ。君が実験体モルモットになってくれるからその手助け(サポート)を、ということだろう?もちろんだ。それに関しては「僕」が個人的に行おう」


デモントは嬉しそうにそう言って握手を求めてくる。

なるほど。協会ギルドは通さないってことね。


「ではよろしくお願いします」


俺は彼の手を握る。悪魔との契り、でないことを祈りながら。


その後、疲労で動けないメーリィを担いで錬闘場を後にする。デモントが気前よく特別報酬ボーナスを出してくれたので俺の懐は一気に回復した。

…よかった。


その帰り道、俺たちはゆっくりメーリィの家に向かっていた。


「せんぱぁい。迷宮ダンジョン復帰祝いに今日は一緒に呑みましょう?」


「…それはかまわんがお前、体調は大丈夫なのか?」


俺は彼女の身体の方を心配する。懐が温まった俺は、どちらにせよ今日は酒場で美味い飯にありつくつもりだった。


「大丈夫です!!少し帰って横になったら大丈夫な気がします。…今日は短い時間しかせんぱいと繋がれなかったから気持ち的には少し寂しいんですぅ」


もう発言がだいぶんアレだが俺は突っ込まない。


「ま、久々だしゆっくり吞めばいいか。無理そうなら家で寝てていいからな?無理はするな」


俺はそう釘をさしてから。彼女を家まで送りベッドに寝かせる。

帰り際に


「必ず行きますから先に飲んでてくださいね」


少し顔色がよくなっていたので頭をポンポンと叩いてから


「ああ、ゆっくり待ってることにするさ」


そう言って彼女の家を後にする。

それから俺も一旦、自分の家に戻り、少し休んでからここに来たというわけだ。




「よぅ。久しぶりだねぇ。噂じゃあ41階で死んだって聞いてたのに生きてたのかい?」


酒をテーブルに置きつつ、スタイルのいい身体を強調するようなミニスカートの制服がよく似合う赤毛の給士が話しかけてくる。

前にこの店でマッケンローの取り巻きに蹴り回されたときに、冷たいタオルを持ってきてくれた女性だった。

俺は置かれたビールに口をつけ半分ほど飲み干してから


「‥‥少しは心配してくれたのか?」


そう聞いてみた。

給士の女性は、馬鹿を見るような眼で見て


「冒険者が迷宮で死ぬなんて日常だろう?それで逢えなくなった奴なんてたくさんいるよ。いちいち心配なんかしないさ」


彼女はイケメンなセリフを吐き鼻で笑う。


「ま、無事な顔を見れたのはちょっと嬉しい、って言っといてやるよ、よくもどったな。小僧」


 お盆で俺の頭を軽く小突き、優しい流し目を残して彼女は厨房へ戻っていった。


俺は頭を掻いて食事を待つ間、つかの間の一人酒を楽しんだ。

おかしい・・・。

思ったより文字数が行きました。

中間話でおわりましたとさ。

こういう何気ない話が必要かどうかについて悩むところなんですが

省くにはちょっと・・・って思っちゃうんですよね。


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