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第16層 戦塵舞う

「ちくしょう!!なんなんだあいつら」

ヴァシュはあっという間に力量の差を見せつけられ、心折れかけていた。

すでに半数は倒され全滅すら感じていた。


 開始の声とともに、3軍団クランの血の気の多い奴らが一斉に2人に襲い掛かった。

血の気は多くとも腐っても、15階層まで降りたことのある猛者ばかりである。

攻撃のタイミングは申し分なかった。だが次の瞬間には、襲いかかった12人中半分は倒されていた。


 一瞬の早業でなにがなんだかわからなかった。

この地点でここにいる誰もが、相手はA級(Aランク)以上であると確信した。

戦意を喪失して後ずさる者も多かったが


「びびるんじゃないよっ!!格付ランクと言っても軍団闘争クランバトルじゃあないんだ!相手だってこの圧倒的人数差で、戦ったことなんてあるもんかっ!あんたらキンタマついてんだろっ!!腹ぁくくりな!」


 バニティエのその一言で、心の折れかけてた男どもの顔つきが変わる.そう言ってる合間にも、変な仮面の2人はあっという間に残り半分6人を組み伏せていた。


 そこにテッシが男の方に飛びかかり、鋭い斬撃で仮面の男に襲い掛かる。

だが男はその攻撃をいとも容易く受け止め、テッシの動きを止める.

そのタイミングで仮面の女が男の背後から飛び出してテッシの胴を薙ぐ。

テッシは躱しきれず、痛烈な一撃を喰らって吹っ飛んだ。


「テッシ!!」


「リーダー!!」


堅牢なる天狼(デフティングウルフ)』の面々が己の頭目の安否を気遣う。


「ぐっ…」


 辛うじて意識はあるようだが動けそうもなかった。テッシが叱責する


「俺は…ゴホッ…いいからあいつらを取り囲め。俺たちの‥‥戦いを見せてやれっ!!」


 テッシはそう言って呼吸を整えようとしている。まだやる気だ。

堅牢なる天狼(デフティングウルフ)』の面子の目の色が変わった。


 その間にも仮面の2人は次の敵を攻撃し、戦闘不能にして戦力を削ぐ。

すでに3分の1近い者たちが倒れている。


「魔法、放てぇぃ!!」


 その声の方向を見ると、魔法使いが3人同時に【炎球ファイアーボール】の魔法を放つ。

他のD級(Dランク)を殴り倒した直後の男は、まだ魔法が放たれたことに気づいていない!!


「ぎゃああああああああああああぁぁ」


 【炎球ファイアーボール】が3発ヒットした。威力は…たぶん死んではないはず。

爆風で起こった煙が引いていく。

そこには…D級(Dランク)の一人を盾にした仮面の女が立っていた。


「んなっ!!」


 魔法が放たれた刹那、女が戦っていた相手ごと魔法と仮面の男の間に割り込んだのだった。

魔法を放つように指示した男が女に視線を走らせ、目を血走らせながら凶悪な面で女を睨む。


「くそぉぉぉぉぉ!!なめやがってぇぇぇぇ!!」


 仮面の女の行為が自分たちを死ぬほど侮辱していた。

女はD級(Dランク)の男を盾にしたくせに、抱えたその男に【治癒】(ヒーリング)の魔法を施していたのだった。

 頭に血が昇った男が、飛び出そうとした目の前に仮面の顔がヌッと飛び出してきて、男の意識は刈り取られた。



 魔法使い3人と男一人を颯爽と気絶させた俺は、辺りを見渡す。

ざっと30人くらいか?倒れている人数を目算で数える。

あと半分。

メーリィが抱えて治療していた男を下ろし

こちらに駆けよってくる。

俺たちは目配せのみでお互いの意志を確認する。

そして残った者たちを見る。

彼らは各軍団ごとに分かれ、迷宮戦闘ダンジョンバトル用の布陣を敷いていた。

「俺たちは魔物モンスターかよ」

聞こえない程度の声で呟き、お互い別々の方向へ地面を蹴って飛び出した。



 ヴァシュは切れかける戦意をなんとか奮起して、相棒である大盾を構え、手に持つ戦斧をぎゅっと握る。

くそっ!!思った以上につえぇ。まぁ密かにこんなことをするくれーだ。それなりに危ない橋なのは覚悟してたが…。

格付ランクは確実にS級(Sランク)だろう。

だが自分たちも冒険者だ。格が違うからといって逃げるわけにはいかねぇ。こいつらを魔物モンスターと想定して戦うんだっ!!


 正面に立つ仮面の男がこっちに突っ込んでくる。

同時に先陣を切るのは攻撃の受け手である自分。

ヴァシュは盾を突き出して数歩前に出る。

うちの軍団クランは俺の守りを信じる、後衛の攻撃力が売りだ。俺の影に隠れるように動く小さい少女、ミリュウがいる。彼女の【隠遁インビジブル】からの【急所必殺ポイントゲッター】はどんな魔物も仕留めてきた、うちの切り札だ。

そして切り札に目がいかないように、後方からの攻撃魔法と弓による牽制射撃。これが俺たち『天使の羽撃きエンジェリックレイヤー』の大物とやるときの定石セオリーだ。


 ヴァシュは仮面の男とぶつかる。

大盾に直接攻撃してきた一撃はとても幅広剣ブレードソードの一撃とは思えないものだった。


クソっ。一瞬、大剣グレートソードかと思ったぜ。

だがなんとか受けきり、相手と押し合いになる。

上手く相手の力をいなしつつ、拮抗状態を作り、

ここで魔法と牽制が……来なかった。

ヴァシュは後ろを振り返らずとも何が起こったか理解した。女だ。

他の軍団に行ったと思っていた女は、転身してこちらの後方を襲ったのだった。


「くそっ!!」


牽制のないままミリュウが我慢できずに飛び出すが、飛び出そうとしたミリュウの行く手に拮抗したヴァシュと仮面の男の力が流れていくように誘導され盾ごとヴァシュの身体がミニュウの行く手を塞ぐ。


「しまっ・・・」


「た」という前に身体が流れてしまったヴァシュは、盾を回り込まれて一撃で落とされ、ミリュウは何もすることなくその場にへたり込んだ。

戦意のないミリュウを一瞥して、仮面の男は次の軍団へと突撃していった。

というわけで戦闘です。バトルです。

実は「戦場には2人しか立っていない。」で終わらす予定だったのですがww

次の話との都合でやっぱ多少書くか、と書き始めたら

1話で収まらなかったでござるw

もう1話続きます


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