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第15層 錬闘場にて

 錬闘場は迷宮入口ダンジョンラウンジから少し離れにある。

冒険者たちが教練を行ったり、軍団闘争クランバトルの会場として使われる広い闘技場であった。


 この日、協会ギルドの要請によりD級軍団(Dランククラン)、『天使の羽撃きエンジェリックレイヤー』、『堅牢なる天狼(デフティングウルフ)』『死突遊戯デンジャラスゲーム』の軍団クランメンバーが集められていた。


 なんでも、とある人物たちの能力調査のための集団戦を行いたい、という意味の分からない理由だったが、報酬金が破格の金額であり、尚且つ協会貢献ギルドポイントとして評価されるとのこと、この報酬目当てで承諾した軍団クラン達だった。


「3軍団クランも集めるたぁ、S級(Sランク)とでもやらそうってのか?」


 『天使の羽撃きエンジェリックレイヤー』のリーダー、ヴァシュ・シンドーはもじゃもじゃの顎髭を撫でながら隣にいる男に聞く。


「知らん。誰であろうが関係なかろう。どこのどいつかは知らんがそいつを倒せば、報酬は1.5倍だ。手加減も手心も加えるつもりはない」


 朴念仁のような武骨な男、『堅牢なる天狼(デフティングウルフ)』の頭目、デッシ・ホウジョウは目を瞑り、戦いの時を待っている。


「なぁにぃ?大の男が集まってなんの相談?今日は足ひっぱんないでよー?うちは今回の仕事で軍団クランの進退かかってんだからー」


 やたらフリフリの服装の上に、鎧を着こんだセンス皆無とも取れかねない高身長のガタイのいい女が、その容姿に似合わない可愛らしい声で2人の男に声をかける。

死突遊戯デンジャラスゲーム』のパニティエ・アオモリ。D級では随一の戦闘力を持つと言われる女性であった。


「おめーんとこは悪さしすぎなだけだろ。少しは自重しろよ」


 ヴァシュは嫌そうな顔をしてデカい女を見る。


「ふん。だからこうやって、ボランティアで点数稼いでんでしょ。でもこういうボランティアならいくらでもヤリたいわよねぇ」


 パニティエは加虐性性の高い笑みを浮かべる。


「下衆め」


 そう吐き捨てデッシはこの場を離れる。


「ふん、いい子ちゃんが」

パニティエも面白くなさそうに反対側に歩いて行く。


 その様子を高い観覧席から眺めながらデモントが振り返り、


「申し訳ない。C級(Cランク)の腕利きに声をかけたんですが、断られまくりまして。そこで質がだめなら数で。ということでD級(Dランク)を3軍団クランほど集めてみました」


 そうにこやかに告げる。

俺は少しうんざりした顔をして


「…3軍団クランはさすがにやりすぎじゃないですか?」


 そう言うとデモントは驚いた顔をして


「おやぁ?自信がない?41層の魔物モンスターに比べれば楽なもんだと思うのですが…」


 あからさまな演技でやれやれ、といったジェスチャーをする。

俺はため息をつき


 「あれだけの人数がいたら手加減はしてられないってことですよ。後で医療費請求されてもそっち持ちですからね」


俺はそういうと


「それは、もう。先行投資ですからな。盛大にやってください、あ、でも死亡させるのだけは勘弁してくださいよ」


 軽いジョークのつもりかにこやかに笑い親指を立てる。

俺はもう一度ため息をつき


「それより、あの連中に何人か顔見知りがいるんだが、そっちはどうしたらいいんだ?」


 俺は下に集まっている50人前後の軍団クランの中に見たことあるやつの顔を見つける。向こうは覚えてるか知らないが身バレはまだ勘弁したいところだった。

 それを聞いて得意げなデモントが取り出したのは


「これを付けて戦えば問題ないでしょう!!『謎の仮面の戦士(マスク・ド・ゾロ)』ってところですね!!」


 そう言って趣味の悪いアイマスクと額当てが合体した、悪趣味全開の物を取り出す。

確かに顔は見えないが…ださかった。

しかし背に腹は代えられないだろう。

俺はそれを受け取りひとつはメーリィに渡す。

 メーリィはそれを受け取って、一瞬泣きそうな顔で助けを求めたが、俺は首を横に振るしかなかった。


「さて、お集りのD級軍団(Dランククラン)の諸君、今日はとある人物たちの戦闘性能を確認するために集まってもらいました。模擬戦闘とはいえ、全力でやってもらいたい。魔法は使用可だが殺生能力は押さえてください。まぁ・・・生きてさえいればセーフ、ということにしておきましょうか。だが君たちのルールも同じです。死なないように気をつけてくださいね」


 デモントの声が錬闘場に響き渡る。

D級(Dランク)の者たちはそれを聞いて笑い声をあげる。

これだけの人数相手だとS級(Sランク)だろうが楽勝と思ってる節があるようだった。

能力表格付ステータスランクの違うもの同士が戦うことはほとんどない。なぜなら格付ランクが違う地点で勝敗は決しているからであった。

それがこの戦いが非公式の所以であった。


錬闘場に俺とメーリィは降りてたくさんのD級(Dランク)の待つ場所へと歩いて行く。


「さて、身体の負担が少ないうちに終わらすぞ。魔法には注意、あと離れすぎないようにな」


 俺は小声で忠告する。


「はい。せんぱいの背中はわたしが守りますから」

 嬉しそうにそういうメーリィ。

俺はコクリと頷く。

俺たちの姿を見て小馬鹿にされてると思ったのか、殺気をむき出しにするD級たち。


「あいつらか?強そうにはみえねーな」


「なんだぁ、そのふざけたお面は?」


「一人は女じゃねーかっ!!なめてんのかぁ?」


口々に野次が飛ぶ。

そんな中、ひげもじゃの男が訝しげに


「…たった2人か?お前らS級(Sランク)か?」


そう問うてきた。


「さて、それは戦ってみればわかるだろう?時間はかけたくない。早々に始めようか」


 俺はそう挑発して刃の潰してある剣を抜く。

一気に全員が殺気立つ。それぞれ武器を出し臨戦態勢に入る。

俺は静かに深呼吸をして


「特殊システム、『相棒と踊れ』(バディリンクシステム)」起動!!」


 そう呟いた。

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