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77 おっさん勧誘される

 玄関に出るとそこにいたのはトミーとヴィクトールの2人だった。


「おう、急にすまねーな。ちょっと話したいことがあってな」


「ああ、ひょっとしてコレのことか?」


 俺は号外を手にしたままその手をケインたちに示した。


「ああ、それなら話が早い。ヴィクトールの奴も『鋼の戦線(クラン)』を抜けることになった。それでヴィクトールたちのパーティーの事務も正式にお前に頼みたいそうだ」


 これまでは報告書だけ俺が手伝っていたが、クランを抜けるとなる事務関係全てを自分たちでしないといけない。

 まあ、ケインたちと同じ条件でいいなら俺がすることに特に問題はない。


「でだ。いい機会だから俺とヴィクトールのパーティーで新たにクランをつくろうという話になってな」


 なるほど。


 そうなるとクランとしての事務仕事ということになるな。


 まずはヴィクトールパーティーのクラン離脱届を出さないといけないな。


 そのうえでクラン結成届も出さないといけないし、他にもいろいろとすることが出てくる。


「それで新たに作るクランにお前たちのパーティーもどうかと思うんだがどうだろうか?」


「それはつまり『華乙女団』へのクラン参加の勧誘ということか?」


「そうだ」


 それぞれがAランクパーティーのケインとヴィクトールのパーティーがクランを作ればAランクのクランとなるだろう。



 BランクのパーティーがAランクのクランに参加できるということは通常であれば願ってもないことだが……。



「俺の一存では回答できないな。でもみんなにはそういう申し出があったということは伝えておこう。回答は急ぐか?」


「まあ、早いに越したことはないな。ただ、大事なことだからそこまでは言わないさ」


「わかった。なるべく早くには回答しよう」


 俺がそう言ってこの日はそれで話は終わりとなった。






「おじさん、ケインさんが来たの? 何の話?」


 俺が部屋に戻ろうとしたところアンジェが部屋から出てきて俺に尋ねた。


「ああ、大事な話だからみんなに集まってもらってから話をしよう」


 アンジェにみんなを食堂に集めてもらい、さっきケインからあった話をした。


「クランか~」


「まあ、そろそろそういう話もあっていいとは思いますわね」


 アンジェのつぶやきにルージュがそう反応した。


「う~ん、クランに入ったらどうなるんだ? 何かいいことがあるの?」


「一番は受けられるクエストの幅が増えるということだな。クラン単位でないと受任できないクエストもある。そういうクエストは規模や報酬もでかい案件が多い。あとクランになるとランクが底上げされやすい。俺の古巣を見てもらったら分かると思うがSランクパーティーはいなくても総合でSランク評価を受けられるんだ。そうするとSランクのクエストを単独で受けることができたりいろいろと融通が利くんだ」


 ユリアの疑問に俺はそう答えた。


「アライアンスでは対応できないの?」


「アライアンスで受注できるクエストは、アライアンスを構成するパーティーで最もランクの高いパーティーのランクを元にするだけだからな。例えばBランクのうちとAランクのケインのパーティーとでアライアンスを組む場合はAランクのパーティーとして扱われるだけだからあまりメリットはないな」


「ということはAランククエストであれば単独受任ができてもSランククエストであればそれはできないということですわね」


 アンジェの疑問をルージュがそう整理すると、みんなは押し黙った。


「クランを組むのであれば、単にクエストを一緒にやるというだけじゃない。報酬の分配や内部のルールについても決めないといけない。まあ、そこまで突っ込んだ人間関係になれるかどうかだな」


 それからアンジェたちは4人で話し合いを始めた。


 ケインはいい人で、一緒にクエストを受けたり、いろいろと教えてもらうことはこれまであったけど、まだそれ以上の関係にはない。


 個人的なことをお互い何も知らないし、知人以上、友人未満という関係。


 クランもやはりパーティーと同じで家族の様な関係になる以上は、少なくとも友人以上の関係になってから、というのが4人の一致した意見だった。


 それ以前にやはりこのパーティーが少女のみで構成されたパーティーだということで、多くの男たちと一緒になるということへの懸念もあるのではないかと個人的には思った。






「そうか、やっぱりダメか」


 俺がケインに話し合いの結果を伝えるとケインはそう呟いた。


「予想どおりか?」


「ああ、まあ、嬢ちゃんたちについてはこっちも取り敢えず提案したってとこだしな。それにお前だけを誘ってもうちには来ないだろう?」


「ああ」


 その答えは決まっている。


 俺は俺を拾ってくれたアンジェたちを裏切るつもりはない。


「であればこれまでどおりの関係でいこうや。さっそくだが、うちとヴィクトールのところでクランを組むからそっちの手続きを頼むぜ」


 この日、ケインのパーティーとヴィクトールのパーティーとで構成されたAランククランが設立された。

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 「新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい」

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 是非一度お試し下さい。

 

 追放ざまぁものではありませんが本作が合った方には親和性が高い作風のつもりです。

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 新作始めました。  是非お試し下さい。  

新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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