73 おっさん丘を歩く
俺たちの街の案内とはいっても、俺たちの街は何の変哲もない街だ。
「レイアはどこの街を拠点にしてるんだ?」
「私が拠点にしているのはフラスゴーね」
ふむ、この街よりも王都に近く、都会といえば都会の部類かもしれないな。
少なくとも俺たちの街よりも都会なのは確かだ。
であれば何の変哲もない田舎街よりも周りの自然の方がいいだろうか?
この街の城壁を出てすぐ西側はなだらなか丘陵が広がっていて、そこは非常に景色がいい景勝地となっている。
少し行けば山に入るが、そこを少し入ったところに滝や水場があるから休むにもいいだろう。
俺がそう提案してみたところ、レイアもそっちがいいと言ってくれたので今日は即席のハイキングとしゃれこむことになった。
城壁のすぐ傍とはいえ城壁の外なので魔物が出ないとは断言できない。
そのため、装備は持っていくことにする。
とはいえ、この街周辺は、冒険者の低ランクパーティーの狩場なのでほぼ狩りつくされているといっていい。
あくまでも保険だ。
俺も護身用の鉄の剣を腰に下げた。
定期的に手入れはしているのでさび付いていて鞘から抜けないということはない。
しかし、俺が剣を持って出歩くのはいったいいつぶりだろうか。
そんなことを考えながら俺たちは露天で6人分のサンドイッチと飲み物を購入してから城壁を出た。
「あ~、城壁から出るのは久しぶりだな~」
冒険者ではない俺が街の城壁から外に出ることは滅多にない。
見渡す限り大地が広がっている。
西門から出た先は丘陵地であり、緩やかな登り坂が続いている。
人の往来によって踏み固められただけの道には草が生えていないが、そうではないところは一面緑のじゅうたんだ。
「こっちはあまり来ないけど、たまにはいいね」
アンジェが鼻歌交じりにそう言って一人先頭を進む。
その後ろを俺、レイア、ユリアが横並びで続き、最後尾をルージュとサーシャが横並びでついてくる。
「たまには依頼とは関係なくこういうところをのんびり歩くのもいいわね」
俺の左隣りでレイアがそう言って上半身を反らした。
ただでさえ、自己主張が激しいお胸様がさらに前に押し出され、その大きさを強調する。
「おっさん、何見てんだよ」
俺の右隣にいたユリアから肘で小突つかれた。
だって仕方ないじゃんかよ。
あんな立派なもの、見ないなんてそんな勿体ないことできねーよ。
それにしてもレイアの姿は上半身にどうしても目がいってしまうが、こうして明るいところで改めて全体を見るとなんかもうすごいな。
魔女服の裾はスカートになっていて、その長さは踝に近い部分まであるロングタイプのものだ。
しかし、しかしだ!
その腰にまで入ってる長いスリットはいったいなんなんですかね?
これはもう、おパンツ様が見えるんじゃないでしょうか?
あれ? 見えない?
えっ、どういうこと?
履いてないの?
「おじさま、さっきからレイアさんをガン見し過ぎですわ。もっと落ち着いていただけませんこと?」
後ろを歩くルージュからあきれた声がした。
えー、だって気になるじゃん?
気にならないの?
それとも若い女の子の間では履かないのが当たり前なの?
「それにしても女の子だけのパーティーって気が楽ね」
「え~そうですか?」
レイアの言葉に先頭を歩いていたアンジェが振り返った。
「だって、男の視線を気にする必要がないでしょ? それに素の自分を出せるんじゃない?」
「あ~、たしかにそうかもな」
ユリアがうんうんと頷いた。
「まあ、確かに他の殿方がいらっしゃればどうしてもちょっと余所行きの対応になりますわね」
ここ最近はケインのパーティーとの合同が多いから、なおさらそう感じるのかもしれない。
「でも今はおじさんがいるよ。おじさんは気にならないの?」
「まあ、おじさんはおじさんだものね。他の男とはどうも違うのよね」
「ああ、たしかにおっさんだもんな」
「おじさまですしね」
なんか男扱いされてないみたいだ。
これは喜んだらいいのか? 悲しんだらいいのか?
どっちだろうか?
「……着いた」
もうしばらく歩くと丘陵の一番高いところへと上りついた。
サーシャがそう言って手に持っていたバスケットを下ろした。
そういえばお昼ご飯が入っていたバスケットはサーシャが大事そうに抱えていた。
「う~ん、ここは風が気持ちいいですわね」
ルージュが身体を反らして空を仰いだ。
うん、ルージュもレイアほどではないが大変立派なものをお持ちだ。
まだ若いし将来が楽しみである。
それはそれとして俺たちは昼食をとることになった。
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