71 おっさん再び追放される!?
「う~、頭いてぇ、流石に昨日は飲み過ぎたか」
目を覚ますと俺は自分の部屋のベッドの上にいた。
「そういえば、俺はいつ帰ってきたんだ? 昨日俺は酒場でレイアと飲んで……。ダメだ、酒場で飲んでたとこまでしか覚えてねぇ。レイアとどうやって別れてどうやってここまで帰ってきたか全く覚えてねぇ」
――むにょん
そう言ってベッドから立ち上がろうとして布団に手をついたところ、何か手にやわらかな感触を感じた。
以前ユリアの胸を触ったときもやわらかかったが、それとは圧倒的に質量が違う。
「何だ?」
――むにょん、むにょん
よくわからないながらも、ずっと触っていたい感触に思わず二度三度と触ってみた。
「うぅん、ちょっとおじさん、私の胸、触らないでくれる? それとも、せ・き・に・ん。とってくれるのかしら?」
布団から顔を出したのは昨夜一緒に酒場で酒を飲んだレイアその人だった。
えっ、何でいるの?
まさか俺が連れ込んだ?
童貞の俺が?
くそ~、まったく覚えてねぇ。
昨夜の俺はあれから上手くやったのか?
俺は本当の意味で大人になれたのか?
俺が百面相をしていると、レイアが小悪魔的な笑みを浮かべながら言う。
「もう、おじさん、昨夜はあんなに激しくして、私もう、大変だったのよ。あんなに溢れるほど注ぐ何て酷いんだから……」
これはもう俺ヤっちゃった?
最近流行の『知らないうちに俺また何かヤっちゃいました?』ってやつか!
そんな風に混乱していると不意に俺の部屋のドアが開いた。
「おじさん、おはよ~。朝ごはんできてるよ~。一緒にたべよ~」
「ちょっとアンジェ。まずはドアをノックなさい。はしたないですわよ!」
アンジェに続いてルージュが俺の部屋へとなだれ込んできた。
「あっ」
「「えっ」」
アンジェとルージュの双眸が俺の隣のレイアを捉える。
「「ええ~~」」
二人の叫ぶ声がハウス中に響いた。
「うわ~ん、おじさんが女の人を連れ込んだ~。裏切りだ~」
「むむっ、あの方。わたくしよりも胸が大きいですわね」
アンジェは意味のわからないことを口走り、ルージュは冷静に目の前のレイアの戦力を分析する。
「おじさん、ひどいよ~。そんなおじさんなんて嫌いだ~。おじさんなんて追放だ~」
ええっ、また俺、追放されるの!?
ちょっ、ちょっと待ってくれよ!
俺は無実だ!(多分)
でも証明のしようがない……。
知ってるか?
やってないことを証明するのは『悪魔の証明』っていうんだぜ。
唯一証明してくれそうなレイアが顔を赤くして布団を被るようにしてみんなから顔を隠そうとしている。
っていうかそれわざとやってるだろ!
口元がニヤついてるぞ!
「なになに、何の騒ぎ? っていうか早くご飯たべようぜ」
「早く! ご飯! 食べる!」
騒ぎを聞きつけたユリアとサーシャまでもが俺の部屋へとやってきた。
サーシャに至っては憤怒の表情をしている。
もうカオスだ!
というかサーシャの声を聞くのは久しぶりだな。
俺の脳が現実逃避を始める。
ああ、もうどうにでもしてくれ!
「ユリア~、おじさんが女の人連れ込んだんだよ~」
「へ~、おっさんやるじゃん! っていうかよくおっさんのレベルでこんな美人でおっぱいでっかい人連れて来れたな~。弱みでも握った?」
おっさんのレベルって何だよ!
俺だってな!
俺だって……。
「ありゃ? おっさん急に元気がなくなっちゃった?」
「ユリアさん。それは流石にあんまりですわ……」
「それよりもそれよりも、おじさんがおじさんが不純異性交遊だよ~」
不純異性交遊って子どもかっ!
いえ、すみません。
俺はまだ本当の意味で大人じゃありませんでした、ごめんなさい。
「う~ん、でも、おっさんまだ童貞だぜ。アンジェが心配するようなことはなかったみたいだから安心しなって」
そうそう、俺はまだ童貞……えっ?
「あら、やっぱりそうでしたの。そうだと思いましたわ」
「な~んだ。ボクの勘違いか。おじさん、だったらそうだって言ってよね~」
えっ、えっ、それでいいの?
ユリアがそう言っただけでそれを信じるの?
というかユリアが何で俺もわからないこと知ってるの?
「あれ? おっさん、そんな顔してどうした? あっ、ひょっとしてあたしのスキルって知らなかったっけ? あたしはスキルでその人が童貞かどうかわかるんだぜ。すごいっしょ?」
はああぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~!?
何それ?
何それ、何それ!?
何という凶悪なスキル!
「ちなみにおっさんをこのパーティーに勧誘したのはおっさんが童貞だったからだぜ」
今明かされる衝撃の事実!
俺はその事実に感謝し、その事実に泣いた。
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