表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/81

64 そのころの古巣12

 ※ 第三者視点です

 

「聖印を受けられない!?」



 Aランクダンジョン『嘆きの谷』の攻略を決めたガルムは聖教会に武具へ聖印の付与を求めた。


 しかし、返ってきた答えは1週間待ちという回答だった。


 そんなに待っていてはクランランクの再査定期間内に新加入のBランクパーティのAランク昇格は望めない。


「金に糸目はつけん。クランの隠し財産もあることだ、これでねじ込んで来い」


 ガルムはそう言って何とか一部の武具に聖印を施させることに成功し、意気揚々とダンジョンへと向かった。


 今回、ガルムたち『鋼の戦線』でダンジョンアタックに参加するパーティーはガルムがリーダーのパーティー、ガルムの腹心ダニーがリーダーのパーティー(ただし、リーダーのダニーは入院療養中で不参加)、それから新たにクランに参加したBランクパーティーの3つのパーティーである。


 ヴィクトールパーティーは今回のレイドに不参加だ。


 ヴィクトール自身が消極的だったことに加え、ガルムとしても参加パーティーが少ない方が底上げをしたいBランクパーティーに対してギルドポイントの入りがよくなるため、双方の思惑が合致した結果だ。


「よしっ、『鋼の戦線』出撃だ!」


 ガルムの掛け声で3パーティーはAランクダンジョン『嘆きの谷』へと入っていった。





 ちょうどその頃、同じくAランクダンジョン『嘆きの谷』に入ろうとする一団があった。


 その一団は遠い街を拠点とする冒険者グループであり、わざわざこのダンジョンを攻略するため遠路はるばるやってきた3つのパーティーの合同体である。


「フレイアさんにご協力をいただけるなんて心強いです。是非、よろしくお願いします」


 ダンジョンの入り口に向かう馬車の中で今回の攻略の中心となるAランクパーティーのリーダーの男がそう声を掛けた。


「まかせて頂戴。十分な報酬はいただいているし、それに見合った分の仕事はするわ」


 フレイアと呼ばれた女性は若い女性で特筆するべきはその大きな胸、くびれた腰、そして豊満なヒップを持ったスタイル抜群の美女であった。


 しかも、周りを挑発するかのように大きく胸元の開いた紺色の魔女服を着ている。


 魔女服のスカート部分の裾はくるぶしくらいまである長いものとなっている。


 しかし、腰の部分にまで深いスリットが入っていて生足がその根元近くまでちらちらと見えるという正に目に毒といって言い服装だ。


 今回ダンジョン攻略に挑むメンバーは今回臨時で参加するフレイア以外はその大部分が男性なのだがフレイアと一緒に戦闘をする際は、どうしてもそのエロい姿に集中力を奪われてしまう。


 そのため昨夜は娼館に行って男のアレを空っぽにするまで励んでこの場に臨んでいる。


 平たく言うと、今はみんな賢者タイムだ。


 男性中心のパーティーがフレイアをパーティーに加えるということはそれだけ隠れた障害があるのだが、それ以上にフレイアの助力には魅力があるということだ。


「それにしても、こんなに早くこのダンジョンを貸し切りにできたのは運が良かったです。費用もそこまでかかりませんでしたし」


「そうね。貸し切りにできなくて他のパーティーが同時攻略してるのであればわたしも本気で魔法を使えないしね。私たちの他に誰もいないのであれば気兼ねなく広範囲殲滅魔法でフロアを一気に制圧できるわ」



『炎獄のフレイア』



 そう二つ名がつくほどの彼女は個人の冒険者ランクがSランクの冒険者である。


 圧倒的な火力によって魔物を消滅させるその戦闘スタイルは彼女の地元の冒険者たちを戦慄させている。


 最初こそフレイアの身体目当てにちょっかいをかけていた冒険者の男たちがいたが今ではフレイアの圧倒的な力の前に縮こまっている。


 過去にはフレイアに迫ろうとしたアホな男が火だるまになったとか、フレイアの身体を触った男の手が燃えたとかいう話があるが、噂ではなく実話である。


 そのため今ではフレイアの地元の冒険者の男でフレイアに軽口をたたく者は誰一人として存在しない。


 フレイアは自らに手を出す不埒ものに対しては徹底した態度をとるが、その一方でそうではないところでは、自分の過剰ともいえる力で周囲が傷つくことを恐れている。


 力の行使には常に注意を払っているのがフレイアという冒険者だ。


 今回も、フレイアがダンジョン攻略に助力するための条件が、ダンジョンを貸し切りにし、他のパーティーの冒険者がダンジョン内にいない環境にするというものであった。


 ダンジョンへの出入りについてはその地元の冒険者ギルドで管理されているので、冒険者ギルドで手続きをし、いくらかの独占使用料を支払えば一定期間貸し切りにすることが可能だ。


 勿論、他のパーティーが既に潜っているなどのタイミングであれば、そのパーティーの帰還が確認されてからというように多少の日程変更が求められることはあるが、基本的には受け付けてもらえる。


 なお、既にダンジョンが貸し切りとなった場合、他のパーティーが攻略申請を出しても貸し切り期間中は許可が下りないという扱いになっている。


 こうしてフレイアたち冒険者パーティーは『本来であれば』他には誰もいないはずのダンジョンへと向かった。


 まさかこのレベルのダンジョンに対応できる程の高ランクパーティーがギルドの許可を得ないままダンジョンに潜っているとは夢にも思っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 新作始めました。  是非お試し下さい。  

新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ