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63 おっさんありがたがられる

 

「そりゃすげーや」



 俺が昨日レベルアップしたマジックペンのことを話すと、ケインに開口一番そう言われた。


 今日の午前中は先日のダンジョン攻略の反省会を兼ねてうちのパーティーとケインのパーティーとで話をすることになっていた。


 それで俺たちのパーティーはみんなでケインのとこのパーティーハウスへ来ている。


 ケインたちは『鋼の戦線』を辞めたとはいっても単独でもAランクのパーティーだ。


 元々の稼ぎもかなりのものだったらしくパーティーハウスはうちのよりも大きくて立派だった。


 1階にある広い会議室に通されて反省会が始まったんだが、実際、そこまで長々としたわけではない。


 冒険者は元々こういう場が苦手な脳筋が多いので、ちょっと話をしたら実際に身体を動かしてみようと庭に出ることになった。


 その前にと思って、俺はみんなにマジックペンがまたまたレベルアップしたこと、レベルアップしてできるようになったことを伝えたところ、先ほどのようにケインから感心の言葉をもらったというわけだ。


「ケインさん、おじさんのペン、何かすごいの?」


「ああ、これまで普通の魔物しか相手にしていなかったお前らにはまだわからんだろうがな。Bランク以上のクエストやダンジョンになると、いわゆる特殊系ってのが出て来るんだ。一番わかりやすい話をすればアンデッド系の魔物だな」



 ――アンデッド


 いわゆる不死の魔物であり、物理攻撃だけで倒すのは『超大変』といわれる冒険者泣かせの魔物だ

 単純物理がほぼ無効の魔物から、物理で切り刻めばかろうじて倒せる魔物までいるが、いずれにしても物理特化のパーティーからすれば鬼門も鬼門という話だ。


 炎系の魔法でそこそこダメージが通る魔物もいるが、一番の攻略法は聖属性による攻撃と言われている。


 俺も知識としては何となく知ってはいたが、俺が自分で戦うわけじゃないので、ふ~ん、という程度だった。


 しかし、ケインの話から、過去にはかなり危なかった戦闘もあったらしく、相当やっかいな相手だということはよくわかった。


「だったら、聖属性の武器で戦えばいいじゃん。弱点はわかってるっしょ?」


「バカいえ! 聖属性の装備を揃えるのにいくらかかると思ってんだ! 聖剣なんてこのかた見たことすらねぇよ」


 ユリアの言葉をケインは即座に否定した。


「じゃあ、どうしたらいいんですの? 貴族の冒険者以外は手も足も出ないのではありませんこと?」


「いや、そういう場合は、聖教会で武器を清めてもらうんだ。聖印と言ってな。聖属性の付与をしてもらえばいいんだが……」


「いいのでしたらそれでよろしいのではなくって?」


「費用がバカ高いうえに納期も長いんだ。『明日行くぞっ』て言って直ぐには準備できないから予定を組みにくいんだよ。次善の策として聖教会が売っている聖水を買って武器を清めながら戦うってこともできるんだが、その都度聖水で武器を清めないといけねーのはめんどいんだよ」


「それでもかなりの量の聖水が必要になりそうだね。運ぶのも大変だろうし費用も心配だな~」


「そうなんだよ。結局『特殊系のクエスト』はかかる費用とリターンとの兼ね合いが一番ネックなんだ。まあ、だからこそギルドポイントの面では優遇されている」



 とにもかくにも、属性の付与ができることはかなり有用らしい。


 ということで試験も兼ねてアンジェの鉄の剣に試しに属性の付与をしてみることにした。


 黄色キャップのマジックペンを右手に顕現させてキャップの蓋を開ける。


 そして、刃の部分にペン先を当てた。


 ついでに攻撃力アップもしておこう。


 その結果がこちら。



 ――鉄の剣(状態:やや不良)


 攻撃力 20(付与魔法により+10補正済み。補正期間1週間)

 聖属性(付与魔法により付与済み。有効期間1週間)




 攻撃力アップと聖属性の付与は思ったとおりにできた。


 ただ、元々の状態がちょっと悪いな。


 この前のダンジョンアタックでどうやら消耗したようだ。


 攻撃力ダウン判定にはなっていないがこのまま使い続けたら遅かれ早かれそうなるだろう。


 ということで俺はマジックペンのキャップを白色の修正ペンにしてから鉄の剣に魔力を注いだ。




 ――鉄の剣(状態:普通)


 攻撃力 20(付与魔法により+10補正済み。補正期間1週間)

 聖属性(付与魔法により付与済み。有効期間1週間)




 うん、これで安心だ。


 俺は結果をみんなに報告すると、ケインがニタァとした表情で話しかけてきた。


「これはもう『死霊の祠』に潜るしかないな」


 はい、聞くからにアンデッド系の魔物の巣窟ですね。


 わかります。


「そのダンジョンってランクは何ですか?」


「Aに近いBだな。正直、何の対策もしていなかったら俺たちでも厳しい。しかし、トミーのこいつがあればこの前のダンジョンよりも簡単かもしれないぜ?」


 こうして『華乙女団』は再びケインパーティーとアライアンスを組んでダンジョンに潜ることになった。

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新米錬金術師は辺境の村でスローライフを送りたい
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