61 おっさん噂話を聞く
ダンジョンから帰ってきた4人娘と一緒に晩御飯を食べた後、俺は俺の仕事をすることにした。
今回はうちのパーティーとケインのパーティーの2つ分の報告書を書かないといけない。
まずはうちの報告書を書くことにした。
今回のBランクダンジョンは全部で10階層のダンジョンとのことだが、その半分までは行けたようだ。
5階層のいわゆる中ボスについてはケインたちの助けもありながらなんとか倒せたということで、Cランクパーティーが初めてBランクダンジョンに挑戦したということを考えれば上出来の部類だろう。
次の日はパーティーの休日になった。
ダンジョンでの疲れを癒すためなのだが、アンジェたちはみんな昼過ぎまで寝ていた。
やはり経験が浅い中で格上のダンジョンに潜るということは肉体的にも精神的にも疲れたのだろう。
そう思ったから俺もみんなを起こすことはしなかった。
そうして俺たちはのんびりと休日の午後を過ごした。
夕方、俺はちょっと早めにみんなのために夕食を作り置きしてからいつもの酒場へと向かった。
「おう、早かったな」
酒場ではケインが既にいくつかジョッキを空けて待っていた。
今日はケインからダンジョンでの話を聞くつもりだ。
勿論昨日、アンジェや他のみんなからは話を聞いている。
だからうちのパーティーの報告書を作ることはできる、というかもう作った。
しかし、ケインパーティーの報告書はうちのものと同じではいけない。
あくまでもAランクパーティーとしての報告が求められる。
俺はケインがとっていたテーブル席の向かいに座るとウェイトレスの女性にエールを注文した。
「昨日はお疲れだったな」
「いや、そうでもなかったさ。基本的に俺達は見学だったからな」
ケインはそういってジョッキをあおった。
直ぐに俺の前にもエールの入ったジョッキが給仕された。
「じゃあ、乾杯といこうか」
俺がジョッキを掲げるとケインもそれに合わせた。
「ふ~、やっぱりエールはうまいな~」
「ああ、仕事の後はやっぱりこれが一番だぜ」
こうして俺とケインとのサシ飲みが始まった。
「なるほどな。まだまだ改善の余地があるってことか」
飲み始めて1時間。
ダンジョンでの話をあらかた聞き終え、俺はそう感想を漏らした。
初めてBランクダンジョンに挑戦したCランクパーティーとしてはよくできている。
しかし、まだまだ荒削りであり、今後更に上を目指すのであれば改善するべきことが多くあるというのがケインの見立てだ。
「まあ、俺だけじゃなくてお前もきちんと言えばそこはちゃんと修正してくるだろう」
「おいおい、俺みたいな門外漢が言ったって聞いてくれるわけないじゃないか。あくまでも俺は事務職だぜ」
俺の言葉にケインは一瞬不思議そうな顔をしたが、直ぐに元の表情に戻った。
「いや、いいさ。お前はそのままでいてくれ」
ケインがそう笑いながら俺に言った。
なんだよ。
何かあるのか?
気になるじゃないか!
俺はケインに追及したんがケインは軽くあしらうだけでまったく話にならなかった。
こんなしょうもないやり取りをしていると、ケインは急に何かを思い出したような顔になり、俺に聞いてきた。
「ああ、そういえばお前、あの噂を聞いてるか?」
「噂?」
「ああ、Sランク冒険者の『炎獄』がこの街に来てるって噂だぜ」